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「なぜ裏切ったのか言いなさい」第5話

 室内は静まり返っていた。校長は金属の塊となって動かない。部屋の中央の謎の装置も停止している。  トーコは倒れているジェイクに歩み寄る。 「ジェイク、生きてる?」  近づいて触ってみる。脈と呼吸はある。腹部の出血が気になった。服をめくって傷跡を確かめる。そこまで深い傷ではない。  あちこち調べて、後頭部からも出血しているのに気付いた。意識を失っているのは脳震盪かも知れない。  とりあえず腹部の出血には適当に絆創膏を貼っておく。  貼っている途中でジェイクが目を覚ました。 「ど

    • 「なぜ裏切ったのか言いなさい」第4話

       トーコは足を引きずるように階段を上って、三階へ。そして廊下を歩き、一つの教室の前で止まった。ここは五年前、二年二組の教室だった。  扉を開ける。明るい教室。午前中の陽光が射し込んでいる。 「あら、霧江先生、どうしたの?」  相馬が教卓の上に座って待っていた。 「そこはお尻を乗せる場所じゃないわよ」 「いいじゃん。もう誰も使わないし」 「誰もって事はないでしょう」 「ううん。誰も使わない」  相馬は言い切る。 「だってこの学校は、今日で終わりだから」 「……」  トーコは即座

      • 「なぜ裏切ったのか言いなさい」第3話

         その部屋は、研究所の地下二階にある。  白い壁、白い床、白い天井。そして白い医療用ベッドが二つ。  医療用ベッドには、それぞれ一人ずつの人間が眠っていた。  その他に二人の人間がいる。  一人は白いワイシャツと古びたスラックスに身を包んだ中年の男。何か不安そうな顔でオロオロしている。  もう一人は相馬レミ。腕を組んで目を閉じて、壁に背を預けている。  中年の男は、媚びを売るような表情で言う。 「相馬君。何か本気で言っているのかね?」 「既に手詰まりよ。校長先生」  相馬はニ

        • 「なぜ裏切ったのか言いなさい」第2話

           さっきまで、どこか心地よかった校舎裏の空気が、一瞬でよどんだような、トーコはそんな錯覚を覚えた。  相馬レミは意地の悪い笑顔を浮かべながら、トーコの前に立つ。 「どうなるか気になったから、観察していたけど、つまらない解決法をするものね」 「つまらないって何よ」 「ケチ臭いイジメっこなんか追いかけて、殴り倒して勝ち誇って、つまらないでしょう?」 「イジメをやめさせようとする事の何が悪いの?」  楽しいかどうかで選んでるわけではない。そうするべきだと思ったから止めただけだ。 「

        「なぜ裏切ったのか言いなさい」第5話

          「なぜ裏切ったのか言いなさい」第1話

           砲撃の爆発音が響く。石畳にコンクリートの破片が降り注ぐ。  既に駅や市庁舎の建物は崩れ落ち、市内のあちこちから煙が上がり、広場の巨大な噴水は側面にできたひび割れから水を噴き出している。  レグニルンスクの小都市は、戦争で破壊されつくされていた。  防衛側の軍隊は最後の撤退戦に移行した。  前進してくる敵軍と銃撃戦を繰り広げながら、負傷者を後送し、余った物資を後送し、対空装備を後送し、正規兵部隊を後送し……最後まで残されたのは傭兵部隊だ。  市街地では今もまだ、散発的に銃

          「なぜ裏切ったのか言いなさい」第1話