手術台に乗ってきました

 脳出血を発症する前からつむじのあたりにでき物があって、少しずつ大きくなってきたので、取り除くことにしました。兄も頬のでき物を取り除きましたが、そんな程度に軽く考えていたら、ちょっとおおごとになってしまいました。

 近所の皮膚科にでもいけば簡単に切除できたかもしれませんが、私を担当することになった形成外科の先生によれば、下手に刺激を与えるのはよくないので、まずは腫瘍を取り除き、その際に切除した組織の検査は後日行う。切除は局部麻酔でやって、二回目の縫合したりする手術は全身麻酔でやるとのこと。
 生まれてこの方、手術台に乗ったことがなく、私にとって手術はファンタジーでした。実際に経験したことがある人とって、手術は生死の淵を覗くことになり、その恐怖と不安は言い表しようがないもの。

 施術当日は不安に浸る間もなく、あわただしく時は過ぎました。今回局部麻酔でしたので意識があって、音もバッチリ聞こえます。私をリラックスさせようとの配慮もあってか、雑談混じりに手術が進みました。手術が終わった頃に音楽が静かに流れ出したのは意外でした。アレンジが施された「エターナリ−」でしたが、勇気と想像力とほんの少しのお金があれば生きていける。チャップリンの言葉が私の頭の中で優しく響きました。

 手術も無事終わりました。先生のお見立てと技術を信頼しているので不安はありませんでしたが、麻酔が切れた後に襲われる痛みには身構えていました。鈍痛はしますが、私の中に長年居座っていた邪悪を取り除けた歓びのほうが遙かに大きく、新生できそうな気がしました。

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