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悪質クレーマー対策としてのブロックリスト作成に関する私的検討と見解

ゆっくりしていってね!!!!

最近、Twitterの一部界隈で、クリエイターさんやそのファンの方々を守るべく、悪質なクレーマーを先行ブロックするリストを作る計画を検討しているというウワサを知ったのよ。今回はそれについて私見を書こうと思うわ。

ブロックリストだけれど、私は直感的に悪くないアイデアだと思ったわ。

私自身は、アカウント開設当初から「ブロックしない」をTwitterプロフィールに掲げていて、今後もこの方針は絶対変わらないんだけど、このブロックリスト計画については、クリエイターさんやそのファンの方々向けのものとしては支持するわ。

なぜか?

まず、特に萌え絵などのオタク的な表現物を作っているクリエイターさんは、悪質なクレーマーによって集中的に誹謗中傷・罵詈雑言を浴びせかけられたり、集団通報の対象になったりしがちなのよ。

誹謗中傷・罵詈雑言に耐えられずにメンタルを崩したり、そうでなくても創作意欲が大きく減退させれてしまう人は多いでしょう。

さらに集団通報によるアカウント凍結に至っては、著名でないクリエイターさんにとって貴重な「Twitterという無料の宣伝媒体」を失うことになる訳よね。

たとえば、アルバイトと同人活動の売り上げを合計して「何とか生活できている」レベルのクリエイターさんってかなり多いと思うんだけど、そういう人たちにとっての「アカウント凍結」は「現実的な生活のリスク」に他ならないわ。

もちろん、クレーマーによる上記のような攻撃を完全に防ぐのは無理よ。でも、悪質なクレーマーのブロックリストを活用すれば、上に挙げたどのリスクもある程度は減らせるわ。

だから、「けっこういいんじゃないかしら?」というのが私の所感ね。

さて。そんな折、Twitterのタイムラインを眺めていると、ちょうどりんご飴さんという方が、「仮にブロックリストを作るとして、どれくらい需要がありそうか?」という旨のツイートをしていらっしゃったのを見かけたのよ。さっそく、私はアンケート調査への協力を申し出たわ。

アンケート調査の経緯(私による善意の押し売り)

その結果がこちら。なんと2,652人がアンケートに協力してくださり、そのうちの75%が「ブロックリストがあれば使いたい」とのこと。

りんご飴さんは、需要が多いと分かったことで、作る方向で検討を進めているみたい。

アンケートに際して、少し懸念も寄せられているわ。それらを私なりに検討してみるわね。

1.エコーチェンバー現象に陥るのではないか?

まず多かったのがコレ。ブロックリストを活用することで、いわゆる「多様な意見」が目に入ってこなくなり、「身内だけの偏った価値観」が強化されてしまうのではないかという指摘ね。(これが「エコーチェンバー現象」よ。)

ええ。私も一般的・抽象的な懸念としては分からなくもないわ。

ーーでも、個別的・具体的に考えると実はよくわからない。

いま、ブロックリスト作成者の皆さんが問題視していて、かつ現実にクリエイターさんに寄せられる「批判」は、例えば萌え絵なら、「キモオタ向けの絵、キッショ」とか「また女性の性的消費をしてる!」(※「性的消費」に学術的な定義はない)とか、「(幼いキャラが少し性的に描かれているから)ロリコンだ。通報した」「こういう絵、吐き気がする」とかよ?

……こんな「ご意見」、わざわざ聞いたからって何になるの?

「ブロックしない」方針の私ですら、この手の一言悪口シリーズは面白くイジりようもないし、無視するしかないってなってるのよ? 

この私ですら、何の価値も生み出せないのよ?

「多様な意見を聞いて、いずれにも偏らない中道を行くことが大事なのだ」と「偏り」を極端に恐れている人は多いけれど、「萌え絵キモイ」「性的消費だ。最低!」と「可愛いイラストですね!」「すごくいいです!」の中道って具体的には何?

