一人でいたい。だけど一人では生きられない

 ここに告白する。
 私は19歳の男子高校生だ。
 留年したわけではない。
 中退して復活したわけでもない。
 転籍の関係で一年遅れ、そして四年制の高校を選択したがために起こったことだ。
 履歴に傷はつかないらしいが、多分そんなことはない。
 もうついている。
 とはいえそれを後悔してはいない。
 むしろ自分を見つめる時間ができて良かったと思っている。
 だが、自分を見つめ過ぎた気もしている。

 人は一人では生きていけない、という言葉がある。
 勿論そうだと思う。
 そうだと思うがゆえに拒絶しがたい。
 ケチをつける気はないのだが、それはそれとして理不尽だろうと思う。
 人は、私は、一人では生きてはいけない。
 しかし、許されるのであれば一人でいろんなことをしていたい。
 だがいろんなことをするには、たくさんの人の力を借りる必要がある。

 いやすぎる。

 そして、いやすぎると考えながらも人に縋っている自分が嫌いだ。
 中学は不登校になった末に家族に縋った。
 二年くらいは何もしなかったように思う。
 二年経ったくらいで罪悪感が湧き、自分で飯を作るようになった。
 これが割と面白い。
 最近は母の代わりに夕飯を作ることさえある。

 いやすぎると考えながらも来る友人を拒絶できない自分が嫌いだ。
 友人たちは自分と似たような境遇であり、仲は良いと思う。
 だが彼らはあまりにも自由すぎる。
 お互い自由人なのは承知だが、それはそれとして毎日のように縋られると非常に困る。
 更にはパソコンの閲覧履歴は見るし、創作のメモは見るし、プライバシーを侵害される。
 勿論、嫌だと言わない自分が悪い。
 それでも何故か嫌だと言えない。
 おそらくそれは、この境遇がもたらしたものだと思う。

 正直、この境遇は普通に暮らしているよりは良いものではないかと思っている。
 父はきちんと仕事をしているし、母は優しいし、友人もいないどころか毎日のように来る。
 私が通信制高校に通いながら週一でバイトをするという、普通とは呼べないような生活を送れているのは周りの人々のおかげだ。
 地獄の環境に身を置いているなんて言えば、もっとやばいところにいる人に失礼になるくらいには、優しい場所にいると思う。
 だが、時々それを呪わしく思うことがある。

 父はすごい。
 押し入れで鼠がポッキーを齧っているような家出身なのに、今では某企業のサラリーマンデザイナーである。
 だが、時々母を弄り過ぎる。
 勿論母は怒る。
 優しい母だがこの時だけは恐ろしい。
 父はすごいが、人間的にはどうかという部分もある。
 店員に対してキレているのも、私は好きではない。
 それも含めて父であると言えるのだが。

 母は優しい。
 中学で不登校になった私を、初めこそ叱責していたものの次第に受け入れてくれた。
 こんなありがたい話はないだろう。
 だが、母は統合失調症という病を患っており、不安定だ。
 この病気のことは誰にも話さないでね、と言われ、勿論私はそれを最近まで守り続けていた。
 誤解の多い病気であり、そして人ごとに症状が違うような病気だからだ。
 周りに話せば、距離を取られるのは想像はつく。
 しかしそれ故に、母の態度や愚痴からくる「責められている感」を誰にも話すことができなかった。
 母の家庭は最悪の一言だ。
 母から聞かされる母の家庭の話は恐ろしい。
 それなのに、母は自分から自らの母へと連絡を取り、嫌な思いをして私に愚痴を漏らす。
 故に責められているのか、と錯覚する。
 今思えばこのことをこどもの相談窓口やらに話さなかった自分がどうかしているのだろう。

 友人はありがたい。
 自分と同じような境遇を持ちながら、笑い合える友人など貴重すぎるだろう。
 価値観もそれなりに噛み合う。
 だが、上でも述べた通りあまりにもぐいぐいと近づいてくる。
 踏み込んできてほしくないところまで踏み込まれるのは、最悪の一言だ。
 正直比喩ではなく毎日のように遊びに来ていたので、親しい人であっても心の電池が消耗していく私は、ブチギレる寸前までいった。

 もっと言えることはある。
 だが、あまりにも色々な出来事が複雑に絡み合い過ぎた。
 これを私は「疲れたな……」の一言で済ませてしまう。
 良くない傾向だ。
 それは分かっている。
 しかし何故か私は自分を押し殺すのだ。
 押し殺せば、事が上手く運ぶからだ。

 とはいえ、この記事を公開している時点で私は少しだけ自分を曝け出せたと言える。
 正確には自暴自棄になっているだけなのかもしれないが、それでもこういうことを書けたのは大きな進歩だ。
 自分を押し殺すのは良いことではない。
 周りから見れば、些細なことで突然キレたように見える。
 適度に自己主張しなければ、生きられないのだ。

 一人でいたい。
 だけど一人では生きられない。
 これをどう乗り越えるかが、最近の課題だ。
 まあ、今すぐバイトを増やして一人暮らしでも始めるのが一番なのは確実なのだが、それはそれで辛いとなってしまうのが現状だ。
 だが必ず、近いうちにいろんなものと決別しなければならないだろう。
 父から、母から、友人から。
 きっとそこに新たな世界が待っているはずだ。
 とはいえ地獄に突っ込む気は甚だないので、この環境で自分をいかに高められるかが勝負だとも思っている。
 だが高めることに意識を割きすぎてもいけない。
 とても困った。
 困ったが、こういうことを考えていると、ちょっと意欲が湧いてくるというものだ。

 適度に頑張ろうと思う。

 
 



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