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『青春18きっぷ』静岡3時間ロングシートなんて僕には無理だった

普通列車だけで東京から名古屋へ

とある事を完遂するために、9月4日に東京から名古屋方面へ向かった。

東京〜名古屋間の移動は何を使うのが一般的だろう。
オーソドックスな新幹線?安い高速バス?まさかの飛行機?

今回の移動では「青春18きっぷ」を利用した。
このきっぷは1枚につき5回使用可能。値段にして12050円、一回当たり2410円というお得なきっぷである。

安い理由に、「普通列車以外は原則乗車できない」というのがある。
一部区間を除いて、特急券を購入しても、駅員さんに土下座をしても何が何でも新幹線や特急列車には乗車できない

そうなると普通列車で長い時間を掛けて移動することになる。
利用者の間では「普通列車で抜けるには辛い区間」というのも存在する。

今回は東京〜名古屋間の普通列車について、そして普通列車を利用している際に新幹線との差はどれだけ生まれるのかというの2点についてまとめよう。

雨の東京からくもりの三島へ

最寄駅から午前5時前に出発する始発列車に乗り込み東京駅へ向かった。
東京駅始発の熱海行き、6時05分発の東海道線の電車に乗り換えた。

JR東日本の東海道線内の車両には普通列車グリーン車が連結されている。今回は追加料金を支払って、快適な座席で向かう。

9月4日の東京はあいにくの雨。
せっかく乗車したグリーン車の窓は雨粒で景色を歪ませていた。

東京駅を出てすぐ。窓には雨粒。

東京から熱海まで約1時間55分の旅。熱海には7時59分に到着する。

グリーン車から眺める平日の風景というのは格別な気分にさせてくれる。
人で溢れかえりそうな横浜を抜けて、海辺の景色が見え始めた小田原近郊、そして波が岸壁に打ち付ける姿を見て熱海へ。

向こう側に見える人混みは京急横浜駅。すごい人。
小田原駅付近・酒匂川。前に見える橋は小田原大橋。
湯河原駅付近。波が荒々しい。

熱海に到着してもゆっくりはできない。3分後に出る静岡行きに乗り換える。
慌ただしくホームや階段を駆け抜ける。

さて、ここまではいい。
快適な座席、優越感、旅の始まり特有の高揚感。

問題はここからだ。
名古屋へ向かうために、静岡区間をどうやって抜けるか、だ。

最大の山場・静岡県区間へ

はじめに申し上げたとおり、青春18きっぷを使用するからには普通列車以外に選択肢は存在しない。
そんな青春18きっぷを使う上で、普通列車で抜けるには辛い区間として有名な区間が「静岡県内」特に「熱海〜豊橋」区間である。

なぜ、静岡県内、特に熱海から豊橋駅間が辛いとされているのか。
ネット上の意見をまとめるとこうなる。

  • 編成が短いのに利用者が多い

  • 駅を通過する快速列車の本数が少ない

  • ロングシート車両の多さ

東京から熱海の車両数は15両。対して、静岡県内の東海道線では3〜6両編成で運行されることが多く、実際に乗車した熱海から三島間の車両は6両での運転。

長期休み期間に発売される青春18きっぷ期間中では利用者が増えてしまい、3〜6両では捌けないほどの人で車内が混み合う。

次に快速列車の無さ。
一部の時間帯では追加料金を支払うことで乗車できる「ホームライナー」の存在もあるが、日中帯の多くが各駅停車、乗り換えた三島駅の時刻表には快速がない。必然と所要時間は増える。

そして、時間が掛かる上で多くの車両がロングシートであること。
ロングシートとクロスシートを比べると快適性はクロスシートが勝る。
長時間の利用を考えれば、ロングシート車両は厳しい。

そんな静岡県内の対処法を多くのサイトで共通の項目を挙げていた。

  • 一部区間を新幹線で利用する

  • 途中下車でメリハリをつける

青春18きっぷの強みを捨てて、追加料金を支払って並走する東海道新幹線に乗り換えるか、青春18きっぷの効力でもある途中下車を利用し、リフレッシュする。

しかし、今回の移動では上記の二つを併存させることはできない。

今回の移動では途中下車をする時間的余裕がない。
そして個人的な思いとして、お金を使わずに青春18きっぷのみで行程を完遂させたい青春18きっぷをテーマにした記事なのだから新幹線という逃げを利用するわけにはいかないと思っている。

そんな面倒な人間にぴったりな列車が三島駅から始発で発車する。

三島駅から長距離列車に乗り込む

乗換案内にこんな文字が出ていた。

Yahoo乗り換えの画像。当たり前のように3時間以上の列車を出すんじゃない。

文字を見た瞬間に厳しい戦いを覚悟した。

熱海駅から愛知県の主要駅の一つである豊橋駅までの距離は189.0km

表示された列車は三島駅を8時27分に出発すると豊橋駅には11時36分に到着。
172.9kmを走破する

約3時間近くを走破するこの列車。
NHK朝ドラの時間から、ヒルナンデスとかぽかぽかの時間が目の前までに迫っている時間まで走り続ける。
そんな長い時間を電車で過ごす。乗り続けるのは容易ではない。