クリエイターさんが後者の意見だけを聞いて、「よし。もっと喜んで貰えるように、もっと可愛く描けるように頑張ろう」と萌え絵ファンに偏った思想に陥ったとしても、一切問題はないわ。

せいぜい知識として「世の中には萌え絵が嫌いな人もいる」と知っていればもう十分よ。あえて罵詈雑言や誹謗中傷に耳を傾けても疲れるだけ。

このように、一般的・抽象的に述べたときは正しそうでも、個別的・具体的に考えるとちょっと変になることがあるのよね。これはその典型例と言えるでしょう。

特にこの「多様な意見に耳を傾けよう」のような一般論・抽象論を立てたときは、必ず現実にある個別の事例をいくつか(できれば3つ以上)考えて、どうなるか検討してみましょう。多様っつったって何でも良い訳じゃねえってすぐ分かるから。

病気になった時、一人の医師の診断では不安だから、セカンド・オピニオンとして二人目の医師にも診断してもらうのはいいでしょう。でも、駅前で「こういう症状なんですが、どうしたらいいですかね?」とアンケートを取っても仕方がないわよね(「病院へ行け」という回答は無しとするわ)。

真面目な自然科学の学会に、オカルティストを呼ぶ必要はある?
サッカークラブには、たまにはサッカー嫌いも無理やり参加させた方がいい?
プレミア商品のメーカーは、転売ヤーの意見にも真摯に耳を傾けて、再販しない事も検討するべきかしら?

ゆっくり動画が嫌いな人にも、強制的にゆっくり動画を見せた方がいい?

あ、最後のはやった方がいいわね。それは例外として、是非やったほうがいいわね!

さておき。

エコーチェンバー現象によって視野狭窄に陥りたくないなら、もっと良い方法があるわ。

それは、信頼できる人にアドバイスをもらいに(自分から)行くこと。

仮にあなたがイラストレーターさんやマンガ家さんで、画力や構成力の上達が目的なら、1000人の素人に感想をもらうよりも、1人のプロに(対価を払ってでも)しっかり教わった方がいいわ。

基本的に、ランダムな他人が「勝手に親切に」教えてくれることにろくな内容はないのよ。ネットに転がっている「感想」は、クリエイターさん向けのものではなく、読者同士の交流のためにあるものだと割り切ってしまってもいいかもしれないわ。

あと、1000人の素人の感想に意味があるとしたら、きちんとした統計データとして解析する場合ね。それなら有意義だと私も思うわ。ひとつひとつの悪口って、ほんと有害無益だから、クリエイターさんは一瞥もしなくていいわよ。


2.「嫌いな人リスト」にならないか?

ブロックリストについて、恣意的な運用を心配する声はけっこうあったわ。

うーん。これについては、可能性としては本当にありうる話よね……。

例えば、「この人は前に揉めて、むかつくから入れちゃおう」とか「わりとクリエイターさんに悪口リプライを送っているけど、友達だから見逃そう」とかね。

ブロックリスト・プロジェクトにおいては、「ブロックリストに入れる条件」を明確化し、条件に該当するなら私情を排して機械的に入れる、該当しないなら同様に入れない――という形で対応することが大事になりそうね。

仮に、私が基準を考えるなら、こんな感じかしら?

ジェンダークレーマーの定義に該当すること。つまり、単に「あなたのマンガは面白くない」など、作者当人や作品自体のキャンセルや、表現規制的な改変を求めていないものは該当しない。
ジェンダークレーマーの定義には該当しないが、悪質なクレーマーであること。ここでいう「悪質なクレーマー」とは、誹謗中傷・罵詈雑言が含まれるメッセージを"常習的に"送付しているアカウントを指す。(常習的であれば、攻撃の対象となっているクリエイターが同一人物でなくても構わない。)
TwitterなどSNSの通報機能を悪用し、クリエイターをアカウント凍結に追い込むことが目的化していること。

「悪質」の条件はもっと定量的な形で詰めた方がいいと思うけど(誹謗中傷・罵詈雑言も定義し、「常習的」も具体的に何回なのか定める)、大まかな方針としてはそれなりだと思うわ。

3.「ジェンダークレームブロックリスト」で良いの?

