元ロシア語学習者で現パレスチナ料理研究をしているわたし、先日交番で自転車が盗まれた相談にしに行って執拗に職業を聞かれ説明させられた。
そして、度々こう語られる。

わたしの特徴について

パワフルおじさんこと、池松さんはこう語る。

ミサイルとAK47をかいくぐってきた人。

かいくぐったのかどうか・・・なんとも言えないが、わたしは逃げ足は速い、とびきり速い、そう誰よりも。

これを薄情と取るか、小心者と取るか、または強い生命力と取るかはあなた次第！

あの時もそうだった。

わたしはヘブロンのあの活気、スーク（市場）を歩けばひっきりなしに声をかけ売りつけてくる大阪商人のような感じが好きだ。実際には大阪商人を知らないけど。

ヘブロンにはもう何度も来ていて、この日は既知のアイマンが民泊を始めたというので見に行った。H１を超えてH２へ。それはもうひっそりしている場所ある種の不気味さも感じられる場所を通り抜ける。

入植地を通り抜けるのだ。

すると急にアラブの街が現れる。道路もガタガタになる。砂埃の道路の右に小さな通路がある。その緩やかな坂の下にアイマンの自宅がある。到着時間を告げていたのに不在のアイマン、さすがアラブ時間。インシャアッラー！

アイマンのお母さんがわたしにけたたましくアラビア語で話しかける。わたしが英語で返答しても

アイワ（Yes!!)

としか答えてくれないので会話にはならないがとにかく一緒にランチを食べようというのは理解した。

床に敷物敷いていっぱいに広げられた食べ物、そしてパン。パンがスプーン、フォークがわりにちぎっては何かをつけ、掬い、または挟んで食べた。

ん？？これ何？もしかしてレバー？

わたしは給食以来レバーが好きじゃない。でも何これ初体験な感じ。レバーの歯触りだけど何だか違う。でもレバー。何とも言えない味。悪くない。

ねえ、ママ、これってどうやって作るの？

わたしの拙いアラビア語は作り方教えてがお代わりに聞こえたみたい。

どんどん食べなさい（意訳）

そう言ってアイマンのママはわたしのお皿にてんこ盛りにレバーの炒めたのを乗せてくれる。

これは強行突破しかない。わたしはおもむろに席を立ち、キッチンに向かって鍋を覗く。

レバーに玉ねぎに・・・あとは何？黒胡椒の風味も感じたけど。このソースよ。一体何なの？知ってるような。

舌の記憶を呼び起こそうとする。

五月蝿いね。外見てごらん。

ママが窓の方に目をやる。

空にゴーー、ゴーーと戦闘機が飛ぶ音がする。かなりの低空飛行だ。福岡も空港が近いので飛行機の音には慣れているけれど空港のないヘブロンでこの音、かなり恐怖を覚える。

今スークのところで催涙弾飛んでるって。近所の人からメッセージが届いたわ。いつものことだから大したことないと思うけど、気をつけてね。

身振り手振りを使ってGoogle翻訳も使って知らせてくれた。

そうここは占領地なのだ。

家の中では日常があっても占領の中にある。わたしは催涙弾 VS 投石 をまだ見たことがない。できれば一度も見たくない。近所でそんなことがあっていたらわたしは一目散に逃げる。走って逃げる。

いい、催涙弾の攻撃が終わっても気を抜いたらダメよ。ガスが漂ってて目が痛くなるし咳が止まらないからね。
ゆっくりチャイでも飲んで行きなさい。泊まったっていいんだから。

現実とは裏腹にそこにはミントとセージの入った甘い甘いお茶が目の間にあった。

私たちは笑ってお茶を飲む。

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