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How to make example sentences 1

NHKの番組にも出演していた有名な通訳の人が書かれた『英語はつながりで覚えよう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が例文盗用の疑いで書籍回収をし,改訂新版を年内に刊行することを決めたようです.ネット上を覗いてみましたが,著者の人は相当に批判を受けているようです.おそらく彼女にもう仕事はこないでしょう.ある意味批判は当然なのですが,正義の暴走による批判に耐えきれない著者が自殺でもしないことを祈ります(まあ,おそらくほとんどの人は「こんなことをする人がそんなことをするはずがない」と思うかもしれませんが,近しい人が自殺したという経験をもつと人の内面のことはわからないし,まずこれが浮かびます).

そういうわけで,ここで書きたいのは,著者を擁護することでも,批判することでもありません.そういうことは他の人に任せておきます.もっと大きな文脈から,例文とは何か,どうつくっているのか,どうつくられるべきなのか,ということについて自分なりの考え方を英語学習者に向けて書いておきたいと思います.

まず,例文というのは非常に大事です.英単語を辞書であれ,単語集であれ,見出し語(英語)と訳語(日本語)を丸暗記するだけで英語の勉強が終わりだと考える人はある程度英語ができる人のなかにはいないでしょう.使い方を確認するためには例は欠かせません.ネイティヴスピーカーや帰国子女のように体感的に英語を覚える人にとってでさえ(彼らは意識してはいないでしょうが),英語学習は自分独自の例文集を作ること・使いこなすことと云っても過言ではないと思えます.

すべての学習者のlearner autonomy(学習者が自分の学びに対して責任をもつこと)が極めて高ければ,市販のものであれ,生の英語素材であれ,自分に必要と思われるインプットをして,そこから自分がアウトプットとして「使いたいけれどもいまは使えないでいる」表現をストックして,繰り返し学習することをすれば,文字通り自分の例文集・辞書が可能になります.

でも,正直,それができる人は多くはありません.だから,そういう人のために覚えたほうがいい例文を集めたものが教材として売られています.ぼく個人はあまり好きな本ではないですが,いくつかの文を積極的に暗記する本があります.『基本英文700選』(駿台文庫)や『英語の構文150』(美誠社)などがあります.もう少しだけ新しいところでは『ドラゴン・イングリッシュ基本例文100』(講談社)というのがあります.他にもあるのでしょうが,それほど詳しくありません.

こういう純粋な(?)例文集を使わなくても,英語を理解するときも,発信するときも使い方を確認するために辞書の例文を見るという人はいるでしょう.さて,この辞書の例文というのはどうやって作られているのでしょうか.

例の通訳の先生をネットで批判している人たちはぼくとは違う若者なので,日本の英和辞典が定評ある英英辞典からの例文剽窃でケチをつけられてすぐに改訂版を出したとか,予備校の先生が突然,当時よく売れていた学習辞典の例文を批判する本を出して版元の老舗出版社が裁判に出て出版禁止にした,とかいうことを知りません.学習者にとって例文が大事であることはわかっているが故に,例文づくりはかなりグレイゾーンがあります.

さて,前置きが長くなりましたが,ここで英語教材を執筆するぼくが,加えて他の著者や辞書編集者がおそらくこうやって例文をつくっているということを明かすことにします.ズルいようですが,ここから有料記事にします.

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