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生物の楽園(SDGs14.2 その2)

現在海には23万種類(※1)の生物が確認されています。でもこれは海に生きている生物のほんの一部。まだ名前もつけられない、見つかってさえもいない種類が90%いるとされています。微生物に至ってはもっと種類が豊富で、陸上や海中合わせて1万種の微生物が確認されているものの全体の0.1%しか判明していないようです。(※2)
その微生物が海にどれだけいるかというと、スプーン一杯(5ml程度)で100万匹にもなります。さらに小さな生物?のウィルスに至っては1000万匹にも及ぶのです。(※3)生命を作り出し、育んできた海。この海こそまぎれもなく「生命の宝庫」と言えるでしょう。

でも、この生命あふれる「生命の宝庫」であるのが海であれば、「生命の楽園」と呼ばれる場所があります。「干潟」です。干潟とは、通常は海ですが、潮(しお)が引いている時には、陸地(もともとは海底)となり、潮が満ちてくるとまた海に戻るようなところです。つまり海と陸のおいしいところどりな場所なのです。この干潟は海の時にでも浅瀬となるため、小さな魚(幼稚魚)やエビ、カニ、貝などが大きな魚の餌とならず、安心して過ごすことができます。また、川から流れてくるリンや窒素などが蓄えられる栄養豊富なばしょになるのです。まさに小さな生物たちの楽園なのです。そして、この干潟で順調に育った小さな生き物たちは大海原へ乗り出し、大きな魚の餌になっていくのです。この干潟があるからこそ、海の食物連鎖が成り立っているのです。

しかし、その干潟が大変なことになっているのです。1945年(昭和20年)には82,621haあった干潟も毎年平均250Ha減り、2010年時点で海の干潟面積は46,200Haと半分になっています。その主な原因は私達人間による埋め立てです。特に復興を目指す戦後の日本にとっては、水深が浅くしっかりした土壌をもつ干潟は港や人間の住む場所として経済的で好都合だったのです。いまや19,000kmある日本の海岸線の内、10,000km以上が人間が作った建物や港にとって変わられているのです。(※4)江戸前寿しと言われるほど、海産物が豊富な東京湾ですが、明治時代には136km2あった干潟も10km2にまで減少しているのです。結果、1960年代には10万トンの水揚げがあったもの東京湾の漁業も今では2万トンと減少の一途辿っているのです。

この干潟をお金で換算すると、1Haあたり食料としての経済価値は平均で0.6億円となります。しかし、干潟は波の緩衝や水質浄化など様々な多様な機能を持っているので、合わせると平均で15.3億円/ha にもなります。減少した干潟の経済価値だけでも55兆円も経済的損失を招いているのです。(※5)

こうして干潟の大切さが見直され、世界的に対策が練られてきたのでした。

干潟指数

J-Stage 「干潟健全度指数と経済的価値による 干潟のサービス 」物量評価(THI)の指標と基準値
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kaigan/73/2/73_I_1561/_pdf

※1、海洋生物のセンサス
http://www.jamstec.go.jp/jcoml/c1about.html
※2、東京薬科大学 HP 微生物の数
https://www.toyaku.ac.jp/lifescience/departments/applife/knowledge/article-028.html
※3、東京大学大気海洋研究所 微生物分野
http://ecosystem.aori.u-tokyo.ac.jp/microbiology-wp/
※4、国立研究法人 国立環境研究所 コラム「干潟・浅海域と開発について」
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/03/07.html
※5、国立研究開発法人 港湾空港技術研究所 「東京湾の干潟の経済価値は12~18億円/ha 人の干潟の利用がCO2削減や生物多様性に貢献」
https://www.pari.go.jp/press/2020/tokyo.html


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