散髪難民(美容室難民)にはならずに済んだ

タイで暮らしていて、困るのが髪を切る時である。タイのローカルの美容院や理容室に行くと値段は安いのだが、そのヘアカットの仕方が古臭い感じが否めない。

日系の美容院に行けば、確かにカットのクオリティーでは日本品質で安心だが、如何せん値段が高い。

私が最初にタイに来た時(2008年頃か)に通っていた日系の美容院では、カットは700バーツであった。それが年を追うように100、200バーツと値上げがされていった。

今ではカットだけで1200バーツも取られてしまう店もある。日本で美容院に行くのとあまり変わらないというか、下手すると日本よりも高い店もあるのではないか。タイが物価の安い国ではもはや無くなったのだと気付く瞬間である。

そんなわけで、タイのローカルの美容院を探すわけであるが、これがなかなか難しい。

本日は近所のオンヌットの美容院巡りをした。1軒目はアパートの目の前にあった美容院であり、扉を開けた瞬間に、美容院の店主だろうか、男性の美容師と目があった。彼は客の髪の毛を切っていた。彼と一瞬の間、沈黙があったのちに、「髪を切りたいのですが」と私が言うと、店主が、「予約はありますか。無い?じゃあ、今日はダメです」と言ってきた。

平日の昼日中であるし、こんなバンコクの郊外の美容院で、予約がいっぱいでウィークイン客を受け付けないと言うのは、ああ、店主から出た咄嗟の嘘かもしれないなと思った。タイという場所は、郊外や田舎に行き、こちらが外国人だとわかると一気に閉鎖的になるようなタイ人とも出くわす国なのである。(まあ、これは外国はどこも一緒かもしれない。外国人嫌いというやつだ。)

次に向かった美容院では、「男性の客の髪は切っていない」という事で断られた。

そこで、「実は私は男性なんです」などと即座に返答すれば、髪を切ってもらえたかもしれないが、そういう当意即妙な返しというのは私が一番苦手とするところであった。

散髪を2軒も断られて、私はちょっと茫然自失になり、最初の方針を変更して日系の高い美容院に行ってしまおうかとも考えた。いやいや、ここで負けたら何のためにローカルエリアに住んでいるかわからない、もう少し頑張って探そうと思った。

そうして3分ほどトボトボと歩いていたら、たまたま良さげな美容院を発見した。角地にあって、外観も明るい。値段もきちんと掲示されてあった。

美容院に入ってみると、割と年配の女性の美容師が気さくな感じで挨拶をしてきた。ここなら感じが良さそうだと思った。そして、散髪の腕も申し分なかった。ちなみに400バーツである。

その店で気がついたのは、頭髪をシャンプーするときの水が温水だった事である。今までに行ったことのあるタイのローカルの美容院というのは、水でシャンプーする店ばかりであった。

タイローカルなのに珍しいと思った。いや、もしかしたら、タイの美容院というのはもうそういう方向に進んでいるのかもしれない。いつまでも冷水で洗髪するような習慣を維持していないのかもしれない。

それから店を出て、ソンテウに乗ろうとしたのだが、ここでも「外国人嫌い」のせいか分からないが、乗車拒否にあってしまった。

ソンテウのトラックが私に近付いてきて、まさしく私が乗ろうとした瞬間に、ソンテウは徐にスピードを上げて、走り去ってしまった。

想像するしか無いが、ドライバーが外国人を嫌っていて、客待ちの人間が遠目にも外国人だとわかり、乗車拒否したのだと思う。

今日あったことは、些細な事にすぎないけれど、タイという国は外国人がローカルエリアに暮らして、コスパよく暮らしていこうとすると、それはそれで厄介なことにも出くわしてしまう。

ソンテウという乗り物にしても、タイの庶民が乗る乗り物であり、外国人は金持ちと見做されるから、わざわざなんで好き好んで外国人がソンテウに乗るのだ?という疑問も、タイ人が持つかもしれなかった。

いやいや、タイに住む外国人の中にも、できるだけ出費を抑えて、チープにコスパよく暮らしたい人はいるのだよと教えたいのだが、そういうのは理解してもらえるのだろうか。

タイ人というのは一般的には明るくて、気難しくなく、話しやすい人は多い。それでも、彼らは自分たちの一線というのは頑なに守っているようなところがあって、それを超えてタイ社会を探るのは、かなり難しい気がしている。

そうやってタイ社会の深層部にまで入り込まずに、外国人としてタイ社会から得られる便益(全般的にまだまだ物価が安いことなど)を享受しながら、タイ社会でただただ暮らすというのが一番だと思っている。

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