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薄れても繋ぐ

おじいさんは
ゴソゴソと取り出した

「これじゃ。使ってやってくれ」
そう言いながら机に置いた

それは
少し古く
年季の入りから
使い込まれたのがよく分かる

古くなったコルクから
オシャレな空気が漂った

形も少しデザインされていて
パズルのピースのような形だ

きっと何年も
使ってきたのだろう
中央に手書きされた文字が
少し薄れてきている


『あなたの隣に
居られますように』

「街のイベントでな、作ったんじゃ」
するともう1つ出てきた

よく見ると
そっちにも文字が書いてある
こっちは薄れてない

ピースの凸部分

『いつまでも
笑顔で』

「おじいちゃん。これ、」

「お前が使ってるのは婆さんのだ」

おばぁちゃんは
今は入院中だ
もう少しで退院するらしいけど
家族中でスゴい騒ぎになった…

「何か書こうと言い出したんじゃ」
おじいちゃんは
作った時の話を始めた

真ん中に書くと文字が薄れる
そう思ったおじいさんは
使わないであろう
ピースの凸部分に書いたらしい

それを横で見ていた
お婆さんは真ん中に書いた

おじいさんは
「話を聞いていたのか?
見えなくなるぞ?」
そう言ったが
「見えなくなるまで使いましょうね」
お婆さんの笑顔に
何も言えなかったらしい

いつもコーヒーを飲んだ後は
おばぁちゃんが片付けをしていた

おばぁちゃんが入院してから
自分で片付けをしたとき

ふと、ピースを繋げた。

するとそこには

『いつまでも、あなたの隣に
笑顔で、居られますように』

2人で飲むコーヒーの時間は
幸せな時間だったという

そう言ってコーヒーを置いた

私は気付かぬうちに
涙がこぼれていた

「もう一度、2人で飲みたいな」
そう言いながら
おじいさんはコーヒーを飲み
「さぁケーキも食べよう」
「泣くとお腹が減るだろう」
私は涙をふき
コーヒーを飲んだ

私はカップを
思い出に乗せずに
机に置いた
「これはおばぁちゃんの!」
「私も作ってみるね!」
そう言ってケーキを食べた

おじいさんは
どこか嬉しそうだった

その後も2人で
おばぁちゃんとの
昔の話を楽しんだ…


この一週間後
おばぁちゃんは
無事に退院し
今でもおじいさんと
コーヒーを飲んでいる
2人の思い出に乗せて…

~出演~

☆思い出を乗せるコースター

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