Eiji Kano

国家公務員、ITコンサル、メーカー勤務を経て、現在は行政系シンクタンク研究員。 セカン…

Eiji Kano

国家公務員、ITコンサル、メーカー勤務を経て、現在は行政系シンクタンク研究員。 セカンドワークとして、デジタル技術やデータ活用に関する記事の寄稿、研修やセミナーの講師、アドバイザリなどを行っています。ITストラテジスト、PMP、スクラムマスター、Ph.D.。一男一女四猫の父。

最近の記事

自治体におけるDX推進人材育成のための研修方法

自治体のDXへの要請が高まる中、いかにして改革に向けた庁内の気運を高め、リーダー人材を育成するかが喫緊の課題となりつつある。 しかしながら、現状ではそのための人材育成の体系は確立していない。本稿では、これまで筆者が数千人の自治体職員に研修を行う中で形作られてきた研修体系を紹介し、自治体のDX研修の企画に悩む担当者の一助としたい。 1.はじめに~新たな研修体系の必要性 コロナ禍を契機として、自治体では既存の業務やサービスを、デジタルを前提に抜本的に見直そうとする、いわゆるDX

    • 自治体のキャッシュレス化はどう進むか~キャッシュレス決済の基本から現実の課題まで~

      数年前、大がかりなポイント還元キャンペーンで話題となったキャッシュレス決済。いまその普及の波が、一足遅れて自治体にも押し寄せつつある。特に、コロナ禍を契機として「デジタルトランスフォーメーション」が一種のブームになるにつれ、にわかに注目度が高まっている。しかし、実際の導入にあたっては、様々なハードル、課題が待ち受けている。 本稿では、そもそもキャッシュレス決済は、消費者・店舗・社会全体にとってどんな意義があり、何をもたらすものなのかを整理し、その上で、その変化に対し、自治体は

      • デジタルサービスはアジャイル型開発でなければならない理由~一番簡単なアジャイルの話~

        IT業界にかかわったことのある方なら、一度はアジャイル型開発という言葉を聞いたことがあるだろう。それもかなり昔にだ。最近、デジタルトランスフォーメーションへの関心が高まるにつれて、ふたたびアジャイル型開発が脚光を浴びるようになっている。なぜ今、アジャイル型開発なのか。アジャイル型開発でなければならないのか。 1.アジャイル型開発で何ができるのか 昨年のコロナ禍以降、官も民もこぞってデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げるようになった。そして、DXによってデジタルサー

        • 地域課題解決のためのドローン~実際どこまで実用化されているのか

          ドローンが登場して既に20年が経つ。かつてはラジコンと同類の玩具として捉えられていたドローンも徐々に市民権を獲得し、今や地域課題解決の切り札と目されるようになった。応用範囲も大きく広がっており、農業(農薬散布等)、物流(離島等への物資搬送)、測量(地形のマッピング等)、建設(インフラ点検等)、警備(不審者の追跡等)、観測(上空気象観測)、エンターテインメント(ドローンショー等)、軍事(ドローンの撃退等)など多岐にわたる。しかし、実際の活用レベルは、その用途によって、既に実用化

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        • デジタルサービスはアジャイル型開発でなければならない理由~一番簡単なアジャイルの話~

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          インクルーシブな行政サービスのための多言語翻訳AI

           コロナウイルス禍によって、外国人訪日者は途絶えた。その減少率は、前年比▲97.7%(12月ベース)という途方もない数字だ。  その一方で、最近、多くの自治体が外国人向けの多言語サービスを強化している。これはどういうトレンドなのか。多言語サービスを支える機械翻訳技術がもたらす意義と限界を明らかにしつつ、今後の多元化社会、そして外国語との向き合い方を考えてみたい。 1.ソーシャルインクルージョンと翻訳AI コロナウイルス禍によって、昨年度3,000万人を超えた外国人旅行者はほ

          インクルーシブな行政サービスのための多言語翻訳AI

          インフラ保守デジタル化の最前線~道路舗装の点検・診断業務へのAI/IoT実装

          本記事では、我々が日常使用している道路のメンテナンスに、どのようにAI/IoT等のデジタル技術が実装されつつあるかを解説する。道路の維持管理は、地方の自治体では財源不足に伴って深刻な負担となりつつあり、現状のまま手を打たなければ、いずれ保守が行き届かなくなってくる。その打開策の一つとして、道路の点検・診断にスマートフォンやドライブレコーダーなどの安価な機材と画像解析AIなどのデジタル技術を組み合わせたシステムを導入することで、業務の効率化やコスト削減を図る取組みが各地で進めら

          インフラ保守デジタル化の最前線~道路舗装の点検・診断業務へのAI/IoT実装

          地域課題解決への住民参画をしくみ化するスマートシティの基本機能:市民通報システム

          本稿では、最近自治体で導入が拡がっている市民通報システム(道路の損傷や街灯切れなどの街の問題を、アプリを通じて行政に通報するしくみ)について、そもそも導入にどんな意義や効果があるのか、サービスとしてどんなバリエーションがあるのかを実際のサービスや自治体での導入事例に基づいて整理します。また、導入前には見えにくい導入・運用上の課題も、市民通報データの分析結果を織り交ぜつつ解説します。 市民通報システムの導入や利用に関心を持つ方が必要な個所を参照し、実務的な参考としていただくこと

          地域課題解決への住民参画をしくみ化するスマートシティの基本機能:市民通報システム

          オンライン化で対面の「本人確認」はなくなるか―eKYCの基本と本質―

          行政・企業に広がる「本人確認オンライン化」の波 コロナウイルス感染症拡大の収束の見通しが立たない中、ビジネスの在り方も、オフライン/リアルからオンラインへの移行が着実に進んでいる。 ・会議 ・講演・セミナー ・契約・発注 ・決裁(脱ハンコ) 等々、いずれも従来、日本では真剣に取り組まれることがなかった課題である。これに対し、今回のコロナ危機以前から既に、企業や行政で取り組みが進んでいた領域がある。その一つが「本人確認」のオンライン化、いわゆるe-KYC(Know Your C

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          ウェブ会議システムが変える対面とオフィスの意味

          ウェブ会議システムはコミュニケーションを拡張する今回のコロナ危機を通じて明らかになった事実の一つが、ウェブ会議システムを日常使いすれば、ほとんどのコミュニケーションは代替できてしまうということである。ウェブ会議システムは歴史は古く、最先端の技術とはいえない。多くの人は遠隔地との会議システム程度の印象しか持っていない。しかし、実際に使っている人はほとんどのミーティングは、ウェブ会議で問題なく代替できることを知っており、当たり前のように使いこなしている。我々はウェブ会議上で集まっ

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          デジタル時代の業務改革のマインドセット~業務をデジタル化するために業務から離れる

          これは現在のコロナ危機が始まる前からのトレンドだが、ここ1、2年で業務・サービスのデジタル化に着手する省庁や自治体が増えてきている。先日ある自治体から、これから業務のデジタル化の方針を立てるのでアドバイスがほしいとの相談があった。主に、デジタル化のビジョンとアプローチを定め、具体的なアクションやスケジュールを含めた計画を定めたいとのこと。その業務をコンサルタントに委託したいので業務仕様書をレビューしてほしいというものだった。見せてもらった仕様書は非常に良くできていた。過不足な

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