見出し画像

映画「哀れなるものたち」感想. これだけやったら、主演女優はエマの勝ちで良い!

どうも。

オスカー対象作の映画、続々見てます。今日はまずこれを。

はい。「哀れなるものたち」。これは日本でも公開されてかなり好評のようですね。ヨルゴス・ランティモスその人がかなりカルト受けしている印象を日本からも受けていましたが、これは鬼才である彼の中でも最高傑作評価で、さらにオスカーでも11部門ノミネートと、かなりのウケになっていますよね。

改めてやることもないかもしれませんが、一応あらすじを。

舞台は19世紀後半のロンドン。ベラ・バクスター(エマ・ストーン)は、科学者のゴドウィン・バクスター博士によって、育てられています。

本当は、身元のわからない自殺未遂の女性だったんですが、ゴドウィン博士(ウィレム・デフォー)に助けられ、赤ちゃんの脳を移植されて生きています。

それがゆえに、ベラは他者には奇人にしか見えず、聞き分けのないわがままな子供のような言動も繰り返します。

そんなベラを、ゴドウィンの優しい部下、マックスが受け入れ、結婚しようとしますが、ベラはその前によく知らない外の世界を見たいと主張。その旅のお供として

弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)がつくことになりますが、この男が絵に描いたようなサイテー野郎。ベラをセックスで弄ぶだけで、彼女の人権はまるで無視でした。

ただダンカンに計算違いがありました。それはベラが急速に知能をつけて賢くなっていったからでした。

 地中海のリゾートに滞在中、ベラはリゾートの裏で無残に死んでいく恵まれない人に対してダンカンの持っていた金を全額寄付。これで彼らは文無しになってしまいます。

金を取り戻そうと、ベラは娼婦になりますが、それをダンカンは心から軽蔑。そこで袂を分かちますが、娼館の中でベラは大出世。さらに同僚たちから社会主義も学び、知性にも磨きをかけていくことにもなり

・・という感じですよね。

これはですね

原作があって、1992年の小説とのことなんですけど、これ

「アルジャーノンに花束を」にすごく似てるんですよね。

アルジャーノンの場合は1968年に「Charly」の名でハリウッドで映画化され、主演のクリフ・ロバートソンがオスカーの主演男優賞を受賞したことでも知られています。

この映画でも知的障害者のチャーリーがネズミの脳を移植されることで大天才になり、そこで引き起こる様々なことが描かれています。

今回の映画の場合はそこに

フランケンシュタインの要素や

1932年のカルト映画「フリークス」の要素を感じさせます。フリークスに関してはストーリー知らないとわからないのですが、知っていたら話の最後の方で「あっ!」となることがあります。

 こうしたレファレンス的な温故知新を呼び起こすところがまず僕は好きですね。こうしたところがまず

ヨルゴス・ランティモスらしいですよね。一貫して気持ち悪い映画を作ってる人ですが(笑)、1930年代のホラーの古典を彷彿させる手腕はこれ、ギジェルモ・デル・トロあたりに通じるところありますよね。

 ただ、そうした演出的な面もさることながら、これやはり、多くの人がすでに指摘されてるように、メッセージの力強さは最大の売りですよね。「これはフェミニズムか否か」みたいなことを言う人がいるようですが、文句なしにフェミニズムでしょう。というか、「フェミニズムがどうやって獲得されていったか」を寓話で表した形だと思いますね。

 だって時代設定からしてそうじゃないですか。

「メアリー・ポピンズ」って、あれは20世紀初頭のロンドンを描いた作品ですけど、婦人参政権を求めて運動してるシーンあるでしょ?描かれてる時代が、この映画、近いんですよ。

 そこに加えて、知性がないとされてさげすまされてきた女性が、目覚めていってたくましく自由に生きる権利を獲得していった。それこそがやはり始まりだし、やはりそのことが根本的に思い出されるべきことなのだなと、少なくとも僕は見ていて思いましたからね。

それと似たシチュエーションにあったのが黒人だと思うんですが、大きな配役ではなかったんですけど、ベラを旅行中に社会意識に芽生えさせたきっかけを与えた人物の一人が黒人男性なんですよね。黒人も20世紀の前半までは「差別されて当たり前」という、半ば社会風習という名の洗脳で育てられてきていた人たち。見ていてそこもかなり「うまいなあ」と唸ったところですね。

これが「バービー」と同じ年に生まれたことがかなり象徴的という意見が多いですよね。ただ、よりフェミニズム的なのはこちらだと思います。バービーはどちらかというと「トキシック・マスキュリニティの逆襲」の要素の方が強い作品で、必ずしもフェミニズムの作品ではないかなあとも個人的に思いますのでね。

でも、なんといっても一番すごいのは、これ

エマ・ストーンその人に他なりません!


そりゃ、やはりそうですよね。知的障害者から、性暴力の被害を見てて痛々しいまでに体当たりで表現し、最後は尊敬すべき力強い女性になる。これを一つの映画の中で完璧に演じた。そんな映画自体がなかなかないですが、こんな難役、10数年、オスカー・ウォッチしてきている中でもほとんど見ません。今、彼女、オスカーの主演女優でトップ走ってますが、こんな10年単位で見ても珍しい役で受賞しなかったら、じゃあ、一体何やったら取れるんだ、ってくらいの役です!

とりわけエマの場合

「ララ・ランド」でオスカーの主演女優賞受賞した際に、「こんな軽い役で」と散々批判もされてきました。僕は妥当と思っていたし、彼女のことは「スーパーバッド」でジョナ・ヒルのカノジョやってた時から好きでしたから僕も悔しかったものですけど、今回の映画で僕もびっくりの大女優になったなと思います。ランティモスがいかに凄い監督でも、今回のこのエマの一世一代の演技がなければ成立してないので、これ、むしろエマの映画くらいの作品だと思ってます。

 あとはこれ

マーク・ラファロもかなり光ってますね。面白いのは、マーク・ラファロって言ったら、ハリウッドきってのリベラル、左派ですよ!そんな彼が真逆のサイテー野郎を嫌というほど演じ切ってるのもこれ、面白いなと。

彼も僕は思い入れあってですね

ロマンティック・コメディのカルト映画「13 Goin On 30」でのジェニファー・ガーナーのハートスロブ演じた時から個人的に応援してました。もう20年経つことに驚きですけど、ここまで来たのかと。

 ぶっちゃけてしまうと、この映画の方がバービーやオッペンハイマーよりも好きなんですけど、実は今回のオスカー、そういう作品がまだまだあるんですよ!明日、明後日と紹介していきましょうね。














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?