花粉症な僕

僕にとって一年の中で一番辛い季節がやってきた。

花粉が舞い散る世の中に殺されそうになるほど
全身から水分が抜けるのではないかと思うほど鼻水が止まらない季節がやってきた。

僕が初めて花粉症だと自覚したのは小学生の時だ。
とめどなく出てくる液体に僕は恐怖を覚えた。
マスクをしていたのだがマスクがびちゃびちゃになってしまうほど溢れてくる。
普通にバレていたのかもしれないが子どもながらにティッシュをマスクに覆い隠された鼻に敷き詰めてバレぬように努めることに精一杯で、授業などまるで聞いていなかった。

それは中学、高校に上がっても変わらなかった。
僕の場合、3月・4月が花粉症の時期なので入学式や卒業式はとても辛かった。
マスクをしてはいけなかったので滴り落ちてくる鼻水を周りの人にどうバレずに対処すべきかを延々と考えていた。
式に参加するときは右手にハンカチを持ち鼻水が垂れてきた瞬間ものすごい速さでハンカチに鼻水を吸わせるように右手を動かす。

ずっと鼻水のことを考えていたので卒業式の最中、学校生活を振り返り、懐かしみ涙が溢れるなんてことは一度も無かった。
鼻水しか溢れてこない卒業式。
頭の中は鼻水の事と後何分で終わるかばかり考えていたのであまり良いものではなかった。

今までいろいろな薬を試してきたのだが効果は一つも感じられない。しかし、薬が効いているからあの程度で済んでいるのかもしれないと思ってしまい服用することは止められない。

今年は花粉の飛び始めが遅かったのか、いつもだったら2月中旬に症状が出始めるのだが3月に入ってからようやく症状が出始めた。
少しの間だけ、もしかしたら治ったのかもしれないという希望が垣間見えたが鼻から滴る液体に気づいた僕の前からそんな希望は消え去った。
花粉症が治るという奇跡はあまり信じないほうがいいだろう。

花粉症の何が辛いかというと鼻が詰まってしまい鼻声になってしまうので会話をしていても聞き取ってもらえなくなることが増える。
特にな行が言いづらい。
「無いです」が「あいです」になってしまうし、
「二台です」が「いだいです」になるし、
「ナチョス」が「あちょす」になってしまうので会話が通じなくなってしまう。
今から鼻声風に書いてみようと思う。

ぼくはおあいーをしゅういかいやっています。

どうだろう。内容的には鼻声風にしないと書けない事だったので皆さんに解読してみてほしい。

他にも困ることがある。鼻が詰まってしまうので鼻呼吸が出来ないことだ。
となると口呼吸をせざるを得なくなってしまう。
これが意外に困る。

特に感じるのは電車に乗っている時だ。
鼻が詰まってしまい苦しいのでどうしてもハアハアという呼吸音になってしまう。隣に座っている男がハアハア言っていたら誰でも嫌だろう。

だがハアハアと息をしないと生きていけない体になってしまったのでそのハアハアが聞こえないように最大限の注意を払わなければならない。
そのせいで苦しくなってしまって結果的にハアハア言ってしまう事になるのだがそれはもうしょうがない。
許してくれ。
変質者でもなんでもないので怯えないでくれ。
そんなことを思いながら電車に乗っているので、隣におじさんが座ってくれることを願うばかりだ。

花粉という見えない敵は僕にとって……

最後に何か上手い事を言って締めようと思ったけれど何も出てこなかった。

無理矢理格好つけるのは性に合わないなと思った僕は、漢方を飲み高級ティッシュに鼻を包ませながら明日には花粉症が治ってますようにと叶わぬ夢を願い、布団に体を預けた。



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