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新作試演会『桜の森の満開の下』出演者コラム / 樽見啓

脚本を読むと映像のイメージが頭に湧き、大体それは自分が見たことのある映画、劇、何かの光景だったりがベースになっているので、ならば、と見てきたいろんなシーンをもっと思い出してイメージを具体的にします。

思いだしたおもしろい映画を今自分が向かっている劇にくっつけてくっつけて、どんどん名作で補強して、そしたら「これは面白い!」、「これは良いねえ!」と傑作が出来上がり、ひと段落して、タバコに火をつけて息をつきます、ふう、やりきった。実際にセリフを読む前に。本番、劇が出来上がる前に。既に。

大体こんな感じなので、間に合うか間に合わないかギリのところでいざ動き始めてしまい、いやあ今回もギリだったなと思います。

今回、原作があるということで読んでみたら山賊が出てきました。今回の劇の”男”がその山賊で、自分の役なわけでして、まず羅生門の三船が浮かびました。大体同じくらいの年の作品なので時代感も、まあいいでしょう。うん、これは黒澤映画の三船だな、となり、とはいっても黒澤映画を全部見ているよという訳ではなく詳しくもないので、もう一本ぐらい見とくかと、参考までに、用心棒を見ました。正直これは違った。思ってた三船と違った。もっと獣みたいな、何喋ってるか分からないよという三船が良かった。滑舌悪くて何言ってるか分からない野獣みたいな人間は出てきはしたが。黒澤映画にはよくセリフが分からない人がでてきてかなり好きなのですが、それにしても醉いどれ天使の志村喬は凄かった。本当になんて言ってるか分からなかった。自分が滑舌が悪いので、何言ってるかわからない良い人間を追いかけてしまうのかもしれません。

今回も、身体のほうに特にフォーカスした劇ということなので、そういうセリフが聞こえない人が出ている映画をもっと追いかけて、「いいねぇ...」とため息をつきながら逃げ切りたいです。

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