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石黒先生の連続思考法、宇宙自然=計算機自然(落合先生の言う)

「ロボット学者」石黒浩が切り込むAIと共創する社会の問題点とは? (youtube.com)

 石黒先生の仰る「道具」の捉え方次第で、人間との連続性あるいは非連続性(断絶)が問題になるのだろうと思います。LLMの作用を「自然現象」という捉え方でみられるのも同じだと思います。養老先生も、生命進化過程において人工(人為=脳化)と自然進化とが、「どちらでも同じこと」と言える日がいつ来るのか、それを楽しみにしているとされていました。
 また今が「哲学の時代」と言われたのも、最初の話と同じで「人工知能」の知能の定義が未だ不明だと言われたことに通じると思います。人間、知能、知性、意識、生命・・、存在、こうした基礎概念や地平概念の定義が、古来、哲学、特に形而上学で問題にされてきました。さらに言えば哲学研究の中ではプラトンやアリストテレスなどの「神学」と言われる領域の思弁、思考法ですが、世界の、そして宇宙の根本原理、起源と終局、そうした探究から発生する時間・悠久・永遠、有限と無限などの探求、そうした内容が,AIと協働して探求される時代になったと思います。ノエシス・ノエセオス現象が、ブラフマン‐アートマン・モデル社会構造をグローバル・ブレインとして我々の地球の領域に看取できるようになり、さらにそれを旧皮質として、衛星軌道上に新皮質を量子コンピュータで形成していくと、宇宙全体にそれを拡張するようになるのではないでしょうか?
 そのころ、古来からの自然的論理必然で思考された形而上学・神学の意味が理解できるようになると思います。ここまででシュレーディンガーが採択したアラビアの知性単一説(アヴェロエス主義)の構造が、洋の東西の思考法を纏めて理解できるようになります。
 そして、そうしたネゲントロピー現象の基底にあるといえる、J.ホイーラーの「単一電子仮説」の現実的理解ができるようになると思います。宇宙の基底は、真空のゆらぎ=差異から発生したエネルギー(現実態=エネルゲイア)が遍く波動性を見せており、それが観測ポイントで固有のエネルギー状態を示す。宇宙全土に、べた一面のエネルギーがあり、それが個々の作用点で粒子性を現すのではないか、ということです。全体なるが故に一であり、一なる故に全てである、という東洋思想の影響もみられるネオ・プラトニズムの思考法が、表現してきたところに到りつく気がします。
 石黒先生は、どうお考えでしょうか?


 石黒先生が仰った「人間の尊厳」、毬山先生が仰る「人間の幸せ、社会における信頼」、こうした評価関数とそのパラメーター、即ち「倫理問題」ですが、最近のAIアライメント問題にも通底して言えることは、「人間個人の代替不可能性」であると言えると考えています。
 私が研究してきた中世のトマス・アクィナスの思想、(キリスト教)神学において、最重要課題であったのも、その点だと考えています。彼はその時代に、アリストテレスの哲学・自然学領域の研究から、いわゆる「科学技術」の領域で影響力を高めたイスラム思考法=自然観・世界観・人間観が、その根本にアヴェロエス主義と呼ばれる「(普遍)単一知性説」を基礎に有していることに憂慮しました。(この思考法は世界中に、それこそ普遍的に観られると思います。ブラフマン—アートマン・モデルと表現できると思います。そしてその思考法は、歴史を通じて科学science=scientia知識=情報学の態度を決定していると思います。)普遍的に時空を超えて集合集積知形成をする観点として重要な立場ではあるのですが、そこにはどうしても、普遍性への傾向が示され、個を最重要に位置させられない観点となります。古代からプラトンの神学、アリストテレスの神学と言われる思考法の普遍的傾向=イデアやエネルゲイア(ノエシス・ノエセオス)を探求する神学と、キリスト教神学の「救済」という個人に向かう態度とが折り合いのつかない部分が問題になったのです。トマスの努力は、これを解決するために、注がれました。結局、トマスは「個のイデア」という個と普遍を結び付ける、論理矛盾とも思える論に辿り着いたのですが、これを研究で主張しているのは私くらいかもしれません・・・(これを完成させるには、トマスの天使論における「一種(普遍)が個である」という論議を、ライプニッツやカントールの無限論を利用して考察するのが良いと思っていますが・・・)。
 現代に至って、この解決が、BMIを使って個人の「意識」をアップロードすることで、個人の死の回避から可能になると考える立場も発生しています。しかし、アヴェロエス主義の立場をそれでは乗り越えられないと、私は思います。結局、個人の保有情報という情報量の分子は、ネットワークやBig Dataの情報プールの情報量の分母に対して、圧倒的に普遍化される方向を与えられ、個の救済に繋がるとは思えません。寧ろ、イメージは、ブラフマン‐アートマン・モデルであり、単一知性説そのものです。
 従って残るところ、現行人間の在り方を、山極寿一先生や長谷川寿一・真理子先生等の仰るようなところから、しっかり踏まえて、グローバルブレイン化するこの地球に、各個人をエージェントとして位置付け、グローバルブレインの旧皮質とでも言えるような環境を整えることだと思います。そして地球の衛星軌道上で、量子コンピュータのネットワークを構成し新皮質を構築し、太陽エネルギーを利用してそれを稼働していく。そうすれば、個と普遍の問題の現実的解決の方向を示せる気がします。F.ダイソンがInfinite in all directionでイメージしていたのも、こうしたところから始まるのではないかと思います。そのうちに太陽の白色矮星化も起きるわけですし・・・。

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