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答え合わせとしてのビジネス書

ビジネス本、自己啓発本

世の中には、どうもビジネス書と言われる本のジャンルがあるらしく、仕事の効率を良くしたり、いわゆる「成功」するための方法などを指南してくれるらしい。
「自己啓発」とも密接に関わってる趣きもあって、書店でもわざわざそんなコーナーが設けられ、売れ筋、人気の本が良く平積みされている。

中には、「これだけは20代のうちに学んでおくべき」だの、「30代で身につけておくべき教養」だの、もっと露骨に「こんなことも知らずに仕事を始めるのはただの阿呆です」だの、悪戯に若者をあおるサブタイトルも多く、「そうかそうか、自分が今、冴えた感じがしないのも、こういう本を読んでなかったからなのね…」と、落胆しないこともない。
とはいえ、無論、自分が若い頃、この手の本が無かった訳ではない。

すみません、単純に個人的に、ほとんど興味が無かったので読みませんでした…

若い頃

いや、きっと、会社帰りの駅前書店で、立ち読みがてら、ふと手に取ったことはあるだろうし、一冊や二冊は購入したこともあるかも知れない。
が、如何せん、全く身に迫って来ないし、まるでピンとこない。
そんな、言われた通りにしたからって、自分が立派なリーダーになれるとは思えなかったし、日々の問題が立ちどころにクリアになるとも想像できなかった。
人それぞれ価値観なんて全く違うはずなのに、いきなり「成功」とか意味が分からん、と、真面目に、「成功」にすら興味が無かったあの頃…

もちろん、通常は、「うーん、なんだか、ビジネスうまくいかんなぁ」とか、「いやあ、なんだか、チームがうまく回らない… どうしたもんかなぁ」と悩んで初めて「そういうのうまく解決する方法を指南してくれる虎の巻とかないかしらん?」と探しに行くのだろうし、自分もそんな、そこはかとないモヤモヤを持ちながら、本屋をうろうろしたこともある。
「不器用なクセしてデザインやりたいと思いつつ、なんだか気移りが激しく、合コンの回数を増やしながら、本職をつつがなくこなす方法を知りたいんだが、あ、そうそう、それに加えてなんだか副業で違うことやってみたい気が抑えられないのに、実は優先度としてはダイエットが近々の課題で、うまくいかないから、せめて楽しく始められる新しいスポーツないかしら? と日々悩んでるこんな今の自分にとって、新しく外国語を学ぶとしたら、何語がいいと思うか、について適切なアドバイスを欲しているあなたへ!」という、当時の自分にとって、かなりピンポイントな指南を頂ける書籍であれば、迷うことなかったのだろうが、そんなコアな書籍を売りに出すほど、出版社も暇では無かったようで。

というわけで、若い頃は、ビジネス本、自己啓発本、と言ったものにほとんど興味が無かった。

30代〜40代になり…

それが理由かどうかは定かではないが、特段さえた仕事をした覚えもないが、20代後半ともなれば、色々仕事の上で、いやが応もなく、厳しい場面、いきなり修羅場、に立たされることも増え、たまに壮大な失敗もやらかしつつ、おっかなびっくり苦し紛れに乗り切るうちに、なんだか、「あ、そういうことかぁ、こういう時はこうやればいいのね!」と、少しずつ、コツを見出すようになる

個人的には、海外に出て仕事をしたこともあり、まるでロジックの違うビジネス環境の中で、どう生き延びていくか、が文字通り、死活問題でもあったし、そんな中で、プロジェクトの進め方とは? 訳のわからないことを言う相手とコミュニケーションを取るには? 国籍も違うてんでバラバラなバックグラウンドを持った老若男女をどうやってチームとして束ねるか? 最悪の契約条件で不可能な責任を押し付けられた時どうする? なんてことを、考えざるを得ない。

そのうち、「なるほどね、こう言うプロジェクトを進める時に第一に気をつけるべきはここだね」とか、「こんだけ準備しておかないと、会議もまとまんないね」とか、「自分がこうやって動けば、結構みんなうまく動いてくれるんだ(涙)」とか、「契約条件が厳しいてことは、逆にここをつくしかないな…」とか、分かった気になってしまったりもする。
と言って、今から考えると、「あらあら、まだまだ分かってないよね…」て振り返ることも多いんだけど…

振り返り

そうなってきた頃、ネット上で「マネジメント論」だとか「リーダーとは?」だとか言った記事が掲載されてると、つい目が行くようになってきた。
「そうそう、まさにそれだよ」と相槌打ったり、「あら、それは、自分のやり方と違うなぁ… いや、それ古いんじゃね?」と首捻ったり、「あ、そうか、自分がやっててうまく言ったのは、確かにそう言う側面もあったからだね」と独りごちたり…
若い時分には興味の無かった記事に、案外積極的に目を通すことに。

かと言って、わざわざ、ビジネス書だとか、自己啓発本を買ったり、とまではなかなかいかないんだが、自分なりに泥臭い方法で曲がりなりにも築き上げてきた自分の手法をあたかも自己弁護するが如く、そして補強するが如く振り返る自分
(しかもそれを、Think Oppositeなどとつぶやいていたりもする…)

結局、ビジネス書は、ある種の答え合わせとして消費されるもの

と、ごくごく、平凡なビジネスマンの、平凡な成長の過程を記すことほど、退屈なことはなく、何ら光の差す物語がある訳でもない。
ただ、何が言いたいかというと、ビジネス書は、若い頃にはピンとこないが、後から振り返ってみたら、確かに案外いいことが書いてるものであって、だから、若い頃からそれを学んでおけばいいようなもんだけど、結局本当に意味で自分の血となり肉となるためには、自らの実体験として経験する他にないと言うこと。
つまり、いいこと書いてあっても、それがいいことだなと本当の意味でわかる頃には、自分でそれを発見してる訳で、結局、それは、自分の人生の答え合わせみたいなもの、と言うことだ。

そういう、自分の成長の過程に合わせた、一過性のエンターテイメント書籍として消費すればいいのであって、あえて若者に助言する機会があるなら、せっかくそう言った、ビジネスにおけるさまざまなコツやTipsを自ら発見していくのが、仕事をすることの醍醐味であるのだから、個人的には、ビジネス書なんて、むしろ若いうちは読まない方がいい、と断言する

答え合わせの、ちょっとだけ先にあるもの

ただ、そうやって答え合わせとしてのビジネス書テキストを楽しめるようになると、自分のスタイルに近しいビジネス書であれば、自分が今まさに歩みを進めながら出会いつつある難所で、多少は参考になるヒントがあるに違いない、と言う期待感は禁じ得ない…

事実、そうやって手にしたビジネス書には、自分も深く頷くヒントが多々発見してしまうことも多く…

と言うわけで、結局、「一過性の消費財としてのビジネス書」というジャンルは機能しているわけで、駅前書店の平積みが消えることはない、という事実は否定できず、後は、「答え合わせ」という過ぎ去った事象にまつわる振り返りの中からどれだけ「未来」を汲み取れるか、己のセンスとアンテナの貼り具合によるのだ、と、これまた、大きな意味での「答え合わせ」をしてみた今宵。

さて、では一体、どんなスタンスでThink Oppositeとつぶやくことに価値があるのか。
そう、それは単純に、過去を未来に反転する、ということであったりするのだが、その辺りは、おいおい…


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