SSまがい「乱歩さんと正史くん」 その1 ~正史くん、初任給をもらう~

※このSS(二次創作)まがいは、ちょっぴりの事実をベースにしたフィクションであり、実在の人物とはなんら関係がありません。仮に同姓同名の方がいてもその人物の性格はまったく異なります。

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偉大なる明治時代と激動の昭和時代に挟まれた大正の時代。
その時代も幕をおろそうかという大正15年。
懇意にしていた作家、江戸川乱歩さんにうまく騙されて神戸から東京にやってきた薬剤師の青年、横溝正史くんは、これまた知り合いの雑誌「新青年」の編集長、森下雨村さんの誘いで、東京の博文館が出す雑誌「新青年」で編集者で働くことになったのでした。いやぁ人生って本当にわかんないものなんだなぁと思う正史くん。
そして今日は、編集者となった正史くんの初めての給料日です。

「森下編集長、森下編集長 (・_・) 」

「おう。なんだ、よこせい ( ̄△ ̄)」

「は?よこせい? (・_・) 」

「いや、お前の名前、横溝正史だろ。だから略して、よこせい ( ̄△ ̄)」

「違います。僕の名前は正史(まさし)って読むんです。だから略するなら、よこまさ になります (・_・) 」

「細かいやつだな、お前。よこまさって言いにくいだろ。よこせいでいいんだよ、よこせいで。だからお前、名前を正史(せいし)に改名しろ ( ̄△ ̄)」

「無茶苦茶なことをいう上司だなぁ。僕、どうして博文館に入社したんだろ(・_・) 」

「たしかに博文館にこないかと誘ったのは俺だけど、自分が二つ返事で入社を決めといて、そんなこというお前もたいがいだぞ。で、なんか用か、よこせい? ( ̄△ ̄)」

「・・・もう よこせい でいいです。ところで、今日、僕はお給料をもらったんですが・・・(・_・) 」

「そりゃあ、今日は給料日だからな ( ̄△ ̄)」

「約束では、初任給は60円と聞いていました。でも、僕がもらったのは70円で、10円多いです。これは間違いなのでは? (・_・) 」

「いいんだよ、70円で。よこせい、お前、婚約者がいて、来年には結婚するって言ってたろ。だから編集局長に頼んで70円にしてもらったんだ( ̄△ ̄)」

「・・・森下編集長・・・、僕、博文館に入って、本当に良かったです (T_T) 」

「いや、よこせい。さっきお前、なんで博文館に入ったんだろうって、後悔するような発言してなかったか?( ̄△ ̄)」

「え、聞き間違いでは?僕、そんなこと、ひとことも言ってません (・_・) 」

「いい性格してるな、お前。ま、嫁さんを大事にしてやれ。あと神戸の親御さんにも心配かけるようなことをするなよ ( ̄△ ̄)」

「はい。もっとも僕が薬剤師をやめて東京で雑誌編集者になったことが、父にとって、よっぽどショックだったのか、それが原因にでアル中になりましたが (・_・) 」

「・・・それ、編集者にならないかと誘った俺を責めてる?( ̄△ ̄;)」

「まぁ、暗にちょっと (・_・) 」

「責めとるんかい ( ̄△ ̄;)」

博文館に入社して1年もたたずに、正史くんは、森下雨村編集長の後をついで、雑誌『新青年』の編集長になるのですが、それはまた別のお話。
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