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【井上インタビュー❷】管理ロイド開発秘話

THIRDが提供する管理ロイドの開発秘話を語る代表井上インタビュー第2弾の記事です。

(前編はこちらからご覧いただけます)

本記事では、THIRDと出会った井上が入社した後、THIRDの事業の推移や管理ロイドの開発秘話、今後の展望についてご紹介します。前回と同様に、ここから先は井上を語り手にお送りします。

THIRDのコンサルティング時代

THIRDは今でこそプロダクトを開発するテック企業ですが、私が参画した当初は、元々のコンストラクションマネジメント(建築技術コンサルティング)と私が培った経営コンサルティングのノウハウを掛け合わた、不動産・建築領域に特化したコンサルティング会社でした。不動産ファンド・不動産デベロッパー・事業会社からリノベーションの投資からExitまでを一気通貫で請け負う案件が多く、建築コスト削減のソリューションを軸に様々な仕事をしていました。
当時はオリンピックが決まった直後で、ホテルの投資が盛んな時期だったことも影響していたと思います。各社の建築コストは上昇しており、コスト削減をするために当社の現場監督をコンサルタントとして工事プロジェクトに派遣する、分離発注の案件も多くありました。

「分離発注」とは、元請けのゼネコンの代わりに当社の現場監督がコンサルタントとして施主側につき、施主と下請けである設備工事の会社を直接つなげて工事を実施する手法です。
通常、工事のプロジェクトは元請けのゼネコンが施主から工事を受注し、下請けの工務店や電気工事会社、設備工事会社を傘下につけて工事を実施するのが一般的です。現場監督も元請けのゼネコンから派遣され、工事のプロジェクト管理(工期、品質、お金のコントロール)まで包括的にゼネコンが担います。
THIRDではゼネコンよりも安価に請け負えるため、私たちの手法を使えば施主からするとコストが安くなり、現場で実際に工事をする下請けの工事会社はゼネコンの下で仕事をするよりも高い金額で受注する事ができるため、お互いがWIN×WINになる手法です。

こうした分離発注のプロジェクトを受けていると、竣工時の検査や、竣工後の1年点検等もTHIRDが実施する必要があり、プロパティマネジメントの会社やビルメンテナンスの会社と一緒に、点検や検査を実施することになりました。しかし、やってみて痛感したのですが、点検作業はとにかく紙が多い。少数精鋭で経営していたため、紙による点検作業に工数を非常に多く割かれる結果となり、人手が足りなくなってしまいました。

こうした経験により生まれたのが、「管理ロイド」です。

AI不動産管理SaaS「管理ロイド」の誕生

管理ロイドをゼロから作る上で、特に大切にしたのは現場感です。
コンサルタントの立場で携わっていても、実際に現場の業務を経験したことはなかったので、当時並行して請け負っていた経営コンサルティングプロジェクトのお客様(不動産管理会社)にお願いをして、常駐物件の管理実務を2週間ほど体験させていただきました。夜中の2時にボイラーの点検に行ったり、不具合の報告書を作成するために大量の写真をExcelに転記をしたり、ピットの中にある汚水ポンプの設備点検を行ったり…実体験から得られた課題意識は強烈なインパクトがあり、どれだけ現場の人たちが大変なのかを身をもって知ることができました。それまでも大切にしていたことではありますが、”経営改革の変数は現場にしか落ちていない”という考えは真理であると、改めて身に染みた体験でもあります。

同時に、それらの業務をただ体験するだけでは意味がなく、マネジメントの視点を持って現場を見渡さなければ、経営を改善するための示唆を得ることはできません。我々は、人手不足で工事の点検をまわしきれないという切実な課題を持っていたからこそ、労働生産性をどうしたら改善できるかという目線感で改善の糸口を見つけ出せたのだと思います。

加えて、こうしたプロダクトを作るときに重視したのは、プライシングから逆算して最小限の適切なIT/AIの技術を選択することです。
例えば、最先端の不動産管理の事例は、工場の事例を参考にできます。工場ではラインが1分停止すると数億円の損失が出るとも言われているため、コストをかけてIoTツールやセンサーを大量に導入し、リアルタイムで計測するという仕組みが定着しているのです。
1物件当たりの月額から導き出される予算と改善が期待できる労働生産性のバランスを見て価格レンジを決め、課題を解決できる技術を見つけ出し横展開すること。そのプロセスには、分野の固定概念に囚われない柔軟で広い視野と、多様な選択肢から最適解を見つけ出す知識、時として執念も必要です。

業界特化のSaaSで大切なのは、その業界の課題をどれだけ深く入り込んで改善できるかどうかです。表面的にすぐに解決できそうな課題ではなく、誰もが無理と諦めている課題に正面から突入し、科学的に事象を分析して最適なテクノロジーで解決をする。解決する課題が大きければ大きいほど、その評価として対価を頂戴できる。そして、次の課題に取り組んでいく事で自然とサービスの範囲が広がる、そのサイクルが大事だと思っています。

