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「ブレイゼンブレイズ」がVRの殻を打ち破る

 みなさんごきげんよう。私の名はマクゴナガル・フェイリン。かつてVRバイオハザード4のマーセナリーズで世界一を取ったことのある男だ。しかも「クラシック古城」という人口が一番多いであろう部門で勝ち上がったガンマンであり、「一応世界一」とは格が違うことをいっておこう。
 今回アリゾナのトレーラーハウスから記事を書いているのは他でもない、MyDearestの「ブレイゼンブレイズ」のことを日本のみんなに伝えるためにキーをタイプしているのだ。

 私はVRゲームのプロフェッショナルとして常に上質なVRゲームを追い求めてきたのだが、私のVRゲームライブラリーは一向に埋まる気配が無い。SteamVRに至っては耳をすませば閑古鳥の鳴き声が聞こえそうな有様である。理由は単純、私の肥えた舌を満足させるような作品が一向に登場しないからだ。
 そもそも初代PSVRが発売してから8年くらいたつのにVRゲーム全体の発展が遅いというのは明らかに異常事態だ。その原因の一つがカメラワークだろう。VRユーザーは思ったよりも伸び悩み、それ故サンプルとなる母数が少ないがためにメーカーも試行錯誤する余地が生まれずゲーム性に縛りができているのだろう。

 だがMy Dearestが発表した「ブレイゼンブレイズ」は違う…。その殻を果敢に突き破ろうとする意欲的な一作だ。

 PVを見れば分かるとおりこの作品はプレイヤーがとにかく跳び回って戦うゲームであり、ワープ移動とかそういう拘束具だらけのゲームと一線を画していることがわかるだろう。一部のインディーもやってるかもしれないが、ノベライズやらなにやらで実績を積んできたMy Dearestがやってるとなれば話が違う。
 そしてQuestとSteamの同時発売ということも触れたい。大手のメーカーはだいたいマーケティングとか移植コストとか気にしてビッグタイトルをQuestやPSVR2限定でしか販売しないことが多く、ギークが多数派を占めるSteamに流通させることが少ない。
 しかし本作のような大胆なカメラワークのゲームはSteamVRで流して正解と言っていいだろう。なぜならSteamVRを触ってるやつはだいたいメタバースとかに入り浸っているやつが多く、急激なカメラ移動とかに慣れている人間が一定数いるからだ。
 また、同社はQuestを中心に作品展開を行っていたがだいたい演出の盛りすぎでスペックオーバーしていることが多く、なんか画面がプルプルしている印象があったのだが、Steam版はメモリに余裕があるためかそういうことが気にならなかった。

 そんなブレイゼンブレイズだが先日オープンベータが開催されていたのでVRゲームのPROとして見逃す手はなかった。ただ今回は接続が不安定だったりして長時間触れなかったから短期間に感じたことを記していく。

デフォルトがスムーズ移動

 私のようなVR-PROはゲームが始まるとオプションメニューから移動方式をワープ式からスムーズ式(FPSみたいにスティック移動する方式)に変えるところから始まる。逆に言えば大半のゲームはいまだにワープ式が多数派であり「いきなり酔うと悪いからまずはワープでやってね」という予防線を張っているわけだ。
 ブレイゼンブレイズもそういう作品だとナメていたが、起動直後のチュートリアルではいきなりスムーズ移動がデフォルトになっていたことに舌を巻いた。てっきり「あの映像は上達したらこうなりますが、まずはワープで慣れましょう」と言うのかと思ったら違い、いきなりプレイヤーにある程度のVR適正を求めているのだ。これはMy Dearestからの市場に対する挑戦状だなと私は思った。

AC6みたいなロックオンがある

 この手のゲームは敵がみんなビュンビュン飛び回るので自力で画面に捉え続けるのは難しい。まして本作はVRなので尚更難しい。今までならそういうゲーム性はそもそもVRに盛らないというのがお約束だったが、大胆にもMy Dearestはロックシステムを追加してきた。

 アーマードコアもロボットが跳び回るのでサイトに捉え続けるのが難しいゲームだったが、6ではカメラが絶対に追従し続けるロックオン機能が実装された。本作のシステムもあれとだいたい似たものだ。
 この手のロックシステムをVRでやると自分の意思から離れてカメラが動くので酔うと考えられていたが、本作ではカメラのロックをヨー角だけに絞っているので負担が少なく、射線の仰角をプレイヤーに委ねる形になっている。その上ロックを使うときはプレイヤーの意識も敵の方に向いているので自分の意思と反発するという事態も起きづらいのだ。

VRはもっと自由なカメラワークでよい

 今回のベータではジャンプボタンのストックが左右で分かれていたり、ふっ飛ばされたときに出る地球のグラフィックが小ぢんまりしている点が気になったが、そういう点に触れると話題の主旨から外れるので触れないことにする。

 私もVRバイオ4を敬愛するあまり「これ以上のゲーム性は出せないだろう」とか思っていたが、本作はご法度だとされてきたカメラワークを法人メーカーが市場に出してきたことが大きい。おそらく同人やインディーでも似たようなシステムを実装していたかもしれないが、本作はしっかりと最適化や調整が吟味されていることを伺える丁寧な出来栄えであった。

 このブレイゼンブレイズを境目にVRゲームがもっと自由になってDOOMエターナルやニンジャガイデンのような激しいスタイリッシュアクションもリリースされれば嬉しい。

 もうすぐでVR元年から10年経つが、私のライブラリーを潤すにふさわしい作品が増えてくれることを祈る。

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