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ボウシュウボラの卵守り行動(定点観察)

 今年に入ってから産卵を確認し、その後定点観察を続けているボウシュウボラですが、先日のダイビングで卵嚢からベリジャー幼生がハッチアウトを終えていないのに親が居なくなっていました。
 これまで毎年のように観察個体を決めて、定点観察を続けてきましたが、このような事は1度もありませんでした。親は産卵後に、ヒトデやウニなどの外敵から卵を守るために、全てのベリジャー幼生がハッチアウトするまでは、その場を離れることがありません。ところが、今回に限ってはどのような理由かは分かりませんが、親が居なくなってしまったのです。

放棄されてしまった卵嚢

 空になった卵嚢もあるので、ハッチアウトは始まっていますが、90%以上はまだ時間がかかりそうです。親が離れたのは、ここ数日の出来事なので、周囲を捜索してみました。幸いにして、巻き貝が歩いた跡を発見したので、辿ってゆくと…居ました!間違いなく、あの卵の親です。
 多分、自分の意思で離れたのでなければ、卵の場所に連れ戻せば卵守りを再開するのでは?と思い、戻してみました。次回の観察で、また離れてしまっていたら、これは場所や環境に何らかの要因があると考えるべきですが、無事に幼生のハッチアウトまで居てくれれば良いなと思っております。
 実は、居なくなった時に人為的な悪意によってでは?と疑いましたが、そう決めつけずに捜索をして良かったです。それほど離れていなかったとは言え、あの環境で30cmほどのボウシュウボラを見つけるのは至難の業です。
 戻す時に、見えない場所にいたガンガゼを触ってしまったようで、かなり痛かったです。ウインターグローブはしていましたが、手のひらに何本もの棘が刺さっていました。まぁ卵守り行動が継続してくれれば、この程度の痛みはなんてことありません。自分の意思ではなく、卵から離れてしまった親の気持ちに比べればね。

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