ショートショート「メリーからの電話」

そろそろ寝るか、そう思ったとき、スマホの着信音が鳴った。見知らぬ電話番号からだった。

「はい、もしもし・・・」

ボクはとりあえず名乗らずに電話に出ることにした。

「わたし、メリー。今、東京を出たわ」

「え?」

思わずボクは聞き返した。しかし、電話の相手はそれだけをいうとプッと電話を切ったのだった。

翌日の朝、また電話が鳴った。

誰だろう、朝から・・・。そう思いながら、電話に出ると、

「もしもし、わたしメリー。今、あなたのいるXXX県についたわ」

そして電話は切れた。

それからというもの、ボクのスマホは不定期になり続けた。

「もしもし、わたしメリー。今、あなたの最寄りの〇〇駅についたわ」

「もしもし、私メリー。今、あなたが住むアパートの近くにいるの」

「もしもし、私メリー。今、あなたの部屋の前にいるの」

その電話が切れると、ボクの部屋のチャイムが押されたのだった。

来たか・・・ボクはため息交じりにドアを開けた。そこには若い男性が立っていた。

「ちーす、メリー急便です。ご注文の品をお届けにきました。あ、ハンコはここにお願いします」

はいはい、とボクはハンコを受領書に押しながら、聞いた。

「ところで、おたくのところの、配送状況をスマホで知らせる音声サービスって、評判いいんですか?」


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