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吉原花魁日記/春駒日記

前回、前々回に引き続き吉原遊廓を舞台とした文学作品を紹介します。『吉原花魁日記―光明に芽ぐむ日』と『春駒日記―吉原花魁の日々』です。

著者は森光子(俳優とは同名別人)という女性で1905年、群馬県の貧しい家に生まれ、1924年、19歳の頃、吉原遊廓に売られ、「春駒(はるこま)」という源氏名で遊女として身体を売っていました。

『吉原花魁日記』は吉原遊女が自ら執筆した大変珍しい文学作品で遊女の生活ぶりが書かれています。借金を負わされ生活必需品から装飾品に至るまで遊女が負担するという悪循環が細々と書かれ森光子は日々耐え忍んできました。

ある日、雑誌に歌人・柳原白蓮の記事に目を留まり手紙を書きます。彼女は遊廓を「足抜け」(遊廓では逃亡のことをそう呼んでいました)する決心をします。

逃亡当日、その日は検診に当たり彼女はその隙を狙って遊廓を抜け出すことに成功します。観の危険を感じながら柳原白蓮・宮崎龍介夫妻に保護を求めます。白蓮夫妻は当初驚きましたが森を保護し知己の弁護士の助けを得て彼女の自由廃棄をさせます。彼女は柳原白蓮らに感謝しその後、ある男性と結婚しますがその後の消息は不明です。

森光子は命懸けで逃走を成功した一因として学校に出たことです。娼妓の大半が識字率が低く農民出身で占められていましたが森光子の場合、幸い学校に通い読み書きを学び、それを日記として残すことが出来ました。途中、検閲で線が敷かれたり判読不可の箇所がありますが近代の遊廓の様子を知る上での歴史資料となりました。

有名人の助けを借りて逃走・廃業に成功した数少ない例でした。森の後を追うかのように同僚の遊女も助けを求めてくるようになります。


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