だからこそ、途中下車をするべきだ。ということだが、途中下車をすると目的地までの時刻が1時間ずれていく。

それだけは避けたい。
苦渋の決断で三島駅発・豊橋行きに乗車することを決めた。

3時間近くの勝負の始まり

三島駅に到着し、豊橋行きの出るホームへと向かった。
多くの人が改札へ向かう中、自分だけホームへ向かうのがどこか寂しく感じた。ホームでは電車を待っている人が多いなという印象を抱いた。
通勤・通学で利用する人が多いのだろうか。また、豊橋駅まで向かう人はいるのだろうか。

さて、勝負の上で重要なのは、相手(車両)がどんなものかを知る必要がある。
ロングシートかクロスシートか。

ドキドキとする気持ちを抑え続け、発車時刻の7分前に接近放送が響いた。
遠くからゆっくりと入線してくる車両は白く、オレンジの線が入っている。

そして、目の前に滑り込む。

ロングシートが目に入った。311系だ。

どこかチャンスはあるのでは?と微かな希望はここで打ち崩された。

しかし、早めからホームにいたことが功を奏したか、端の座席は確保できた。
真ん中の座席であれば、辛さが一段階違っただろう。

いよいよ出発。
豊橋駅まで3時間9分という長丁場が始まる。

車窓から見える新幹線は幻のようだった

電車内で何をするかは決めていた。
最近読み始めた「同志少女よ、敵を撃て」を読むこと。本のページ数は500ページ近くあって、時間消費にはもってこいだ。

しかし、早朝からの移動で疲れがあるのか本の内容が入ってこない。
そして眠さも混じる。気づけば、眠りに落ちていた。

そこから1時間程度は寝ていたと思う。
目を覚まし、顔を上げると静岡駅付近を走行していた。

それでも3分の1も消化していない。
そんな事実に脱力感が覆った。

先を思うと押しつぶされそうになる気持ちの中、後方から轟音が響いた。

振り向けば、新幹線が通過していく。
その姿は幻かというほどに速かった。

静岡駅を出て、浜松駅へ向かう区間も1時間10分以上の時間が掛かる。

途中で見えた大井川は水が少ないのか川底が見えた。

大井川。この時期はいつもこうなんでしょうか?

途中で見える新幹線に飛び乗れたならどれだけ楽だろうか。

たぶんのぞみ。ものすごいスピードだというのに、音は小さい。

東海道線を走る列車と新幹線の差

三島駅を8時27分に出発したが、後を追う形になる新幹線はどのようにして追い抜いて行ったのだろうか。

在来線の列車が発車した後に、こだま707号が8時55分に発車する。

静岡には9時18分に到着するのに対して、在来線は9時38分到着と20分の差が。
浜松には新幹線だと9時49分到着に対して、在来線は10時53分到着。

左に新幹線。右に今回乗車した在来線の動きと時間。静岡・浜松到着時の比較。

最終的に豊橋では新幹線だと10時08分到着に対して、在来線は11時36分到着。最終的な差は1時間34分にまで開く。

ちなみに、三島〜豊橋間を新幹線で利用する場合、指定席で6340円、自由席で5610円と決して安い値段。とは言えない料金を支払うことになる。

浜松に到着した時には心も尻も壊れかけた

電車は浜松に到着した。
その際に、「後ろ3両は浜松止まりです」というアナウンスが響いた。

三島から浜松は2時間28分。
後は浜松から豊橋間を残すのみだ。

体をゆっくりと立ち上がらせると、重たさを感じる。体の節々が痛い。そして、尻が痛い。
腫れているのでは?と思うほどに熱を帯びていて痛い。

それでも乗り換えなくては。
足を引き摺るように歩き出した。

長いロングシートととの戦いはひと段落。

切り離しということは、前方の車両はクロスシートの可能性もある。
豊橋へ向かう車両へ移動する。
しかし、車両を見て体が完全に止まってしまった。

211系。ロングシート。
中には人が多く乗り込んでいて、立ち客が殆ど。出発を今か今かと待っている。

その光景を見て、もういいや。と心が折れた。

次は11時25分発の岐阜行き。もうこれにしよう。

当時のホームは34度と暑かったが、疲れのせいでホームで立ち尽くした。

ホームの彼方には白い東海道新幹線が入線していた。
あれに乗れればと思わずにいられなかった。お金がかからないことの代償はあまりにも大きい。

ガラスの向こうに東海道新幹線が停車している。

私には静岡県内の東海道線を制覇できなかった

乗り換えた車両はクロスシート車両だった。
ある意味、勝ったと言えるし負けたとも言える。

JR東海の車両は似たようなものばかり。中身を開けるまで何が入っているのかわからない。

本来であれば、ロングシート車両で完走したことを記事にするべきだろうが、あのまま続けていれば尻が凄惨たる状態に陥ったことを報告することになっていたに違いない。

白い東海道新幹線の姿を見て、「いつでも東海道新幹線に乗れる大人にならないと。尻を痛めることもない大人にならなくては」と思った。まだまだ青臭い人間であることを実感した。

弁天島駅から見えた浜名湖は自分の気持ちを表すかのように少し濁っていた。

浜名湖。雨のせいか濁っていた。それでも綺麗なものは綺麗だ。
弁天島駅付近。新幹線の凄さを思い知る。

ちなみに、今回比較した「こだま707号」もまた追い抜かれる立場であり、名古屋に10時37分に到着するまで、のぞみ・ひかりに10本近く抜かれている。
上には上がある。ということだ。なんだかそれも虚しい話だ。

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