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沢田太陽の2010年代ベスト・アルバム 40〜31位

どうも。

では、昨日に引き続き、2010年代のベスト・アルバム、行きましょう。今日は40位から31位です。

こんな感じになりました!

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はい。改めていいアルバムばかりだなあと思うのですが、早速40位から見てみましょう。

40.Take Care/Drake (2011)

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40位はドレイク。この10年、世界的に最もヒットを放っていたの、この人じゃないかな?エド・シーランとかブルーノ・マーズもヒット多かったですけど、この人の場合、作品だすペースがとにかく早かったですからね。しかも彼はそれをヒップホップをベースに展開し、しかも、「R&B」の権威が地に落ちていた時代に、甘い声質を生かしてヴォーカルも積極的にこなすことで、「ヒップホップが当たり前になった時代でのR&Bヴォーカル」の代表格にもなったりして(僕はむしろ歌唱にこそ才能がある人だとさえ思ってます)。ある時期までいいアルバム、コンスタントに出してきてると思うんですが、、後年のトラップとかグライムとか、他シーンとの他流試合もいいんですが、僕としては40、T-MINUS、そしてBoi 1Daといった地元トロントのクリエイターの地位を決定的にし、師匠のリル・ウェイン、そして地元の良いライバルのウィーケンド、そしてこの時代最高の男女デュエット共演じゃないかな、リアーナを迎えた本作が一番ベストな気がします。多作による金属疲労と態度の増長が最近めだってきてやや心配ですが、どう折り合いつけるか。

39.Paramore/Paramore (2013)

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39位はパラモア。2010年になったばかりの頃、誰が”エモ・プリンセス”、ヘイリー・ウイリアムズが批評的に評価される女性になると想像したでしょう。少なくとも僕は全くできていませんでしたね。パンチの効いたソウルフルな歌声はその前のポップパンク・クイーン、アヴルル・ラヴィーンを葬るだけの力はありましたけど、それ以上の力があったとは。とに2013年に出たこのアルバムに当時僕は驚きましたね。この前のアルバムのツアーで、ソングライティングの母体だったファロ兄弟が脱退。「さあ、どうする」のタイミングで浮上したセカンド・ギタリストのテイラー・ヨーク。彼が想像以上に才人で、インディよりの楽曲がかけたことが、音楽的に幅を広げる成長期にあったヘイリーの知的好奇心と合致したことで、これが生まれたんだと思います。冒頭の「Fast In My Car」からいきなりヤーヤーヤーズになってしまっているんですが、これまでのヘヴィな音圧は消え、いい意味ですごくリズミカルに軽快になっているのが爽快です。その「変化」は、2017年の次作「After Laughter」でもポスト・パンク路線で一般にはもっと「変わった」と騒がれたものですが、僕としては的が絞れすぎて逆に想像がつくようになったあのアルバムよりは、この先、どっちに転ぶかわからない過渡期ゆえの実験精神のあること、そして、彼女たちにとっての最高傑作で最大のヒット曲「Aint It Fun」がある分、こっちです。ゴスペルも交えたファンキーな1曲ですけど、「ヘイリーって、こんなに16ビート乗るの上手いんだ!」とビックリしたし「Dont go crying to your mama, this is the real world」というのは、この時代の女性が放つのに象徴的な歌詞だとさえ思います。

38.The Electric lady/Janelle Monae (2013)

