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「摩天楼の衣擦れ」

 テレビに、珍しく作詞家の松本隆氏が出演していて、長年の疑問が解決した。

 はっぴいえんどの名曲「風をあつめて」の中の‘摩天楼の衣擦れ’の意味がイマイチ分からなかったのだが、分かったフリしていた。今回本人の口から説明があったのだ。

はっぴいえんど「風をあつめて」

作詞:松本隆     作曲:細野晴臣

街のはずれの
背のびした路次を 散歩してたら
汚点だらけの 靄ごしに
起きぬけの露面電車が
海を渡るのが 見えたんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を

とても素敵な
昧爽どきを 通り抜けてたら
伽籃とした 防波堤ごしに
緋色の帆を掲げた都市が
碇泊してるのが 見えたんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を

人気のない
朝の珈琲屋で 暇をつぶしてたら
ひび割れた 玻璃ごしに
摩天楼の衣擦れ
舗道をひたすのを見たんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を
風をあつめて 風をあつめて 風をあつめて

 70年代の東京はスモッグが問題になっていて、高層ビルの下方にスモッグが沈んで、摩天楼が来たドレスのスカートになっていて、衣擦れが聞こえた、という意味らしい。

 どれだけ知的なんだ。

 スッキリした。

 今回、久しぶりに、松本隆氏の飄々とした姿を見て、こんな生き方はいいな、と思った。70年代から、はっぴいえんどの面々は、世の中に対して、いつも厳しい意見を持っているのに、決して口にしたり、政治運動したり一切せずに、音楽という自分の仕事をプロフェッショナルにすることで、社会を批判するという生き方。

 あんな人たちに、なりたい。

(2023.9.2.記 )

次回作の製作費として、大切に使わせて頂きます。