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10年近くぶりにびっくりドンキーへ行った話

1月16日火曜日。大安、そして一粒万倍日。年明けてから何度この一粒万倍日を迎えたのだろうか。そして今年はあと何度この日がくるのだろうか。

この日は10年近くぶりにびっくりドンキーへ行った。午前中に池袋で用事があり、11時半頃解放された。人生のなかでもかなり大きな出来事を終えた後だったため、おいしいものでも食べて帰ろうと思い、駅方面へ向かいながらお店を探した。しかし池袋はどうも雑多な街で、おいしそうなお店!という感じの店構えをしたお店が、駅周辺でぱっと見つからない。午後に予定が詰まっていたこともあり、可及的速やかにお昼ごはん会場を見つけ出す必要のあった私の目の前に、忽然と「びっくりドンキー」が目の前に現れた。

懐かしい。

びっくりドンキーを目にして思うことはただ一つ。懐かしいのだ。地元香川県にも何店舗かあったので、中学生や高校生の頃によく母親に連れてきてもらった。特に中間試験や期末試験等、勉強を頑張った後のご褒美ご飯として、連れてきてもらった。試験が終わったらおいしいもの食べたい、と叫んでいた私は、母親に何が食べたいかと聞かれると、だいたい「回転寿司(一皿100円程度の回転寿司)」か「びっくりドンキー」、この二択だったように思う。

話はそれるが、小学生から大学二年生までの間、実は肉が食べられなかった。正確には、ステーキ、焼き肉、しゃぶしゃぶ、とんかつ、というような、分厚い肉や、断面の見える肉、脂身の多い肉を食べることができなかった。
小学1年生くらいの時に、家族で焼き肉を食べに行った際、おいしいなあと思いながらタンをもぐもぐ食べていると、母親から「タンって牛の舌なんだよ」と何気なく聞かされた瞬間から、上記のような肉を食べることができなくなってしまった。頭の中で惨殺なシーンを思い浮かべてしまうのだ。
一方で、ハンバーグのようなひき肉は断面がわからないし、かけらを集めた集合体なので、問題なく食べることができるし、むしろ大好物であった。

ちなみに現在はどんな肉でも食べられるのだが(脂身の多いものは引き続き苦手)、その理由は、大学生の頃にオーストラリアで二か月ほどホームステイしたことによる。渡豪前、ホストファミリーに「I don't like meat」とメールを送ったにも関わらず、毎晩食卓で肉が提供された。何故、どうして、と思う一方で、これを食べないと餓死という未来が待ち受けているぞと自分に言い聞かせ、雑念を振り払い肉を口に運んでみた。すると、あれ、意外と美味しいかも、という感想を抱くことができたのだ。人間とは単純な生き物だ。
帰国後は、肉を食べなかった数年間を取り戻すかのように肉を貪り食べた。肉が食べられないことを知っていた友人たちへ無作為に「焼き肉行こ」と弾丸で連絡して、一時期周囲の混乱を招いたこともあったが、皆私の成長に感心し、よかったねえと喜んでくれた。

そんなこんなで日常的に肉を食べることのない当時の学生時代の私にとっては、びっくりドンキーという場所は最高のご馳走が提供される場所だったのだ。
大体頼むのはプレーンなハンバーグプレートか、カレーバーグディッシュ。私がカレーバーグディッシュを頼むときは、カレーのルーのおすそ分けをするので、母親はプレーンを頼んでいた。私がプレーンの時は母親もプレーンにするか、おろしそバーグディッシュを頼んでいた。

10年ぶりくらいにきて、何を頼むか迷った私は、なんとなく「おろしそバーグディッシュ」を頼んでみた。池袋店はビルの地下にあり、席数がかなりある。平日のお昼はほぼ満席状態で、一人客が大多数を占めていた。ここに田舎と都会の差を感じた。地元だと、大通りに面した路面店として構えているので、客層はファミリー層ばかりで、一人客は非常に珍しいのだ。更にちびっこ連れのファミリーが多いため、店内はいつも叫び声や鳴き声でひしめきあっていた。一方都会だと駅近くで大通りに面しているわけでない立地に構えていたりする。そうすると一人客も足を運びやすくなるし、一人だと当然黙っているので、店内は静かで落ち着きがあり、大人の休憩場所みたいになっていた。当たり前のことかもしれないが、田舎のびっくりドンキーにしか足を運んでなかった私には、一人客の光景が新鮮で、その静けさに驚くばかりであった。
さらにはWi-Fiやコンセントもあり、PCを持ってきての作業もしやすい環境に驚いた。さすが都会だ。設備環境が違う。今地元のびっくりドンキーに行くと同じ仕様なのかもしれないが。

そんなこんなで久しぶりに食べたハンバーグ。変わらぬおいしさもある一方で、この10年くらいでたくさんのおいしいご飯を食べてきたのだなあと、自分の舌の成長に少し寂しさを覚えた。しかしながらびっくりドンキーは、私を童心に帰らせてくれ、昔からどれくらい成長したかを教えてくれる、温かい親戚のような存在なのだ。

テスト後、いつも達成感と開放感を身に纏って訪れる場所だったびっくりドンキー。この日も、午前中に一仕事を終えた後だったので、図らずも(学生時代のテスト後ほどではないが)達成感と開放感を身に纏い訪れることになった。

調べてみたところ都内にもいくつか店舗があるようだ。きっと次に何かを達成した時に自分の目の前に現れるのはびっくりドンキーだろう。その時はどのハンバーグプレートを選ぶのだろう。次回を楽しみに、今日も街へ繰り出す。


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