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こと”2010'sの才女”ということで言えば、彼女も忘れてはなりません。ジャネール・モネエ。「すごい人、出てきたな」と思ったの2010年、どのレイトナイト・トークショウだったか忘れましたが、彼女が「Tight Rope」のパフォーマンスをした時に、ジェイムス・ブラウンが60sにTV番組「TAMI Show」でやった片足あげての平行横移動ダンスを再現した時に「」自分で曲も作って、こんな才能あるってどういうことなんだ!」と驚きました。同じものを僕は2011年、死の半年前のエイミー・ワインハウスのオープニング・アクトとしてサンパウロで見ましたけど、すでに心ここに在らずだったエイミーを彼女が食ったことは悲しい思い出です。そんなジャネール、2010sに出したアルバムはどれも優秀な作品ばかりでしたが、1枚あげると2013年のこれかな。ステージショウで女JBになりきってた「The ArchAndroid」に、なきプリンスにオマージュを捧げた「Dirty Computer」と「レジェンド」の影が大きすぎて、時々、「では彼女自身は?」と言いたくなる時が出てくるんですけど、本作はそういうのがなく、「素のジャネール」が楽しめる意味でも僕は好きです。共演陣もエリカ・バドゥ、ソランジュ、そして精神的師匠のプリンスと豪華で、MVも60sをはじめとしたいろんな時代のモード感覚楽しめて最高にオシャレだし。特に「Dance Apocalyptic 」は、いろんな時代の音楽を横断したくてたまらない、彼女の時間軸破壊の美学が頂点に達した名曲だと思います。

37.Golden Hour/Kacey Musgraves (2018)

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37位は去年の名作アルバムですね。ケイシー・マスグレイヴス。彼女のことは2010sの前半に、「カントリー界の夢みる文学少女」みたいなイメージで、テイラーよりもちょっと浮世離れしたポエティックな感じのカントリー期待の女の子みたいな売り出し方グラミー賞の新人賞にノミネートされてパフォーマンスもしてたので知ってたんですけど、このアルバムで一気に確変しましたね。それまでって、少し変わってはいるけど、カントリーの域を出てはいない作品だったんですけど、このアルバムでは冒頭からいきなり「デヴィッド・ボウイのスペース・オディティか?」と言いたくなるようなサイッケデリックなエフェクトが出てくるは、ヴォーカルにボコーダーは被せるは、EDM風のリズム・アレンジはあるは、16ビートのディスコ・ソングはあるは・・・と、とにかく原曲の良さを生かしつつ、センスのいいモダン・アレンジの数々が聞かれます。この当時、テイラーがだんだん大衆よりに俗っぽくなっていく時期に、「ああ、テイテイにはこういう進化をして欲しかったんだよなあ」と、音楽にこだわるファンの気持ちを一気に掴んだのが彼女でした。1960sにザ・バーズが、当時の最新鋭のロック・アレンジでカントリー・アルバム「ロデオの恋人」というのを作ったんですけど、これはその現代版ですね。それを作った影には、2000sのアメリカ南部のインディバンド、ザ・ビーズのダニエル・タシアンの存在があるんですけど、彼とのコラボで今後もいいアルバムを期待したいです。

36.Sound And Color/Alabama Shakes (2015)

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36位はアラバマ・シェイクス。ここのヴォーカリト、ブリタニー・ハワードも2010sを語る上で欠かせないアーティストですね。2013年にデビューした頃は。いかにも南部らしいジャム・バンド風の土臭くてゆるいブルーズ・ロックに乗ってブリタニーが特にパワフルなシャウトを決める、というパターンでしたけど、このセカンドでイメージがガラッと変わりましたね。サウンドは、これまで同様のアメリカーナの部分を残しながらも、よりリズム重視で、多重ハーモニーやサウンド・エフェクトを使った、スタジオ内での凝った音に移行しましたからね。後、シングルの「Dont Wanna Fight」は、「女たち」以降の、モダンをアピールした頃のストーンズみたいでカッコよかったですね。僕は断然こっちの方が好みで、この当時よく聴いたんですけど、デビューの時に好きになった人には、この変化があまりお好みではなかったようです。で、ライブどうなのかなと、この次の年のロラパルーザ見に行った時に、バックの男性陣がここでのアレンジの再現できてなかったので、「アレ?」という違和感を抱いたんですけど、今年になって出たブリタニ_のソロが、このアルバムを推進したような、カーティス・メイフィールド、ディアンジェロの系譜を継ぐ、オーガニックでロックなモダン・ソウル路線だったので、「ああ、このアルバムが実質ブリタニーのソロの始まりだったのね」と納得しました。だったら、やっぱりこっちです。正直、アラバマの今後、あるかも微妙だと思うしね。