そしてTHIRDでは、経営コンサルティング+コンストラクションマネジメント+IT・AI(管理ロイド開発)の3つの強みがあるからこそ、業界の深い課題に向かい合えたと考えています。
持っていたノウハウが経営コンサルティングのみだったら、分離発注のプロジェクトを請け負うこともなく、紙ベースでの業務の負担に気が付くことはなかったでしょう。コンストラクションマネジメントの観点しか持たなければ、経営改善のフェーズまで現場課題を昇華させなかったかもしれません。ITのバックグラウンドがなければ、他業界を見渡してもいまの現場課題を解決する最適解をすぐに見つけ出せず、もっと時間を要したと思います。

明確なゴールを見据えたキャリアではありませんでしたが、すべてが繋がり今取り組むべき課題にたどり着いたことに、大きく使命を感じています。

管理ロイドの今とこれから

管理ロイドの導入会社数は1,600社以上(2022年12月1日時点) 。PMFは完了し、お客様が急速に増えているフェーズです。爆速でプロダクトが広がっていく方程式が見えてきており、同時に不動産のあらゆる情報が管理ロイドの中に溜まり始めています。

建物は機械の塊です。照明が点灯するのは建物に受電する設備があるから、水道の蛇口から水が出るのはポンプがあるから、部屋の温度が快適なのは空調設備があるからです。大規模な施設ではこれらの機械が組み合わさって一つの有機的なシステムを構成しています。通常これらの仕組みは様々なメーカーの機械を組み合わせているのですが、各メーカーにはそれぞれの設備機器の点検記録/不具合記録/メンテナンス記録が残っていたりするものの、建物という切り口ですべての設備機器を横断でデータを蓄積している場所はあまりありません。今、管理ロイドには世の中にないデータが膨大に蓄積され始めています。こうした情報がたまると、蓄積されたデータを一般化し、さらなる課題解決のためのAI開発が行える土壌ができます

工事見積査定AIシステム「工事ロイド」への繋がり

私たちは最近、管理ロイドと連なるプロダクトとして開発中の「工事ロイド」のサービスサイトをリリースしました。

工事ロイド
https://lp.koji-roid.app/

「工事ロイド」は、AIによって工事見積の適正価格を算出することで、見積時間を最大80%削減、工事原価を平均20%削減させることができるクラウドシステムです。

機械は長く使っていると不具合を起こし壊れることがあります。壊れると応急処置を行って根本原因解決のための工事が発生します。この工事は5万円~50万円がボリュームゾーンなのですが、価格の精査が行き届かず相場と比較して高い金額で発注されることが多いです。不動産管理会社がオーナーに代わって工事を実施しており、実際に不具合が生じていることから急を要する対応が求められ、工事のためにコストについては二の次になってしまうのが原因と認識しています。こうした工事は額が少額であるがゆえに今誰も注目をしていない領域となっていますが、積み重なると膨大な金額になります。工事ロイドは、この大量にある少額工事に適正価格で発注支援する仕組みを構築することで、不動産管理における原価削減を実現します。

管理ロイドによる労働生産性の改善を通して建物の品質を担保し、工事ロイドを用いることで原価を下げ建物を所有するうえでの利益率を支える。また、それらをデジタル環境で遂行することで過去のデータも蓄積され、より高度な建物管理を行う基盤となる。
私たちは、建物を所有することの前提を変えることで、取引の仕組みまでも変えることを目指しているのです。

THIRDが今後成長していく上で必要な事

THIRDが次のステージに行くためには、①プロダクトリーダーシップ、②Go to Market必勝パターンの確立、③オペレーショナルエクセレンスの3つが大事だと思っています。

①プロダクトリーダーシップがあること

お客様に愛されるプロダクトであること。プロダクトが使いやすいでは十分ではなく、プロダクトがないと業務が回らない。プロダクトが大好きで、口コミで広めてしまうレベルまで定着していくことを目指すべきです。

② Go to Marketに必勝パターンがあること

いくらプロダクトが良くても、その購買体験において圧倒的な「アハ体験」がなければ、お客様の心には響きません。管理ロイドの営業やカスタマーサクセスのプロセス、MTGすべてのシチュエーションで感動を与えられていることが大切です。

③ オペレーショナルエクセレンスを達成できていること

営業、カスタマーサクセス、オンボーディング等、お客様に価値を届けるための社内オペレーションが最高レベルまで効率化されている状態。それがあれば、将来プロダクトがコモディティ化したとしても、提供品質/コスト/スピードの観点で他社を圧倒する会社をお客様は選びます。日々の仕事でお客様に価値を出しているか?その進め方は効率的か?自動化できないか?を自問自答し、お客様の満足度向上、価値提供の高度化をするために必要な投資は惜しみません。

最後に

私たちの取り組みを通して、この業界を変えていく、より良い状態に変えていくことは、日本経済はもちろん、社会に対しても大きなインパクトを持つと確信しています。ですが、私たちの現時点の到達点は、本来の目標に対して本当に僅かなもので、まだまだ強力な仲間が必要です。

既存事業を拡大することはもちろん、周辺領域に事業を広げる新しいプロダクトを作りにおいても、チャレンジの機会に溢れています。少しでも会社に興味を持っていただいたら、是非今後のキャリアの選択肢としてご検討ください。お待ちしています!


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