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建築写真を上手く撮るコツ

一級建築士として設計の仕事をしながら、写真家として複業をしている鶴見哲也です。
私が最も得意とする写真のジャンルは、建築写真です。
建築への理解があり、設計意図を汲み取る力があるのが理由です。
そんな私が考える建築写真を上手く撮る3つのコツをご紹介します。
今までの記事は、マガジンをご覧下さい。

1.窓から光と風景を取り込む構図

1つ目のコツは、窓を活かした構図です。
建築士が窓を配置する際、そこからの光の入り方や見える風景を意識しています。
例えばこの写真です。

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ロの字型の中庭のある住まいで、空間に対して斜めに構えてパースの効いた(遠近感のある)構図で撮影します。
ポイントは、中庭の窓と左奥のレースのカーテンのかかった窓です。
これを人が見る順番に分けて解説します。

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まず写真を見る時、最初に明るい所に目が行きます。
この写真で一番明るいのは①の中庭です。
そこから次に明るい所に目が行くので、ダイニングテーブルあたりに視線が移動します。
これで「中庭から光が注ぐ明るいダイニング」というイメージが伝わります。
次にパース(遠近感)を意識するので、③のカーテンのある窓に視線が移り、空間の広がりを感じます。
この時レースのカーテンを閉めたのは、その窓から見える景色が隣の家の外壁で、良い雰囲気ではなかったからです。
ドレープまで閉めると光を感じられず、②から③にスムーズに視線誘導できないため、光を感じられるレースのカーテンにしました。
③のあとは視線が最初の位置(中庭)に戻り、④の外壁や窓を見ることで、この住まいがコの字、またはロの字で中庭型の住まいという構成が想像できます。
このように窓からの光や風景で、①から④への視線誘導を意識して撮影することで、どのような住まいか伝わる写真が撮れます。
写真の技術としては、明るい所から見る習性とパース構図の2つを利用しています。

2.正対で空間の構成を撮る

2つ目は、構図の違いを理解して撮ることです。
以前の記事でも説明しましたが、パースの効いた構図と正対では伝わるイメージが異なります。

撮影を依頼してきた人がどのように写真を使うかイメージし、真っ直ぐ撮ること(正対構図)、斜めから撮ること(パース構図)を使い分けます。
1つ目で紹介した通り、パース構図は空間の広がりや開放感が表現しやすいのが特徴です。
正対構図はものの位置関係や大きさが把握しやすく、空間構成が説明しやすい写真になります。
例えばこの写真。

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屋根の形に沿った斜めの天井、高い所には梯子がかけられてロフトになり、窓際は長いカウンターがあります。
このようにとても説明しやすいので、設計にこだわりの強い方、コンテストに出すことを考えている方にとっては、どうしても欲しい構図となります。
ちなみに同じ空間をパース構図で撮影するとこのように見えます。

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カウンターが奥まで伸びていることが強調され、屋根に沿った斜めの天井という形態的な特徴が弱く見えませんか。
同じ空間でも撮り方で全く印象が変わるため、使い分けが大切です。

3.引き算でこだわりを演出する

3つ目は写るものを減らしたり、あえてボカすことで存在感を消し、こだわりを演出する方法です。
広角で広く撮ったり、背景までボケの無い建築写真らしい写真とは逆の手法をあえて用います。
例えばこんな写真です。

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これはインテリアにこだわりのある家族が住む家の照明器具を撮った一枚です。
家づくりをするにあたって、いろんなインテリアショップを回って見つけたものらしく、まさしくこだわりそのものです。
これは広角の写真ではなかなか伝わりきりません。
逆に照明器具だけ撮っても、商品撮影になってしまうので違います。
標準域(24-70mm)で周辺情報を限定的に入れながら、こだわりそのものにしっかりピントを合わせて撮影するのがコツです。

4.建築写真で求められる組み写真の技術

1.窓から光と風景を取り込む構図
2.正対で空間の構成を撮る
3.引き算でこだわりを演出する

以上、3つのコツを紹介しました。
どれか1つだけで全てを撮りきるのではなく、3つのコツを組み合わせて様々な写真で建築の全体像、使い方、雰囲気を伝えるのが建築写真の真骨頂です。
つまり組み写真の技術です。
複数の写真で表現するため、様々な撮影技術を身につけておきましょう。

私の撮影実績は、ポートフォリオサイトからご覧いただけます。


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