35.They Want My Soul/Spoon (2014)

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35位はスプーン。もう、僕にとっては大好きなバンドです。彼ら、僕と世代同じなんですけど、「ああ、こんな風に歳とりたい」と憧れる、カッコいい大人の男のロックバンドですよ。フロントマンのブリット・ダニエルズが紺のジャケット着ながらしゃがれ声で、ソリッドかつ鋭いギターをバックに、甘さの一切ないロックンロールを歌うと、もう痺れるというか。昨日紹介したザ・ナショナルのマット・バーニンガーの方がより女性ウケする渋みだとは思うんですが、やっぱり根本がロックンロールな僕は断然ブリット派です。今回スプーンは、「ウイルコやモデスト。マウスと並ぶ2000sのベテラン・インディ・バンド」と判断されたためか、リストから漏れてるのが多いんですけど、このアルバムは彼らのキャリアの中でも2007年の「Ga Ga Ga Ga Ga」に並ぶ傑作だし、全米トップ10にも入った意味で、USインディを代表する文句なしのアルバムだと思うんですけどね。彼らのライブで、リズムのタメとザクザクしたギターのリフの入る曲絶妙にクールな「The Rent I Pay」、そし40台ロッカーの今日の日常の本音を歌い「ジュ〜ユー!」のしゃがれシャウトが最高にカッコいい「Do You」がライブのセットリストから外れることって、まずありえないですからね。この好バンドを語る重要作が無視されるのはおかしいです。実際、リリース当初も絶賛されているわけだし。この年代、貴重な優れたロックンロールですよ。

34.Days Are Gone/HAIM (2013)

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34位はHAIMのデビュー作。エステ、ダニエール、アラナのハイム三姉妹からなHAIM。この時代、三姉妹というと、ごめんなさい、どうしてもカーダシアン家を思い出してしまうのと、全員が同じような真ん中わけのロングヘアのためにパッと見、ロックバンド風に見えないギャップがまず面白いんですけど、僕はそれ以上に、彼女たちの曲を聴いた時にすごく新鮮な面白さを感じましたね。何がいいって、彼女たちの音楽のベースになっているもの。これがこの当時の他のバンドとは全然違うなと思ったんですよね。フリートウッド・マックとかイーグルスみたいな70sの、今風にいうとヨットロックみたいな曲調を、プリンスとかマドンナみ80sのリズム・アレンジで処理した感じ。そんなこと、誰もやってなかったじゃないですか。この頃と言ったら、まだ多くのバンドが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとジョイ・ディヴィジョンとペイヴ僕はメントに影響受けたような音楽、まだやろうとしてたじゃないですか。僕は大概そういう音楽に飽きてた(いや、好きなんですけどね。でも、引っ張りすぎ)ので、「ああ、やっと違うことやろうとするバンドが出てきたんだな」と思って嬉しかったものでした。それが女の子というのも新鮮でしたしね。結局、「2010sらしい、前の時代と違うロック」をやろうとしたのは、彼女たちと同じ年にイギリスでデビューしたあるバンドだけだったのかな、と思うことはあります。

33.Push The Sky Awat/Nick Cave & The Bad Seeds (2013)

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33位はニック・ケイヴ&ザ・バッドシーズ。この年代で、「批評的に最高なものを作り続けた存在」で彼らをオミットするようなリストがあったとしたら、そんなものは信用しないでください(笑)。それくらい、ベテランでは圧倒的なもの作っていましたので。先に言っておくと、これは2枚目のエントリーでもう1枚上位に入れてます。前も記事で書きましたけど、ニック・ケイヴ、「還暦で最盛期が来る」、ロック史上でも極めて稀な存在になっています。それを可能にするのは、彼自身の楽曲に無駄がなく、その良さを生かす優れたブレーンが周囲にいて、絶えず自分たちにリアルな新しいことをやろうとしているからでしょうね。このアルバムは、グラインダーマンという、彼らのガレージロックによる変名プロジェクトを終えた後に出したアルバムですね。ここではデビュー当時のダークな表現に戻っているところも暑のですが、それに加えて、「ルー・リードを失うことになる、ロック界に残された数少ないストリート詩人」としての才能を遺憾なく発揮したアルバムです。「Jubilee Street」「Higgs Bosom Blues」みたいな曲は昨今本当に貴重な、ストリートのダークサイドの描写ですよ。ケイブの10年代の場合、どうしても息子さんを失ったショックを糧にした名作群が語られるものですが、この力作を見逃して欲しくないし、実際、ファン人気も高いので、あえてここに入れています。32

