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リノベで気になるBefore-After

1.リノベーションを理解する

近年、国土交通省が既存ストックの有効活用を促すようになってから、リノベーションという名前が建築業界を飛び越えて一般化してきた。
朝のニュースやお昼のワイドショーでも特集されるようになっているからだろう。
そういった番組ではリノベーションという言葉が、オシャレワードの一つとして紹介されていることが多いので、リフォームとリノベーションの言葉の意味の違いについておさらいしておきたい。

『一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会』の定義<リフォーム> 「元に戻す」原状回復のための修繕・営繕、不具合箇所への部分的な対処。<リノベーション> 「つくり変える」機能、価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した包括的な改修。

リフォームは元に戻す、リノベーションはつくり変える行為と言われている。
私が建築士の仕事でお客さんに説明する際は、リフォームはマイナスから±0に戻す行為で、リノベーションはマイナスから付加価値を加えてプラスにもっていく行為と説明する。
分かりやすく言葉にしたとしても、やはりお客さんは理解してくれない場合がある。
そこでお客さんに伝える一番の手段は写真になってくるが、お客さんは空間を想像するという訓練をしていないため、伝わりやすい写真を見せなければならない。
撮り方、見せ方には間違いなくコツがある。

2.大事なのはBefore

某テレビ番組で「なんということでしょう!」というフレーズが毎回使われていたが、あの表現はあながち間違っていない。
人に強く伝えるには感情に訴えかけること、驚きが必要になってくる。
驚かせるためには、予備知識や基準となるものが必要になってくる。
リノベーションにおいて驚きを生む予備知識は、疑うこともなく工事前Beforeの状況である。
様々な住宅会社やメディアを見て、Beforeの写真にこだわった企業は少ないことがわかる。
スマートフォンで撮ったもの、垂直水平がとられていないもの、広角レンズを使っていないものがほとんどである。
もしリノベーションの施工事例をより魅力的に、他社と差別化してお客さんに伝えるためには、Beforeの写真こそプロに頼んで丁寧に撮るべきなんじゃないでしょうか。

3.完成をイメージして撮る

お客さんが見て理解しやすく、また設計者側も説明しやすい写真は、同じ構図で撮ることに限る。
理想は撮影位置、構図、画角の完全一致であるが、それは難易度が高い。
工事前後で床を直すと高さが変わったり、位置をバミっておくこともできない等、困難な理由はいくつかある。
このようにほぼほぼ同じ構図であれば十分に伝わるはずだ。

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撮影のポイントは、既存の状態から完成を想像できるかどうかである。
そのため撮影者が図面を読めるか、立ち会う設計者が完成イメージを伝えながら撮影位置を指示するか、パースを作成しこの構図で撮って欲しいと指示する等、なんらかの技術や工夫が必要になってくる。

4.共通点を感じさせられるかがポイント

同じ空間であることを認識させるには、Before-Afterの写真で分かりやすい共通点が見出せるかどうかにかかってくる。
そのためBefore-Afterで変わらないものに注目して撮影するのが良い。
例えば見えている柱や梁の位置が変わらない場合は、それらを同じ場所に配置した構図で撮影することで、とても伝わりやすい写真になる。

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またBefore-Afterで変わらない部分は、リノベーションらしいデザインのポイントとも一致することが多く、設計意図や空間の特徴を捉えた写真にもなりやすいので、設計者にも喜ばれるものになる。

5.まとめ

リノベーション物件はBefore-Afterの写真を是非撮って欲しい。
Beforeの写真があることでお客さんを驚かせる予備知識になる。
予備知識を持った上でAfterの写真を見ることでお客さんは驚き、感情に訴えかけられることで印象が強く残る。
そこで完成後の空間が魅力的であれば、お客さんはその会社や設計者により好印象を抱き、仕事を依頼する可能性が高まるかもしれません。
Before-Afterで見せる際のコツは、同じ構図で共通点を感じさせるようなポイントを入れて撮ることで、その共通点というのが実は設計者が意図したデザインのポイントでもあることが多いく、設計意図表現として設計者好みの写真にもなり得る。
そのような写真を撮るには、撮影者の図面理解能力や立ち会う設計者の伝える力が必要で難易度は高いが、上手くいけば将来のお客さんにも、設計者にとっても貴重な資料になる。
Beforeをきれいに撮っている会社はまだ少ないので、他社との差別化のためにも是非挑戦していただきたい。

私の撮影実績は、ポートフォリオサイトからご覧いただけます。


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