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しごおわ

水のなーがれに鳥がうーたうー
水のなーがれにラララ ○○がうたうー

小学生の頃、いつも、家業の一員として働いていた。
親が、空のタンクをひっくり返して、水がザーッと流れる音が、仕事終わりの合図だった。

あー、仕事が終わるー、やったー。

いっしょに働いていた姉(小学生)と、冒頭の歌を、高らかに歌った。

40年たった今は、都会の会社員で、仕事を終えて、電車で帰る。
金曜日。
スマホのToDoリストやカレンダーをみて、にやける。
週末だよ。休みだよ。
何するかな。ワクワク。

途中駅で乗り換え、ホームに降り立つと
4月下旬の、あたたかい、やわらかな風に、ふっと包まれる。
しごおわ、幸せだな、と思う。

仕事終わりにタンクの水を流す必要はないけれど、
つい頭の中で、「水のなーがれに」と歌う。
昔から骨身にしみついたものは、離れないね。

しかし、好きな仕事でよかった。
いつも忙しく、気がつくと「あっ、もうこんな時間?」という感じだ。

好きな仕事じゃなかったり、時間を切り売りするバイトだったら、ちょいちょい時計を見ては、まだ10分? まだ2時? なんて思うものだ。
時間の経過より、仕事に没入できるのは、幸せなことだ、と思う。

休日に、自分の時間をすべて、自分の意志で、好きなこと、やりたいことに費やせるのは、最上の幸せである。
嫌なこととか、気が進まないつきあいとか、一切しない。
仕事をするときもある。それが自分の安寧につながるときは。
明日も休日だけど、家だからこそできる仕事をする。
自分のすることを、自分でコントロールするのが、大事なのだ。

もちろん、家事もする。
掃除、洗濯、片付け、料理などでリセットするのは、当たり前に必要だ。
テレビも見るし、ネットも見るし、本や映画や撮り溜めたドラマも見る。
全然見終わらなくて、見るべきコンテンツは積み上がっていく。
病院もいく。買い物も。親に服を買って送ろう、手紙も入れよう、メルカリも投稿しよう、それが売れたら発送しよう。

やりたいことは、全然終わらない。
そして、あっという間に、日曜が終わるんだ。
きっとこの週末も。