32.Beyonce/Beyonce (2013)

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32位はビヨンセ。2013年発表のソロとしては5枚目のアルバムです。これはあの年のクリスマス前に出たんですけど、すごく嬉しかったのを覚えています。「ああ、やっと、聞きたかったビヨンセがここにいる」と。僕、彼女に関してはデスティニーズ・チャイルドの時代から大好きだったんですけど、デスチャの解散後のソロ2枚目からがどうにもつまんなくてですね。デスチャの時代のロドニー・ジャーキンスが作ってくれた、なんとなくの「らしさ」に縛られているようで、冒険することを恐れているような、そんな感じがしたんですよね。同じ時期にリアーナがエレクトロでどんどんR&Bとアイドル・ポップをイノヴェートしていく姿を痛快に感じていたんですけど、同時にビヨンセの守りの姿勢がすごく歯がゆかったんですよね。ただ、娘ブルー・アイヴィーが生まれた後に、彼女自身が「ママになったからってアーティスト活動は終わりじゃない」と自分で喝を入れた。その結果がコレになっています。このアルバムでは、これまでのビヨンセらしい「気持ちいい歌い上げ」が姿を消し、エレクトロ主体のビートで畳み掛けるように攻めています。たとえ、それでポップなフックが失われても曲のエッジと刺激優先した感じですね。それができるクリエイター・パートナー、ヒットボーイが台頭したのも大きかったといます。あと、ミゲル、フランク・オーシャン、元チェアリフトのカロライン・ポラチェックなど、新しい気鋭のクリエイターも積極的に起用してね。リリックも、「本当の内面の美人」を追求した「Pretty Hurts」や彼女自身が敬愛するナイジェリアの作家チママンダ・ンゴジ・アディチエのスピーチを挿入した「Flawless」と、内面の本音を描いたものが目立ちます。かの「ビーチェラ」のライブで、本作からの選曲が最も多かったのも納得です。

31.I Love You, Honeybear/Father John Misty (2015)

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そし31位は、ファーザー・・ジョン・ミスティ。僕はシンガーソングライターというジャンル・フォーマットは昔から好きな方だと思っているのですが、2010sだと、このアルバムがベストかな。このアルバム聴いた時に、「この時代のFire & Rainが生まれたな」と強く感じたんですよね。Fire & Rainというのはジェイムス・1970年の名曲ですけど美しいフォークナンバーとは裏腹の過酷なドラッグ体験の後の心境を歌った曲なんですけど、FJMが歌う曲は、ジェイムス・テイラーというよりむしろジャクソン・ブラウンが歌ったような朗々とした感じの美声と、バロック・ポップ調の流麗なフォーク・ロックがうっとりするような美しさを放つんですけど、歌われる内容は、ドラッグに起因する、以前の恋人との破綻した人間関係という(笑)。曲のメジャー感もエリオット・スミスやスフィアン・スティーヴンスのよりもあって大衆性もあるというのにね。この次の「Pure Comedy」に至っては、どうやってヤクを手にしたかがこまでれまた美しく語られているという。でも、この「破綻した美」が今日的でまたいいのかなと。そして、このアルバム最大の名曲となった「Bored In The USA」ね。もちろん、かのスプリングスティーンの「Born In The USA」のパロディなんですけど、ここで彼は、「夢を持った若き日の後はスチューデント・ローンと子育てに追われる」と現在のアメリカの夢なきプア生活を嘆き、それが今日まで続くアメリカの夢のなさを予兆しているかのようでもあり、その点でも光っています。






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