散歩する僕

朝5時、外に出た。

僕は散歩が好きなのだがあまり朝に散歩に行くことは無い。基本的に夜だ。
理由は明白だ。朝起きないからだ。
だけど今日は起きている。起きたのではなくずっと起きている。特にすることも無いので外に出て散歩をしてみることにした。
まだ人気はほとんど無いが充分に明るい世界はとても新鮮だった。人気のない住宅街を歩き、ほぼ店の開いていない商店街へと続く。
こんな街並みが星野源さんの「くせのうた」という曲ととても合っている。歩きながら聴いていると街並みがどんどんPVに見えてくる。
エモい。
これがエモい、だと思う。正直使い方があっているのか定かではないがどうしても使ってみたい衝動に駆られたので使ってしまった。
僕は昔からどうも若者言葉というのについていけてない感が否めない。
今では大分一般的となった「ディスってる」という言葉もなんか恥ずかしくて使えない。使い方もよく分かってないので無理に使用しない方が無難だ。
早く現実世界でもエモいと言ってみたいものだ。
そっと星野源さんに「貴方の曲とてもエモいです。」と内気な僕は心の中で呟いてみる。

ほぼ毎日使っている駅の前を通ってみたがシャッターで改札口が閉まっていた。
初めて見る光景だったので少し立ち止まってしまった。その改札口の向かいにある駅構内のコンビニも閉まっていた。始発は6:00と電光掲示板に表示してあった。ただただ朝早いなぁと思った。
凡人の感想だな。
始まったばかりの1日に僕を落胆させる。

凡人の散歩はまだ続く。
ほとんど人気は無いのだが時々見かける自転車で通る人、歩いている人は何をしにこんな時間から外に出ているんだろうと凝視してしまう。
仕事なのか、ランニングなのか、はたまた僕と同じ散歩なのか。
予想し、想像するだけで生活が広がる。
朝8時サラリーマンでごった返す駅前の波よりも、
朝5時もう充分明るいのに壊れているのか一つだけ点いている街灯に照らされている商店街の方が生活を感じられるのはなぜだろう。
その理由が分かった時は十二分にエモいの使い方も理解している頃だろう。

もうそろそろ帰ろうと思いコンビニを探す。朝食でも買おうと考えていた僕は黄緑色の看板を見つけた。
閉まっている。入口に張り紙が貼ってあり、そこには今月から営業時間が7:00から23:00になるという主旨のことが書いてあった。
働き方改革か。
諦め部屋に帰った僕は肺の空気を新鮮であろう外の空気と入れ替えたことを確認しソファでまた起きれるようにと祈りながら深く眠るのであった。
イヤホンから流れ出るエモさが僕を包み込み離さなかった。



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