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赤間硯、芦雪、大観

赤間硯 円硯

日枝陽一作 円硯


4月8日山口県の萩に行ってきました。今回の萩行きの目的は、この度、2024年山口伝統工芸展で大賞を取られた日枝陽一さんの円硯を見に行くことと、久しぶりにご本人にお会いしていろいろと裏話をお伺いしました。

ほかの作家さんは採石はせず、角材から硯を彫るわけですが、日枝さんは採石から行います。採石された原石の大きさや形状はまちまちで、その石の形状・性質から取り出せる最大の大きさを考えます。ですから、設計図は頭の中にあります。まさしく匠の世界です。今回の石は比較的薄い石だったようで、どういうふうに造形にすれば重厚感を出せるかが一つの課題だったようです。現物を見ると側面はすべて曲面加工されており、厚みがうまく表現されていますね。

もう一つの特徴は、道具としての実用性です。つまり用と美が備わっているということです。用があっての美、あくまでも用が主役。使ってなんぼの世界です。硯にも美が勝ちすぎて用をなさないものもあります。目立てや石質が不完全で用をなさないものもあります。実用性と造形美を極めるとこうなりました。というのが陽一氏の答えであり、世界観であると私は感じます。
(本人には確認していません。 笑)

陽一さんのような本物の製硯師がいる一方で、そうでない方もいます。メディアに祭り上げられたような方々です。それはご本人の意思ではないかもしれませんが。こういった方はまず、名前が独り歩きして、実力が伴っていませんから、よくトンデモ本を出されたりします。ですから、私たちもその辺の知識を身に着けて本物かニセモノかをよく見分けなければなりません。

落款の位置

長沢芦雪展

帰りに日枝さん宅にお邪魔して芦雪の話になったわけですが、奥さんは芦雪を見に行かれたようで、図録を見させていただきました。今、北九州市立美術館で横山大観の展示が開催されているので、大観の絵の予習をしていて気が付いた落款の位置についてみてみました。大観の落款の位置は結構オーソドックスな位置に押されています。ただし、左右対称な絵がありその場合はやはり「気」の方向、雲の流れの起点などに押されています。やはりこの位置しかありえません。落款の位置は「気」を読むことができれば、絵の中のある一点が必ず決まるはずだと考えています。

横山大観展

芦雪の方は、ちょっとわかりにくいものが数点ありました。まだまだ私の修行は足りません。芦雪の落款の位置は遊び心もあります。芦雪には詳しくありませんが、ちょっと変わった人だったのかもしれませんね。

来週は横山大観展に行く予定ですので、現物にて落款の法則を考えてみたいと思います。

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