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アナログマンガにあってデジタルマンガにないもの、それは『帯』

「webtoonの宣伝についてしゃべってください」
ということでtwitterあらためXのspaceでお喋りしました。

しばらくアーカイブで聴けると思うんで良かったら聞いてみてください、なのですが今日はそこから抜粋しつつちょっと補足したり感想戦をやっておきたいと思います。

トーク相手がデジタル発の漫画から始めて今ではwebtoonを一生懸命作っているナンバーナインの取締役コロクさんで、そのナンバーナインといえば最近話題になったのが縦長というwebtoonの特性を活かしたエスカレータの手すり広告。

…なんかXになってからうまく画像が表示されなくなってますね…ちぇっ。

まあこの辺りから入って紙媒体と電子媒体の広告宣伝の違い…出し方や作り方などをしゃべったのですが、このspaceでぼくは問題を3つ出しました。それを順番に聞いていただいて良かったら皆さんも答えを考えてみてください。

ところでspaceを聴くとわかるのですがファシリテータのちゃんめいさんはほぼ完璧に3問とも第一声で当ててきました。ぼくは業界の人たちにいろんなところでこういう質問をぶつけるという遊びをやって生きているのですが、こんなに当ててくる人はなかなかいないです。割と本当にびっくりしました。

さて、1問目はエスカレータ広告にまつわる問題。駅だけでなく道路やこのエスカレータ広告のような不特定多数が往来する場所に掲示されるのは「交通広告」というジャンルになるのですが、こういうのっていくらくらいかかってると思いますか?
例えば、ぼくは前職の竹書房という会社で駅から会社への誘導広告を掲示したのですが、

当時はちょっと話題になって結構なインプレッションを稼いでくれた「成功した広告」の一つだと思うんですが、さて、それではこの広告、月いくらで掲示されているでしょうか?というのが第1問目「どうやって宣伝するか」です。

1問目
「飯田橋駅の柱に広告を掲示するには月いくらかかるでしょうか?」


ただまあ、この聞き方だと「安いんだろうな」と推理はできちゃいますよね。ちゃんめいさんの答えは「2万円?」うーんごめんなさい…そこまでじゃないんですが趣旨はそういうことです……。
答えは……






答:8万円

年間100万円……なんかね、リアルな額じゃないすか。ギリ個人でも出せるな、と当時感じたものです。実際はJRさんの審査ってめちゃ厳しいので個人には許諾してくれないでしょうが。

ここで言いたいことはただ、もちろんこれってもっと大きなとことか柱何本分もとか、たくさんの人に見てもらおうと思ったらもっと高い額を払わなければいけないわけです。柱10本だったら年間1000万円かかる。

ただそれは「飯田橋駅を通る人」に見てもらいたい場合なんですよね。この場合竹書房を訪れる人に見てもらいたいという本義もありますが、SNSなどで広がってみんながポプテピピックという作品を認知してくれればいいわけで、そういう意味ではこの時のバズ、数千万impくらいあったので数十〜百万人がみた可能性があるわけです。月8万円で。

これはコスパがいい。だからもう現代の広告宣伝はどこにいくらでどういうのを出すかというアイデア勝負。そしてそのアイデアにマンガはめちゃ向いていると思うのです。このマンガのこの1コマをここに出せばめっちゃ話題になる…って無限に可能性あると思うんですよね。

こういうの3月に日吉や早稲田に貼って「ご卒業おめでとうございます」って書いておくとか。バズりそう&これから社会人になる人にこそ読んで欲しい作品である、とかも含めて、ですね。


さて2問目。
次は「何を宣伝するか」です。
そもそも宣伝なんで「何を伝えたいか」が大事なわけじゃないですか。
この作品は面白いから読んで?というのはざっくりしすぎているので、かわいい猫が出てくるから猫好きの人読んで?とかめっちゃ泣ける話だから読んで?とか「どういう話だからそういうの好きな人ちょっと読んでみて」という宣伝が大事なわけです。

で、この伝えることに関してある取り組みを始めた会社がありました。その会社とは「アルファポリス」さん。「ゲート」などの異世界転生系小説や女性向けラブロマンスなど小説から始まってマンガもやられている勢いのある新興勢力の出版社さんです。このアルファポリスさんの女性向けロマンス小説レーベル「エタニティブックス」の書籍化において行なったある取り組みとは?というのが第2問目だったのですが……。

本当に申し訳ないことに、space内でのぼくの答え「結末がわかるようになっていた」は超勘違いしていたようで……。調べ直したんですが、これエタニティさんの話じゃなかった……ある別レーベルの話だこれは……。ですので、番組内での間違いを訂正させて頂きつつ、あらためてここで2問目を問わせていただきます(何を宣伝するか、という意味ではこの質問でもズレてないと思います泣)。

