ローリング・ストーンズが最新作「Hackney Diamonds」でやったことは、どれくらいすごいことなのか
どうも。
予告どおり、今日はこの話をしようと思います。
ローリング・ストーンズの18年のアルバム「Hackney Diamonds」ですね。
いやあ~、これ
かなりの衝撃作でした!
正直ですね、ありえないレベルですごいアルバムです。
だって、ストーンズって言ったら
ミック・ジャガー80歳、キース・リチャーズ79歳、ロニー・ウッド76歳ですよ!この3人がまだロックンロールやってる、それをやれるだけ体が動いているだけでもすごいことなのに、今回、最高のロックンロールを届けてくれてるんですよ!
それも「80歳としてはすごい」という次元じゃないんですよ。「最近、ここまでカッコ良いロックンロール・アルバム出したバンド、いたっけ?」と思い返しても、該当するバンドが思いつかないくらいのレベルなんですよ!
だって、今年出たハイヴスのアルバム、あれも彼ら久々に全開のロックンロール聞かせてくれたアルバムでしたけど、40代のハイヴスより、今回のストーンズの方が上ですもん。アークティック・モンキーズの近作2作よりも元気で速くてうるさいんですから(笑)。あと、あるとしたらアイドルズとかフォンテーンズとかかな。彼らに対してだって決して負けてない出来です。現役バンドとしてトップクラスのロックンロールなんですよ。80歳のバンドが!
僕自身、これを聞いて「ああ、こういうバンドが新人から出てきてほしいんだよ」とさえ思いましたからね。22歳とか、せいぜい20代のバンドからこういうバンドが出てきてほしかったんですけど、年齢にして、その3倍とか4倍のバンドでそれが出てくるとは夢にも思いませんでした。
だって、ストーンズって言ったら
最初の全盛期だった60年代半ばって、スポーツに例えるとペレとかONの全盛期ですよ。もう、20世紀の文化史として額縁に飾られるような存在の人です。年齢だってストーンズの方がペレや王貞治より3歳くらい下ではありますけど、そんなに差はないですよ。そういう人が現役で若手バンドをも凌ぐようなロックをやってるわけです。
いわばこれ、例えるなら
「晩年のペレがW杯の試合で得点決める」とか、そういう次元の嘘みたいな話です
だから驚くんですよ、これ。
ストーンズの個人史紐解いてみても、ある時期から「まだ、こんなに出来んだぜ」のポーズそのものは50代くらいからとってはいたんですよ。例えば90年代の「Voodoo Lounge」とか「Bridges To Babylon」なんかもそういうアルバムを本人たちは意図してたかもしれません。2005年に出た前作「A Bigger Bang」もキレそのものはよかったです。
ただ、その時期のアルバムと比べても、今回の方が圧倒的に曲につかみがあるし、ギターのキレなんて圧倒的にカッコ良いんですよ。
その原動力となったのが
プロデューサーのアンドリュー・ワットですね。彼、1990年生まれの33歳ですよ!その年って、ストーンズが初来日公演した年。リアルタイムで覚えてるストーンズなんてそれこそ前の2作くらいなものでしょうけど、すごく躍動感とキレ重視のサウンド・プロダクションにしてくれてますね。音の聞こえ方がすごく若いんですよ。
また、ミックとキースが、その音像に応えるロックンロールを実にセンス良く、若々しく作ってるんですよね、今回。いい予感ならあったんですよ。此の18年、ストーンズが時折出してくる曲、よかったですから。2012年の「Doom & Gloom」とか、ブルースのカバー作だった「Blue & Lonesome」とか2020年のパンデミックの時に出した「Living In A Ghost Town」とか。だから「いい感性保ってるな」とは思ってたんですけど、その「良き瞬間」を貯めてまとめたのが今作なのかなと思いましたね。
しかも、その間、ミックがソロ活動控えて、持ってるアイデア、キースとともにぶつけてくれたのが嬉しかったですね。80年代とか90年代はそれができずに2人の心がなかなか音楽で通い合わなかった。それが80歳という年齢になるタイミングで、40歳以前に2人が持っていたケミストリーが復活してるんですよ。この2人って、幼少の時に近くに住んでて、10代後半の時にミックが小脇にマディ・ウォーターズのベスト盤抱えてた時に再開した、という
洒落たエピソードがあるんですけど、なんかその時に戻ったかのような、そんな幻想をも抱かせてくれるんですよね。
