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【井上インタビュー❶】THIRD代表になるまでの軌跡

THIRDの提供する「管理ロイド」は、非常に複雑なプロダクトです。機能面を一言で表すなら、「不動産管理の業務を効率化する」ことに限るのですが、このプロダクトの価値を伝えていくには、THIRDのこれまでの歴史や、誕生秘話をご紹介する必要があると考えています。

そちらをお伝えするために、今回代表井上のインタビューを連載していくことになりました。最初にご紹介するのは、井上の経歴やこれまでの経験についてです。

THIRDは「建築/不動産」「AI・IT」「経営コンサルティング」の三つの専門性を持つことを強みとする会社です。それぞれのバックグラウンドを持つメンバーが集まり切磋琢磨することで、事業を成長させてきました。
一見すると親和性のないこれらの領域が、何故同じ組織でシナジーを生み出せているのか。そのポイントは代表井上の経歴にあると考えています。

以下より井上が語り手として、二部構成でお送りします。
後編はこちらよりご覧いただけます。是非ご一読ください。

これまでのキャリアについて

私はこれまで多様な領域を経験しており、職歴としては異色に感じられるかもしれません。

データベースエンジニア→金融→経営コンサルティング→不動産建築コンサルティングと幅広く経験を積んできました。その結果、全ての点が線につながりいまのTHIRDのビジネスに繋がっています。

今までの私のキャリアを振り返ると、Apple創業者のスティーブジョブス氏の有名なスピーチの「Connecting the dots(点と点をつなげる)」がとてもしっくりくるでしょうか。

参考:スティーブジョブス スタンフォード大学スピーチ https://www.youtube.com/watch?v=iPseaH5r7RE

この記事では、私がどういったキャリアを歩んできたのかを改めて振り返ります。

新卒:ITベンダー時代

私は2005年に大学卒業後、1年ほど就職せずに学生時代に立ち上げたNPO団体の運営や、香港でのERP導入インターンなどを行なっていました。自分の興味がある分野に好き勝手に突き進んで、就職せずにフラフラしていたんです。
結果的に、香港でのERP導入に携わった経験から、IT導入によって企業が大きく変わる姿を目の当たりにし、「ファーストキャリアはITを学びたい!」と強く思うようになり、2006年10月に外資系IT企業に入社しました。

当時私がいた部署は、「電話でデータベースを売り切ろう!」というミッションに挑戦している部署で、当時は珍しかったWebミーティングを使った商談を取り入れたり、インターネットセミナーを開催して顧客を集めたりと、今思えば最先端の経験をさせていただいたと思っています。

4年ほどDBエンジニアをやってIT業界の構造/システムができる仕組みをあらかた理解できたタイミングで、キャリアチェンジをしました。

キャリアチェンジ1回目:金融時代

その後は、ご縁があり外資系投資銀行に勤務する事になりました。担当はデリバティブ商品、仕事内容はマーケターと商品設計です。

元DBエンジニアが金融工学を大いに活用したデリバティブ商品に携わっていたわけですが、今振り返ってもすさまじいキャリアチェンジでだったと思います。ブラックショールズ※2を泣きながら学んだり、金融業界のルールを叩きこまれたり、ゼロから一気に知識をつけて仕事をする能力はここで身に付けられたと思います。皆様のご想像通り、この業界は厳しい環境下であったことは事実で、心身ともにとても鍛えられた期間でした。

よく「なぜITから金融へ?」と聞かれます。私の考えでは、ITも金融も経済にとって必要なインフラであり、将来起業する事を目標としていた自分にとっては、両方とも絶対に若いうちに学ぶべきとの考えがあり転職をしました。不安も多かったですが、今思うと業界を変えてゼロからキャリアを積み上げなおした事はとても良かったと思っています。

その後、自分がいた部署がファンドに買収され、そのままファンドの傘下で証券会社を立ち上げることになりました。

実は、前述した外資系投資銀行には、このファンドの傘下にあるSPC※3の社員として出向しており、新しいビジネスを切り出すことが決定しているところに入ったというのが実態です。このため、同じ商品を担当していたものの、事業のカーブアウト&会社の創業のプロセス同時に経験しました。一緒に働いていたメンバーはとても優秀で、国際色豊かな環境(ロシア、インド、イギリス、アメリカ、インドネシア、韓国、日本が入り混じる)で働いた事でまた一段とキャリアのステップアップができたと思います。

※2:ブラックショールズとは
オプションの理論価格計算のモデル。原資産価格、権利行使価格、金利、残存期間、変動率といった計算に必要なデータが簡単に入手でき、計算も容易なことから代表的なモデルとして広く用いられています。
参照 大和証券 金融・証券用語解説
https://www.daiwa.jp/glossary/YST2748.html

