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外国取引への下請法の適用

外国企業が日本企業に発注する場合、外国企業は親事業者として下請法上の規制を受けるでしょうか。また、日本企業が外国企業に発注する場合、当該取引は下請法の対象となるでしょうか。

この論点はかねてから不明確なものでしたが、最近、目立たない変化がありましたので、ご紹介します。

外国企業は親事業者となるか

まず、外国企業は親事業者として下請法上の規制を受けるかどうかについて。

この論点に関しては、つとに、中小企業庁が公表する「中小企業向けQ&A集(下請110番)」において次のような記載がありました。

Q13.海外法人との取引
A社(資本金900 万円)は、海外のB社(メーカー)から部品の製造の外注を受けています。B社は、納品した後に、いつも当初の発注金額からの減額を求めてきますが、B社に対して下請代金法違反を問えないのでしょうか。
A.
外国の法律に基づき設立された企業が日本国内に在住する企業に発注した場合、この外国企業に対して下請代金法が適用されるかについては、外国で行われた行為又は外国に在住する企業に対して、自国の下請代金法を適用できるかという、「域外適用」の問題が生じます。
下請代金法の趣旨が日本の下請事業者の不利益を擁護しようとするものである以上、外国企業に対しても下請代金法を適用すべきという考え方もありますが、現時点においては、国は運用上、海外法人の取締まりを行っていません

しかし、現在の同Q&A集では、この記載が全く見当たらなくなりました。過去のバージョンを国立国会図書館のWARPで調べてみますと、2019年3月2日時点のページには上記Q13の記載があることを確認できますが、2019年4月2日時点のページから、ごっそりと削除されました。(ただ、なぜかQ13がそのまま残ったPDF版が一部のリンク先に残っていましたが、こちらも現在では削除されています。)

最近、優越的地位の濫用規制を外国企業であるデジタルプラットフォーム事業者に対して適用していくことの議論が喧しいところです。

上記Q&Aの削除が何を意味するのかは分かりませんが、下請法の運用における何らかの変化の兆しといえるのかもしれません。

外国企業は下請事業者となるか

これに対し、外国に所在する事業者を下請事業者とする取引については、下請法は適用されないと考えられます(解説と分析〔第4版〕127頁)。下請法の目的は、下請取引を公正ならしめるとともに、「下請事業者の利益を保護」し、もって「国民経済の健全な発達に寄与する」ことにあるからです(同法1条)。

この点について、公正取引委員会が2020年6月に実施した親事業者に対する定期書面調査に係るFAQにおいて、次のような説明がなされました。このような記載は過去のFAQにはなかったものです。

Q6 海外の事業者との取引は調査の対象となるのですか。
A 日本国内において行われた取引であれば,対象となります。例えば,貴社が日本に所在する海外法人の支店と行った下請取引が該当します(Q16も参照ください。)。
Q16 下請事業者名簿には実際に取引のある支店等の情報を記入するのですか。
A 下請事業者の本社の郵便番号,住所,電話番号を記入してください。委託業務の種類や内容については,実際に取引している支店との取引内容を念頭に置いて記入してください。
ただし,海外法人の日本国内における支店と取引している場合は,当該支店の情報を記入してください(Q6も参照ください。)。

このような記載からも、公正取引委員会としては、外国に所在する事業者を相手方とする下請取引については、日本国内において取引が行われたといえる場合でない限り、下請法を適用しない方針であることが窺われます。


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