しかもこれ、構成も見事なんですよね。アルバム全編、ほとんどアッパーなロックンロールを3、6、10曲めをスローで抜き、しかも10曲目はキースのヴォーカルで、11曲目にリリース前から話題になり「ストーンズ久々の名曲」と方々で呼ばれているレディ・ガガとの壮大な7分のソウル・バラードの「Sweet Soul Of Heaven」で大団円を迎え、ラストがまさにさっき言ったマディ・ウォーターズのブルースのカバーでシメ。その間、48分。長くなりすぎて弛緩もせず、ちょうどいい長さ。CDの時代に長たらしくなりがちだった傾向もやめてスパッとしてるのもすごくいいんです。
僕、ストーンズって最初に知ったのって、小学6年の時、1981年で、最初に聴いた曲が「Emotional Rescue」でアルバムが「Tattoo You」あったんですね。僕が最初に見開いた雑誌に載ってたビルボードのアルバム・チャートの1位になってたのがまさにそのアルバムで「Start Me Up」が日本のラジオでもバカ売れしてたのを覚えてます。
なんですけど、その後、ストーンズの新作聞いてそこまで感動したことって実は無かったんですよ。初来日には「Steel Wheels」発売日に買ってたにもかかわらず、乗り気じゃなくて行かなかったし、その後も出てはすぐ聞いてはいたし、ライブも2回行ってるんですけど、そこまで夢中になったことはなく。むしろベスト盤で昔のを聞いて、「やっぱかっこいいよね。ロックの基本だね」とリスペクトした感じになってました。なので、新作でいてもたっても感動したストーンズ、40数年で初めてだったんですよね。
ということでこれ、いつ以来にすごいアルバムかと言いますと
ちょうどミックの80歳の誕生日の時に、このnote恒例企画のFromワーストToベスト、やったんですよね。この時、新作出るとは思わずにやっちゃって惜しいことしましたけどね。
今、今回のアルバム込みでやったら、最新作、何位になるか。少なくとも、9位のUndercover、10位のVoodoo Loungeよりは上だし、8位にしたBetween The Buttonsよりは上にしたいので、悪くとも8位にはなりますね。傑作としては、3位に入れた「Some Girls」以来ですね。60年代に最初の全盛期があるから、70年代後半はキャリアの中では遅い方ではあるものの、それでも45年前のアルバムですよ。こんなに長いブランクを空けての信じがたい往時のキレのカムバックですよ!ストーンズの場合、ロック史に果たした役割って、若い時のシングルやアルバムだけじゃなくて、ロック・コンサートを特別な文化にし、それを何歳になっても可能なものにした、というのは間違いなくあります。それこそがロック聴く人の年齢層をあげ、ロックが長きにわたって聞かれる文化的価値の一段高いものとなった。僕はそのように信じているんですけど、その驚異的なロンジェヴィティが、とうとう作品にまで及んだ。僕としてはそれを心から祝いたいんですよね。
僕だけじゃなく、今回はいろんな人やメディアがこのアルバムを絶賛しています。ここまで評価の高いストーンズの新作も本当に久しぶりです。
それがですね
このピッチフォークがですね、前からここで何度叩いたかわからないんですけど、またしてもたわけたことをぬかしやがってですね(笑)。あたかもストーンズが過去の遺物で、金満に物を言わせた中身のないアルバムを作ったと言わんばかりの評なんですよね。これ、インスタもXも、コメント欄、予想通り袋叩きでしたけど(笑)、前からも言ってるように、このメディアのクラシック・ロック嫌い、異常です。エスタブリッシュされたロックを今打倒したところで一体何になるんだか。本当に焦点の見えない、不毛な上から目線というか。
何が一番腹たつかというと、文化を築き上げたレジェンドへのリスペクトとか、後、上にも書いたように年齢のこと考えたら奇跡みたいなことを肉体的にも感性的にもやってるのに、そこに関しての敬意がまったくないことですね。なんか小手先のトレンドだけを気にしてるんじゃないのかな、と言う気がしてね。あくまで「人間の能力」を評価すべきですね。
その点で言えば
このブラジルの左派のニュースメディアの批評に書かれてた「これは吹き替えなのか」と言う見出しね(笑)。「すごすぎて、80歳が演奏してるとは思えない」というものです。
もし、このアルバムに難癖つけるところがあるとしたら「これ、果たしてAIがやってるんじゃねえか」という疑いくらいでしょうね。
だけどそれも
https://www.youtube.com/watch?v=Tooax6DKxBk
アルバムのリリースと同時に行ったニューヨークでのスペシャル・ライブ、これを見たらAIなんかじゃないのはすぐにわかります。しかもガガとの共演になった「Sweet Soul Of Heaven」のミックの掛け合いとか、ちょっと信じられないレベルです。
まだ聴かれてない方は、とにかく聞いてみてください。そして驚いてみていただきたいです。
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