※3:SPCとは
英語表記「Special Purpose Company」の略で「特別目的会社」のこと。
資産の流動化や証券化など、特別の目的のために設立された会社です。
https://www.daiwa.jp/glossary/YST1195.html

キャリアチェンジ2回目:経営コンサルティング

外資金融でのキャリアの終盤、社会のインフラ系ビジネスよりも、より「事業の手触り感」を感じる所で仕事がしたいと思うようになり、日系コンサルティングファームに転職しゼロからキャリアを積み上げなおすことになりました。RPGゲームで戦士から魔法使いに転職し、レベル1からまた鍛えなおしている感覚です。

私が配属されたのは不動産チームでしたが、チームは当時3名しかコンサルタントしか配属されていないマイナーな部署でした。一番最初にアサインされたのが大手不動産デベロッパーの中期経営計画を策定するプロジェクトです。中期経営計画を策定したら、その計画の実行までやらせていただく事になり、同じクライアントで、マーケティング改革、用地買収の効率化、建設コスト削減、新規事業立ち上げ、スキー場の再生など多くのプロジェクトを経験しました。THIRDで大切にしている経営理念の一つである「経営改革の変数は、現場にしか落ちていない」という事を骨の髄まで叩き込まれたのもこの時期です。多くの有名経営者の方とも一緒にお仕事をさせていただく機会にも恵まれ、現在株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン代表取締役社長を務める澤田貴司さんともスケールの大きい仕事もご一緒させていただきました。

THIRDへの参画

不動産業界は取り扱っている商品の単価が他の産業と比較にならないほど大きいのに、他産業と比較した時にIT化が遅れており非効率な箇所が多く、業界特有のしがらみを体験した事がTHIRD参画のきっかけになりました。

当時私が感じた課題の一つに、不動産と建築は切っても切り離せない関係にあるのにもかかわらず、お互いがブラックボックスで、発注者であるデベロッパーが建築コストをコントロールできない事がありました

不動産開発は中長期の投資であり、その根底には金融の考え方があります。つまり、安く買って、高く売る。土地を仕入れて、建物を建てて付加価値をつけて、高値で販売する事で利益を得るビジネスです。大体3年~5年、大規模なプロジェクトだと10年単位のプロジェクトになるわけですが、投資のエントリーの時に立てた事業計画が、エグジットするまでの期間の間に、建築コストが大幅にずれたりすると、想定していた利益や利回りが無くなってしまうのです。投資の意思決定をする際に、プロジェクト予算を100億と仮定すると、土地代40%、建築コスト40%、その他マーケティングなどのコスト10%、残りが利益というイメージが一般的です。

例えば100億円のプロジェクトの場合、建築コストは40億。この建築コストは不動産を開発している間の5年間で、平気で10%~20%程度ブレしまいます。建築コストが高くなってしまったら、売値である不動産販売価格や賃料に転嫁できればよいのですが、不動産の相場(坪単価)もあり、それも限界があります。そう考えると建築コストをコントロールする事が死活問題になったりするわけです。

では、この建築コストがコントロールできればいいと思いますよね。ただ、そこが簡単にはいきません。百戦錬磨のゼネコンと対峙してコスト削減の交渉をしても、現場で何が起きているのかわからないブラックボックスの状態で交渉する事なんて出来ないのです。何も知らない中で一人で交渉して、何度叩きのめされたかわかりません。

こうした課題を感じていた中で、出会ったのが今のTHIRDのコンストラクションマネジメントチーム(建築技術コンサルティング)です。

弊社のコンストラクションマネジメントチームは、現役の現場監督(建築・機械・電気)や、設計士、職長クラスの職人などで構成されており、やろうと思えば自ら工事を請け負うことも出来る人材が揃っています。工事部材、職人の人工、工法、工期、安全性などあらゆる領域を、現場を経験したリアルな目線で検討して見積を査定出来ることが強みです。この技術・ノウハウがあれば、不動産投資の中でもブラックボックスだった建築コストをコントロールする事ができる!と興奮したのを覚えています。

一方で、このチームは元々建築専門の技術者集団であり、自分たちの価値を正しく理解しお客様に伝えることが出来ておらず、営業をするのにも苦労をしていました。プライシングにも表れており、当時は弁護士のように時給XX円という形でコンサルティング料をチャージしていたのです。
そこで、私から一緒に仕事をしていくことを提案しました。私が持っている経営コンサルティングや投資の経験と、THIRDのコンストラクションマネジメントチームが持っている技術力をかけ合わせれば、より大きな仕事の取り方が出来ると確信していたのです。こうして、2017年の夏に私がTHIRDに参画する事になりました。


この記事は後編に続きます。


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