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イベント開催前日の延期決定〜哲学対話の主催者はどう判断し対応したか〜

哲学対話ユニットTOIを主宰するタガイと申します。普段は吉祥寺にあるバツ4ビルで哲学対話プログラム『Think Out!』を開催しているのですが、昨今の新型コロナウイルスの影響を受けて、予定していたイベントの延期を決定、オンラインでの哲学対話を初めて開催しました。

多くのイベント主催者が今回の有事を受けて、急遽の延期・中止を余儀なくされていると思います。また、代替手段としてオンラインでの実施を検討されている方も少なくないと思います。

そんな方のために少しでも参考になればと思い、私たちが主催する哲学対話プログラムについて延期決定に至った考え方のプロセスと、決定後の対応内容、そして初めてのオンライン開催で得た気づきを、
①イベント延期決定→②オンライン開催→③感想
の3回に渡ってお伝えします。

第1回の今回はイベント延期決定編、延期決定までとその後のお申し込みいただいた方への対応について。特に小規模のイベントを主催される皆さんに「何を基準にイベント開催の可否を判断するか」そして「延期決定後にどう対応すべきか/どんな反応があるか」私たちの経験をご参考にしていただけますと幸いです。

開催前日の延期。きっかけは、東京都の発表。

2月21日(金)、翌日にThink Out!の開催を控えたこの日、主催者である私は開催の有無を迷っていました。東京都の陽性患者数はまだ30人程度で、正直いち生活者目線からすると「インフルエンザの方が多いんじゃないか」と呑気に考えていたのですが、同日東京都から都の主催する大規模イベントを自粛するとの発表がされたのを受け、イベント主催者として延期ないしは中止を考え始めました。

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出典:東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト
(延期を決断した日はこれほどまでに増えると思いませんでした。)

正直、延期・中止を考え始めた段階でも開催したい気持ちと延期・中止する気持ちは半々でした。というのも、都が自粛を決定したイベントは500名以上の大規模のものに対して私たちが主催する哲学対話は定員15名。さらに、その回は過去最高の申込数で定員を超えてキャンセル待ちまで発生。そして、運営面でも過去の参加者の方にサポーターとして入っていただく新しい試みをする予定だったりと、楽しみにしてくださっている方が多々いる中だったので直前の延期・中止は本当に心苦しかったのです。

延期決定の決め手は「心理的安全の確保」

ここで私は「明日そのまま決行したらどうなるか」を考えてみることにしました。中には前日の報道を見て感染を心配し参加を取りやめる方もいるでしょうが、多くの方は私がそう思っていたように「人数が少ないし大丈夫だろう」と思って会場へ足を運ばれたと思います。しかし一方で、こうして参加された方の中にも頭の片隅には「もしここで感染したら…」と考える人がいてもおかしくはないとも思いました。

ここまで考えたところで、自分たちが提供する価値のひとつに「会場の雰囲気」があることを思い出しました。これは、以前「価値」をテーマにThink Out!を実施した際にアンケートから得られた結果で、多くの方がイベント全体に満足するポイントとして「会場の雰囲気」を挙げていたのです。
(こちらのレポートにまとめています↓)

それ以降、対話の場を設計する私たちはこの「会場の雰囲気」をより良いものにするためにファシリテーションはもちろん、提供するお菓子やコーヒー、室温にいたるまで考えうる工夫を重ねてきました。

もしひとりでも不安な気持ちを感じる参加者がいたら、この「会場の雰囲気」を損ねてしまう。参加者の心理的安全性を第一に考えて、私たちは前日にイベントの延期を決定しました。

イベント延期決定後の対応

そしてお申し込みいただいた全ての方に、次のようなメールを送付しました。

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このメールに対して何名かの方からはお礼のお返事をいただき、お叱りの言葉を受けることはありませんでした。

また、同様にTwitter公式アカウントでも告知しました。

そして、会場であるバツ4ビルのオーナーさんへの連絡と、協力を申し出ていただいたサポーターの方へも連絡し、いずれの方にも参加者にお伝えしたのと同様の延期決定の主旨をお伝えして、ご快諾いただきました。

当日、念のため会場待機。2名が来場。

そして翌日の開催当日。前日の直前連絡に気づかない人もいるかと思い、私だけ会場で待機しコーヒーとお菓子を振る舞うことにしました。

会場入り口にはこのようなポスターを掲出。

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結果、参加予定15名のうち2名の方が連絡に気づかずに来場しました。幸いにも、当日ほかのフロアで開催されていたイベントに振替で参加いただき、満足した様子でお帰りになりました。

延期決定の判断は正しかったのか

これらの判断をする上で、メンバー用Slackでやりとりをしていた際に、共同代表のマツイシからこんなコメントがありました。

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歴史的決断というには大げさですが、あれから2ヶ月近くが経とうとしている今、当時の延期決定の判断は正しかったと確信を持っています

また「場の心理的安全性」という私たちが提供すべき価値についても、さらに強く意識する経験となりました。

次回の第2回は、この延期決定を受けてオンラインでの開催にいたるまでに準備した内容、そして当日どのように対話を進行したのかお伝えします。↓


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