アンプは「単なる補正の道具」でしかないこと。

これは学生さんや社会人の方に向けて書きます。
バンドのリハーサルなどを見ていると、アンプを使う人が「自分の好きな音量」でやっているケースというのを実によく見かけます。これをやってしまうと管楽器はどんなに押さえてもmfくらいでしか吹けなくて、曲のピークのところで燃え尽きちゃったりします。ていうかこれをやっちゃうとダイナミクスの幅が狭くてのべつうるさくなってしまいます。良いこと一つもありません。アンプを使う楽器っていうのは、ソリッドギターやエレベやキーボードみたいに共鳴する箱がないか小さいかでアンプで持ち上げないとダメな楽器なのですが、だからと言って好きな音量でやっていいものではありません。生音の楽器とバランスする音量で演奏するべきなんです。これはジャズに限らずロックやソウルやファンクでも同じです。60年代のエド.サリヴァン.ショウの映像を見ていると、マイクは集音のために立てているだけで、ヴォーカル以外はほぼ生音です。ジェイムス,ブラウンですらそうです。我々日本人は海外のプレイヤーをコンサートで見る時にPAで持ち上げられた音を聞くことが多いので「音デカい!」って思いがちですが違います。せいぜいmpくらいでやってるバランスを持ち上げてるだけなのです。アメリカのジャズクラブでビッグバンドをかぶりつきで見ててもうるさくないのは、彼らがうるさく吹いてないからなんです。黎明期のロックなんかでも全然音大きくないです。この辺りが見事に見落とされている気がします。

私は、自分が仕切ってるバンドでは極力アンプを使いません。ギターはアンプで補正しないと管楽器にバランスしないので使いますが、ベースは2018年くらいからほぼ生音一本槍で、今年はビッグバンドでも生ベースを試して上手くいきました。アンプやPAで音量を稼ぐよりも、生音でピアニシモをフルに活かせる方がより繊細なサウンドを作れるので良いと思います。それを確信したのが2019年にニューヨークで参加してきたバリー.ハリスのラージアンサンブルのリハーサルへの参加でした。大きなスタジオにビッグバンドと十数名のコーラスとストリングスでやるんですが、アンプやマイクは誰も使わないで見事にバランスしてるんです。これがバリー.ハリスのデフォルト、すなわち往年のジャイアンツの「普通」でした。楽器には音量によって様々な音の質感の違いがあるし、ラウドに吹くとフレージングそのものがガサツに聞こえちゃうんです。ソフトにアンサンブルさせるとサウンドはタイトになります。この辺りを考えながら音色を作って行ったらサウンドの質がグッと良くなると思います。参考までにバリーさんのラージアンサンブルのリハの吹き録り映像を添付します。自分のiphone手に持っての録画なので自分が少し大きく聞こえますが、ピアニシモで吹いてるサックスの音の質感とか実に素敵です。

https://www.youtube.com/shorts/x-oQJHsb2yo



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