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概念子(第二回公演『リトル・ブリーチ』に向けて)

私は昔からとても怖がりです。
実家は田舎の一軒家、
古風というほどではないけど新しくはなく、両親共働きで手入れが行き届かずいつも少し埃っぽくて、廊下の突き当たりはものがたくさん積んであっていつも見通しが悪いし、やたら広いので電気をつけてもどこかが暗がりになって闇に溶け込んでる。

家族の寝室が二階にあったのですが、その寝室もふすまに畳でなんとなく怖いし、幼い私は寝室に行くのが嫌でした。
寝室の前の曲がり角によく兄が潜んでおどかされるのも最悪でした。

私は夜寝室に行きたいのだけど、母は歳の離れた兄二人のどちらかとテレビを見ながら喋っていたり、また歳の離れた赤ちゃんの弟を先に寝かしつけていたりして、父は仕事で帰りが遅いか酔っ払って居間で寝ていたりして、別に誰も構ってくれませんでした。

そんな私をいつも寝室に連れて行ってくれたのは、私より5歳くらい年上のお姉ちゃんです。
名前はモモといいました。
私のことなんか別に好きじゃなくて、触ると怒られてよくひっかかれました。

でも、幼い私が暗いのが怖いから誰か一緒に二階に連れてってよ!と家族に頼んで無視されたりすると、滅多に鳴き声を上げないモモがきまってドアの前でニャーニャー鳴いて、ドアを開けると階段まで行ってまたニャーニャー鳴いて、私はゆっくり電気をつけながら追いかけていきます。
寝室まで行くと、モモはふすまのまえで座ったり伸びたりして、私の枕元に来て寝ます。それで私も寝てしまいます。

もう死んでしまった私の家族の話です。

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