和製ヘビメタと源氏物語

 和製ヘビーメタル音楽と源氏物語に代表される平安文学に相通じるものを感じているのは、きっと私だけでないと思います。
 どちらも「なんでもあり」の現代の自由にどこか背を向けています。どちらかというと不自由な様式美を愛しているようにさえ見えます。ハードロックの一部はサイケムーブメントに乗って、ドラッグによりブーストされ性の解放へと一直線に飛んで行きました。それは祝祭的でしたが、一方、和製叙情派ヘヴィーメタルには春への憧れといっても、「愛と誠」的純愛を志向する閉じた耽美があります。

 私は1980年代の日本のメタルバンド「ラウドネス」のアルバム「魔界典章」が今も好きですが、収録曲の歌詞には古文的なワードと度々出会います。それらはとって付けた様なコラボというより、非常に強い親和性を感じます。このラウドネスのサウンド、特に二井原 実の歌(歌詞)と、ギターの高崎 晃が醸し出す独自性は、ゴシック的叙情なんて称してしまうと陳腐ですが、ダークな官能美の世界を表しています。

 現代の価値観からすれば純愛なんて流行らないでしょうが、今回の大河ドラマ「光る君へ」は、これまでと違う方向に大きく舵を切りました。人の心を占めているのは恋愛であり、苦しんでいるのは嫉妬やねたみであるのはいつの世も同じ。平安時代の物語が現代に生きる人の心を捉えて放さないのは、人間の心の有り様はあまり変わっていないからでしょうね。

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