英語の中1ギャップの考え方―正しく悩むための考え方―

 中学校に入って英語学習が本格化すると、いわゆる中1ギャップと呼ばれる勉強についていけない事態に陥ることがあります。家庭教師として勉強を教えていて、この英語の中1ギャップに陥っている生徒には多く出会ってきて、いろいろな試行錯誤をしてきました。ここでは、その克服法のノウハウを公開したいと思います。
 この記事ではその前半として、英語の中1ギャップの捉え方・考え方について説明します。

(1)中1ギャップを埋めるには長期ビジョンが必要
 まず大前提として、英語学習が中1ギャップに陥っている時点で長期戦を覚悟しなければなりません。なぜなら、事実として中学入学以前に他の子とかなりの英語力の差があるからです。これは近年の英会話や英語塾ブームが大きく影響していて、今の小学生はかなりの割合で英会話経験者です。この格差は親世代にはあまりなかったもので、中1ギャップが大きな問題になっている理由の一つだと思います。
 例えばスポーツなら、経験者とそうでない人の差を素直に認められることが多いです。しかし、中1の英語では経験者と初学者という考え方が欠けています。まず、これを認めることから始まります。そして、初学者が経験者を追い越すためには長期戦になることを覚悟しなければなりません。

(2)追いつき追い越すタイミングは中2の2学期
 では、いつのタイミングで英語初学者の中1は経験者に追いつくことができるのか?私の感覚では、チャンスは中2の2学期です。このタイミングなのにはいくつか理由があります。
・地道に単語の書き取り練習をすればこの頃には覚えることに苦労しなくなる
・不定詞あたりから文法が難しくなり、英会話経験者のアドバンテージ消える
2年生の2学期くらいから、中学からの英語初学者グループは英単語スペルの暗記に慣れてくる一方で、英語経験者は文法が難しくなるとアドバンテージを失います。そうなると両者の差がなくなるといった具合です。
 私が受け持っている国際系の高校に通っている生徒がこのパターンで逆転していったタイプです。中1の時のテストは60点前後でしたが、中2の2学期の期末テストの英語で初めて90点台を取って、それ以来ずっと90点をキープしていました。

(3)英単語のスペルより英文法の苦手を作らない
 先述の90点台を取れるようになった生徒が逆転できた原因は、中1から英文法の理解ができていたからです。
中1ギャップの原因で最も多いのが、英単語のスペルが書けないというもの。これは、英会話経験者や塾に行っている子は中学入学以前に英単語をすでに覚えていることから生じます。英単語は知っている単語のストックが多ければ多いほど早く覚えられます。おそらく音とスペルのパターンを感覚的に身につけられるからだと考えられます。だから英語経験者組は英単語の覚えるスピードが指数的に早くなるのですが、初学者組ははじめは覚えるのが遅いためにすごく差を感じます。これは事実として仕方なくて、地道に努力して、時間が解決してくれるのを待つしかありません。
しかしながら、英文法は別次元の話です。学校の授業レベルの多少の英単語の識別や音読ができるようになれば英文法を教えることは可能です。特に、並べ替え問題が大切だと思います。今までの経験上、これは単語が弱い生徒でも取り組みやすいです。おそらく単語が全て示されていて、自分の頭から引っ張り出さなくてもいいからだと思います。また、多くの単語と触れられる上に、文構造についての理解にも役に立ちます。ここでしっかりと文型と品詞の感覚を鍛えておけば、不定詞以降の難しくなる中学英文法の基礎になり、逆転の楔を打つことになります。

(4)定期テストよりまずは英検に価値観を置く
 中学の定期テストは英単語や英文を書く力を強く求めます。英単語を書いたり覚えたりすることに遅れを取っている子達にとって定期テストはとても相性が悪いです。
 そこで私が提案するのは、英語学習の当面の目標を英検5級にすることです。英検5級ならばマーク試験ですし、リーディングとリスニングなので書く力は求められません。英単語を日本語に訳せて、並び替え問題にある程度対応できて、リスニングができれば十分に合格できます。また、英検5級を取ることでその子の自信になります。私の生徒で英検5級を不合格になった生徒は今までいませんし、その意味でも英語学習の1つの達成感を得るためにはいい目標になると思います。

(5)高校入試からの逆算で考える
 英語の中1ギャップでの問い合わせ頂いた時にすることのもう1つが、高校入試の実際を知ってもらうという方法です。私の県の公立入試の問題の場合、読解6割、英作文3割、リスニング1割となっており、英作文は英文を読んで答えなきゃいけないし、リスニングも答えの選択肢の多くが英文を選ぶものになっています。つまり、結局は英文が読めないと手が出ないんです。その意味で、実は英単語のスペルを覚えるのが苦手なのはそこまで問題ではなくて、英語→日本語の翻訳ができることが重要です。上記で英検に重きを置いた英語学習を提案しましたが、実は高校入試の観点からもリーティングが重要です。その点から、英単語のスペルを覚えるのが遅いのは、実は決定的なことでもないんです。

(6)英単語のスペルは誰でもそのうち書けるようになる
 英単語のスペルが覚えられずに悩む中学生にもう1つアドバイスするのが、スペルの暗記の問題は時間が解決してくれる類のものだということです。練習し続ければ誰でも書けるようになります。ひらがなや漢字がちゃんと書ける生徒ならすでに同じような暗記を一度乗り越えていて、今回も頑張れば克服できる問題です。このことを自覚していかに地道に続けられるかが大切だと思います。

(7)最後に
英単語のスペルが覚えられなことはイコール英語ができないことではありません。このあたりを子どもが本気で理解できているかどうかが重要だと思います。

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