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ロボマインドの記号接地

397.AIが持つ【世界モデル】は人間の心と何が違うのか? #ロボマインド・プロジェクト - YouTube

動作、動きというわけですから、時間軸が加わった認識を表象する世界モデルという理解でいいでしょうか?もっと言うと動詞の原型でしょうか?  
 これにプロパティをもつ名詞を加え、s+V+Oとなる文章言語を生成していく。LLMは感覚の記号接地をしていないだけで、マルチモーダル化するとそれも可能になりませんか?池上高志先生は、茂木健一郎先生との遣り取りの動画で、彼のオルタとGPTとの結合が人工意識を発生させるとだろうと言われていました。そうなると、記号接地と主観意識との関連も見えてきます。意識のクオリアが発生して記号接地も可能になる、ということでしょうか?  

 古代・中世の認識論では、古代のアリストテレスが「感覚は過たない」と言いました。感覚はある意味機械論的層での作用で印象impressioを受け、そこから感覚的抽象によって表象像phantasmaを形成する。今の理解なら各感覚器官が受けた情報を電子担体情報に変換するということでしょう。それを神経を経由して脳に伝達する。そこでの入力に対して反射レヴェルの出力は無意識層で展開する。実際、こうした情報の流れには、誤謬という者は発生しません。  
 認識に誤謬が生じるのは、感覚認識より上位の層である知性認識においてであるとされます。感覚認識が成立した際の表象像には未だ外界の事物からの質料性が、感覚の存在様態に従って残される。その表象像からさらに形相だけを抽象abstractするのが知性であり、知性はその能力が持つ存在様態に従って可知的形象specをesse in intellectu知性の内の存在esse in intellectuとなす。これで知性認識が完成したとされます。  
 先ずこうした論議の前提に、全てに渡る重要な基礎原理があります。「働きの様態は存在の様態に従うmodus operandus squitur modum essendum」とは、あらゆる存在の層で(純粋現実態である神から質料的事物まで)、その働きを在り方を理解するのに重要な原理です。現代のネーゲル『コウモリであるとは…』の論旨も、この原理上にあります。中世のトマス・アクィナスが、各存在のオーダーに従って問題を扱わねばならないとしたのも、ここからです(私の恩師、山田晶先生の『エッセ研究』の示すのもこのことです。)  
 長くなりましたが、こうした古代・中世の存在論を基礎にした認識論を参考にすると、無意識層と意識層、情報への接地の仕方と主観意識のクオリアというものが、上手く説明できる気がします。  
 
 感覚認識が成立した状態は、機械論的な接地が為され、反射反応などの出力もされていますが、無意識の状態にしかないと言えます。この情報の流れを俯瞰的に眺めるのが主観意識とされる作用で、ここで世界像・世界モデル・仮想世界が形成されるのではないか、ということになります。その時、その形成の仕方に誤謬が発生する可能性が生じます。誤った認識が成立し、主観意識に観られている内容が、外部の実像に合わない事態が発生するのです。いかがでしょうか?違うでしょうか?  
 このような例の考えられます。田方先生もCPUをよく例に使われますが、スマホやコンピュータの自動制御など、電子機器をブラックボックスであるとしますが、実際、こうしたものは、殆どの人が記号接地していないと思います。設計プログラムを理解など到底できません。私もかつてはレース仕様自動車作りをしましたが、ブラックボックス化のおかげで覚えた技術は役に立たない状態になってしまいました。昔のTVを叩いて直そうとする人がいましたが、接地理解をしていない証拠でした。現在ではスマホも自動車も、メリーゴーラウンド使用をしているだけといえます。  
 こうしてみると、記号接地問題は、トマスが言うようにオーダー、つまり記号の存在様態の層で判定する必要があると思います。感覚認識が成立する無意識層、知性認識とされる主観意識が構成する世界モデル・仮想世界の層、それぞれに地平グラウンドの層があるのではないかと思います。  LLMが記号接地していないという時、それにハルシネーションを発生している状態も例にあげられますが、主観意識も、子供やお年寄りに限らず同じことをやっていると思いますがどうでしょうか・・?感覚作用のオーダーでも、TVを叩いたりしていませんか?設置していたら誤謬はないはずではないでしょうか?認識の成否に接地を求めるのではなく、ただ、感覚諸器官をマルチモーダルに持てば、人間と同じ様になるのではないかと思います。  
 ただ、田方先生の実験は、身体感覚次元迄降ろさず、VR地平というAIと人間の間の距離にある層で為されますので、いっそう賢く早い検証ができると思います!


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