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モノは持たずに「使う」


私は家も車も所有していますが、所有を好まない人が増えているのが近年の傾向です。モノを所有するよりも「利用」を好む。製品の都合ですべてが決められて、すべてが完全に直線的に配置されていた世界は、双方向のデジタルに置き換えられて、一人ひとりが異なる顔を持つようになりました。私たちが求めるのは、指先で操れるメディア体験です。

必要な情報やサービスが、すべて適切なデバイスで、状況に応じて、必要なときに提供されることが期待されています。私たちは、製品中心の発想にあう都合のいい顧客ではなくなったので、企業は、あるがままの顧客を正しく理解したうえで戦略を立てる必要に迫られました。製品ではなく、顧客から物事を発想しなければなりません。

ネットフリックスは、長期的な売上を見込んで、短期的なコストを惜しみません。それは加入者ごとに、かけたお金の回収がおわるまでの時間を正確に把握しているからです。顧客とのあいだに真の直接的かつ継続的な関係を確立して、顧客ファーストのコンセプトを大きく前進させました。

とあるミュージシャンが「未完成」のアルバムをリリース。歌詞を見直したり、収録の順番を変えてみたり、リズム、音など微妙な修正を施したり。その過程を公開して、リスナーの反応を活かした改善を行うという好循環を生み出しました。曲を完成させる前からファンを購買へと導く。サブスクライバーは、完成品ではなく「メイキング」という価値を、月々の支払いを通して購入しているという構図です。

米国人のおよそ4分の1が、何かしらの広告ブロッカーを使用。そのおかげで広告効果が減じられ、広告主は年間160億ドルもの売り上げを失っていると言われています。的外れな広告にうんざりしている私たち。景気後退によってさらに広告市場は悪化するはずです。来場者、もしくはPVを増やして、多くの広告スペースを売るというビジネスモデルはもはや崩壊寸前。広告にかわるもの、それは安定した定期課金収入です。

新聞の発行部数が大きく減少し、800万部から100万部へ。他で稼ぐことができる謀新聞社はつぶれる心配はありません。現状にあぐらをかいているわけではないと思いますが、「紙かデジタルか」という視点からは真の「売れない原因」は見えてこないと思います。物理的にモノが届くことがコンテンツより重要。その認識がピント外れなことは明らかです。

真の価値はコンテンツにあり、フォーマットにあるわけではありません。読者は中身にお金を支払っています。最高値を記録したニューヨークタイムズの株価。それは読者の支払いが収益の6割に達したことが評価されたからこそ。購読者収入より広告料集の割合が多いという新聞業界の伝統をくつがえす驚くべきビジネスモデル。2つの収入曲線が交差して、収益構造が逆転するレベルに到達しました。

まず無料でベーシック版のサービス提供。利用者にインセンティブを提供して有料プランへの移行を促す。有料顧客獲得に必要なコストはいくら?購読者のエンゲージメントは?クリック数、PVを競うための仕組みに興味はなく、顧客のニーズに合わせた記事を創造するジャーナリズムの育成に力を入れています。

私の会社も伝統的に「露出」を広告価値の中心にすえて販売してきました。そしてそのビジネスモデルに陰り、もしくは限界が見えてきていることは抗えない事実。いかにして顧客の喜びを知り、喜びを提供できるアセットを積み上げ、顧客の好きなように組み合わせたデジタルサービスを用意できるか?そのプラットフォームを一緒につくりあげる。それがスポンサーシップの価値であり、企業の課題解決につながる。そんな営業スタイルを構築していきたい。

久保大輔




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