28歳の男

今日の午前中は、寒空の下、雨が降っているなかで野球をやってきたのだが、かつてのような俊敏さは見る影もなく、とんでもなく足が遅くなっていた自分に落胆してしまった。
「歳のせいかなぁ」と思いながらびしょ濡れになったユニホームを脱ぎ、更衣室を出た僕は、なんだか最近年齢を感じる出来事が増えたことを思い出した。
身体の疲れが抜けづらくなってきたし、数年前まで徹夜なんて余裕だったのに今はもうどう頑張っても午前2時には眠たくなる。
おでこの面積も広がってきた気もするけどそこに関しては「いや、まぁ昔から広いほうだったし…」と知らないふりを決め込んでいる。僕が禿げるなんて許されないから。

とまぁ、これらは肉体的な衰えで、でもまだまだ精神的な部分では若々しく20代前半くらいの気持ちだぜ、というのが今の僕なのだが、実際それもそれでどうなのだろうと思い始めているのも今の僕である。僕はとにかく自問自答が多い人間だ。



バイトをしている喫茶店では僕はレジに入ることが多いのだが、レジにはお客様の「属性」を入力する作業がある。
と言ってもとても大雑把なもので、男性30歳以下/以上か女性30歳以下/以上という4択のものだ。
もちろん年齢を区別するマニュアルなんてあるわけもなくて、30歳以上かどうかというのは店員である僕の独断で決まる。しかもそれはものの数秒の出来事だ。

僕は現在28歳で、僕のこの年齢がこの区分にちょうどよい物差しになっている。
僕より上かどうか。
うちの店のお客さんの大半はおじさまおばさまなのだが、比較的若い人が来ると「おー、どっちだ~?」とゲーム感覚で悩むこともある。
女性でこんな感じで悩んだ場合は基本的には30歳以下で登録する。嫌になるくらい僕は女性に甘い。
ただ、とんでもなく態度が悪い場合は明らかに20代でも腹いせに30歳以上にしたりしている。なんなら「30歳以上の男性」に仕立て上げる場合もある。まぁそうしたからと言って何があるわけでもないのだけれど。あるとしたら統計がミリ単位でずれるくらいだろう。


ここまでは余談で、問題はサラリーマンの皆さんだ。
僕は最近まで何の悪気もなく、スーツをしっかり着た男性たちを「あー、サラリーマンだ~」と思いながら「男性30歳以上」としていた。
そうしていたのは紛れもなく「サラリーマンはみんな大人(=年上)」という固定観念があったからだ。
サラリーマンのお客さんが若そうに見えても僕は肌ツヤの良い30代くらいにしか思っていなかった。
どうしてこうも無条件にみんな年上だと思っていたのか、それは紛れもなく「僕は若い」と思い込んでいたからであった。

でもようやく最近肉体的なところで「俺ももう若くないんだな~」と思い始めて、そのせいで目が覚めたというか、一気に現実に引き戻された感覚があった。

サラリーマンにも27歳以下の人、いる。

「いやこの人至極真っ当な26歳で、ちゃんと働いてるから年上に見えるだけじゃないの?」
「俺はバイトだから、夢を追いかけてる若者だから、ちゃんとしたサラリーマンのお客さんみんなの年下だと思ってたけど、俺、全然年上の可能性ある年齢じゃん。」

なんだかもう虚しくなってしまった。
あぁ、僕はもうそんな年齢だったんだ。


思えば活躍しているプロ野球選手も僕より年下の人が増えてきたし、助っ人外国人すら年下だってこともあるようになってきた。"助っ人"だぞ?"助っ人"が年下なんてことあるのか?"助っ人"なんだからお兄さん的な年齢であってほしいんだけど。

僕がこういう職業だから、ましてやまだ売れていないから、僕はどうやらまだまだ若者でいたいようだ。
さらに、"しっかりしている"サラリーマンや"憧れの"プロ野球選手という職業に対しての僕の勝手な先入観やイメージみたいなものが僕をこうさせていたのだろう。


でも、まだ僕の中では「若者でいたい」という思いが強くて、いまだにサラリーマンには全員「男性30歳以上」のボタンを押している。
現実に対するせめてもの抵抗なのかもしれない。

しかしながらそろそろしっかりしないといけない年齢であるのは確かだ。
だからもうそんな「俺、若いぜ」感は卒業しなければならないのかもしれない。責任世代の仲間入りだ。
だがしかし、商品価値的なものを考えれば「俺、若いぜ」感を全面に押し出していくべきでもあるのだから困った。
まぁそこに怠けるなよということなのだろう。


そろそろ2019年が終わる。
明けて3月には29歳になる。20代最後の年が始まるのだ。
今まで以上に頑張らなければならない。
考えるだけで震える。
いや、身震いしているくらいがちょうどいいだろう。
2020年はガツガツするのだ。




まさか今朝の草野球の走塁死をきっかけに改めて決意を口にすることになるなんて。

これを思慮深さと捉えるなら、少しは大人になっているってことなのか。

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