そして、これは私からの懸念事項になるんだけど……。

本日5月8日、りんご飴さんとも協力関係にある天路めあさんが、次の告知を出していらっしゃったのを見たわ。(下記ツイートは5月7日のもの。)

うーん……。「ジェンダークレームブロックリスト」って名付けちゃうと、「ジェンダークレームには該当しない悪質なクレーム」はカバーできなくなるけど、大丈夫かしら? ちょっと心配ね。

私はりんご飴さんとの会話で、単に「ブロックリスト」と聞いていたから、これは「ジェンダークレーム」に限定されていないと捉えたわ。アンケートの文章もそれに合わせた形にしてあるのよ。(「理不尽なクレーマーによる誹謗中傷」という幅広い書き方をしたわね。)

当然ながら、「あくまでもジェンダークレームブロックリストであって、全クレームブロックリストではありません。」と割り切るのもありだとは思うわ。ここはプロジェクトメンバーの考え方次第なんだけど、とにかくはっきりと決めた方がいいでしょう。

一応、神崎ゆきさんの記事から「ジェンダークレーム」の定義を引用しておきましょう。

【ジェンダークレームの定義】

 ジェンダーの観点から、表現者、表現の監督者・責任者、表現の掲載媒体又は表現の消費者等に対して、女性の権利等を根拠に強く訴えられる一連の主張のうち、現状まで公的に認められていた権利の基準を少なくとも実質上、表現者側に不利に変更する内容のものをいう。

 ただし、自然科学的研究等、公的に正当とみなされる手法に基づく学術研究又は事実認定により、その主張に係る正当性の担保が取れる場合にあっては、この限りではない。

 なお、ジェンダーの定義は、独立行政法人JICAによる、「社会的・文化的につくられる性別」に基づくものとし、この定義に逸脱しない範囲において、同様の定義を認める。

神崎ゆき『ジェンダークレーマーの定義』

「ジェンダークレームブロックリスト」ではブロックできないものとしては、例えば、

「絵がクッソ下手www」
「このキャラほんとキモイ!」
「物語がマジでゴミ、つまんねえ」
「(このクリエイターの容姿が)ブサイク!」

などの非生産的な悪口を粘着質に延々送りまくる行為なんかが該当するわね。

なぜなら、いずれも「(表現する自由の)権利の基準を少なくとも実質上、表現者側に不利に変更する内容」ではないからよ。(ジェンダーに基づいておらず、表現規制論やキャンセル要求でもない。)

あるクレームを、ジェンダークレームと呼ぶには、「その表現物は女性をモノ化しているから、公共の場からは撤去されるべきだ」くらいまで言って、初めてそうなるのよね。だから、シンプルな悪口や嫌がらせは該当しないわ。

このように「悪質なクレームではあるけど、ジェンダークレームではないもの」はけっこう存在するから、作成予定だという「ブロックリスト」がこれらにも対応したいのか、それとも別に対応するつもりはないのかは、名称として分かるようにした方がいいでしょう。

Twitterアカウント「手嶋海嶺」にも日夜たくさんの悪口がお届けされるのだけど、99%は「悪口としては相当ひどいけど、まあ"ジェンダークレーム"ではないわね!」って感じなのよ。そもそも私のツイートやnote記事って、「ジェンダークレーム」の対象になるようなものではないからね。

とはいえ、ブロックリストの方針として、「ジェンダークレーマーに限定する」にせよ、「悪質なクレーマー全般に出来るだけ対応する」にせよ、クリエイターさんやそのファンの方々にとっては有益でしょうから、どちらでも応援はするわ!

ただし、「ジェンダークレームブロックリスト」という名称のまま、実質は「悪質クレーマーブロックリスト」にするのは心底お勧めしないわ。せっかく定義した「ジェンダークレーム」が壊れちゃうから。(「性的消費」と同じく、何でも叩ける便利な棒になってしまうわ……。)

今回の記事は以上!

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