2問目
「エタニティブックスが表紙に表示することにしたあるマーク。その意味はなんでしょう?」

正解は……






答:どれだけ性的描写が含まれているか

エタニティブックスのカバーには必ず丸い赤、ピンク、白の丸いマークが入っているのですが、その違いはページ内ではこう説明されています↓↓↓

(赤:一定以上の性描写あり、ロゼ:軽い性描写あり、白:性描写なし)

space内で触れたタブー、という方向性ではないですがこれは面白い試みです。「面白いです」という要素以外に読者が必要とする情報「エッチですよ」「エッチじゃないですよ」ということを明示する作戦ですね。

旧来の考え方からは出てこない発想なんですよね。ちょっとしたネタバレだし、自らをカテゴライズするようなやり方もあまりいいとはされてこなかったと思います。でも、確かにこれって「読者が必要とする情報」ですよね。
それを手早く伝えて買いやすくする…これもまた一つの大きな宣伝だと考えています。「エッチである」や「エッチでない」ことを伝えてコンバージョンを上げていくという手法ですね。

だから例えば読者のニーズから宣伝内容を考えるならば「この漫画は猫が出てきますし、猫が可哀想な目に遭うこともありません」(猫好きの方はこういうことを知りたいニーズを抱えているはず)とかってアピールするようなことも考えられますよね。「猫死なない」マーク。

さて、最後の3問目は「旧来の出版社が作っていて、新興のデジタル発の出版社やwebtoon出版社が作ってないものとはなんでしょう?」です。

この答えは記事のタイトルにしてしまいましたのですぐいきます。

正解:「帯」

本の帯……知らない人はいないと思いますがいきなりどういうものか思い出せと言われたらぼんやりしちゃう人もいるかもしれません。
帯を集めたいい記事があったのでご紹介させてもらいます↓↓↓

ちょっと画像もお借りさせてもらいます↓ ↓ ↓

こういうのですよね。

ポイントは2つ。

この「北ドン」が帯のスタイルとしては王道でメインキャッチ「旅、ときどき探偵。」と内容紹介となるリード「極北の大地に暮らす17歳の“エブリデイ・ワンダー“!!」とサブキャッチとか呼ばれる補足情報「入江亜季最新作」の3つの要素からできているんですが、このすべてを編集が考えます。ここは作家さんだったり出版社の広告部や営業部だったりしない。必ず担当編集の仕事です。

もう一つのポイントはこの「帯」って出版社として「販促物」の扱いになってるってことです。コミックスを買う時って帯がついてなかったりしませんか?あれは帯がPOPやポスターなどと同じ「販促物」で商品の一部には含まれないという扱いになっているからなんですね。

だからマンガの販促の中心にして最大のものはこの「帯」なんです。ここに書いてあることがそのコミックスが最も伝えたいことであり、アピールなので、何かしら他の広告宣伝展開をするときもここに書いてあるテキストが中心となります。

が、紙のコミックスが発売される時はほぼ必ずーーー実はこの「必ず」も最近のことで、昔はついてないことも多かったんです。この帯を必ずつけるというのは出版社が広告宣伝を重視し始めたひとつの事象でもあるのですーーーついているはずの帯、電子書籍のみで展開される時は当然のようにつきません。

じゃあどうやって宣伝広告しているのか?

↑↑↑バナーですよね。バナーとか電子書店で展開される時にストアのつけるリコメンド文とか。

ということは……そう、電子発のコミックスの多くが「宣伝の言葉」を大きく「他者(ストア)」に預けているのです。

だからこの3問目が問うているのは「誰が宣伝するか」

このトークセッションで「webtoonの宣伝」とは?というお題をいただいた時に最初に思ったのがここの「自分で宣伝するのか?他人に宣伝してもらうのか?」というのがあるよね、と思ったことを「帯」の有無に託してしゃべってみました。

この「帯」を作る力が出版社の漫画を売る力の源だと思うんですよね。
だからwebtoonに限らずデジタル発の漫画を作っている皆さんはまずこの「帯」を作るところから始めてみてはどうでしょう。それが「広告宣伝」につながっていくはずです……というのが今回のぼくの結論と答えです。

この「帯」についてはまだまだ話したいことがあるのでどこかで喋れるといいなあ、と思いつついったん今日はここでおしまいとさせて頂ければ。

space本編も聴いていただけたらなと思いつつ、最後にこのspaceを主催したiMARTというイベントの本編が11月に開催されることもお知らせしておきます。詳細とチケット購入はこちらから行けるので、よかったらみていってくださいね↓↓

それではまた!

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