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「起業の天才」既存秩序をハッキングする男ー江副浩正

話題の江副浩正伝、「起業の天才」を読みました。

 就職広告の会社からスタートしているのに、日本を代表するほどの時価総額に成長を続けていること、ユニクロやソフトバンクなど日本を代表する会社でも創業者以降の後継者問題に苦しんでいるのにリクルートはこの問題に無縁なこと、日本のインターネット産業を支えるほど人材を輩出することなど、「実は江副さんって、ソニーの盛田さんに匹敵するんじゃね?」と思っていました。

読んでみて、期待にたがわず、ドラマチックで非常に面白い本でした。感想色々。

・江副さんはやっぱ商売の天才。
 「就職広告だけの本を、無料で配ればええやん」とか
 「情報社会になるから、日米欧三極で常時稼働するコンピュータシェアリングサービスやろう」とか
 「コンピュータ使った地図検索サービスやろう」とか、
 ネットもなかった20世紀では一般人には想像もつかなかったことを構想して実行したのはすごい。今、こういう誇大妄想っぽいことを本気で実行する人というと、イーロンマスクみたいな感じだろうか。また、読売新聞のような巨大な競争相手が登場した時も、正面から勝負して叩き潰すような戦闘力も併せ持っているのがすごいと思った。

・人材の使い方が半端ない。高卒からリクルート一筋で、なんのリゾートや宿泊施設運営の知識も経験もない20代の若者を、いきなり大型リゾートホテルの支配人にする下りが出てくる。こういう高い専門性やノウハウを要求される事業は、それなりのバックグラウンドを持った人を当てるのが普通だと思うんだけど、江副さんは、毎回新しい事業に優秀だが経験のない若者を当てて、ちゃんと立ち上げてしまうのはすごい。

・半面、江副さんは、「違法でなければ、既存の商習慣や倫理を崩すことに抵抗がない」という点で、ホリエモンと同じ匂いを感じました。特に日本社会はこういう既存秩序をハッキングするタイプの人を嫌うんですよね。正直僕も、ホリエモンが目立った時期は毛嫌いしていましたし、多分江副さんをリアルタイムでメディアを通して見てたら、嫌っていただろうなと思う(実際に会ったら、圧倒されると思うけど)。

・検察、メディアの「スケープゴート」作り。「金の饅頭を貢ぐ越後屋と悪代官」的な悪の構図が大好きな庶民向けに、メディアがその構図に当てはめた報道をし、検察がのっかって、スケープゴートを作る的な構造は昔から変わらないんだなと。リクルート事件が、厳密に違法なのかどうなのかはかなり微妙だというのは初めて知りました。これも、ライブドアに近い構造を感じました。

・とはいえ、後半は江副さんもかなりお金と権力に踊らされていたように見え、これほどの経営者でも、メンターが重要なんだとも思いました。
一言でいうと、江副さんのようなタイプは、シリコンバレーならもっと成功したかもなぁと思った。日本だと、既存の秩序をハックするタイプは、既得権益層だけでなく、大衆からも嫌われるからなぁ...

結局、僕も含めて日本人は、いかがわしさに対するアレルギーが強いんじゃないかなと。その辺りが米国や中国の起業家輩出量との本質的な違いだったりして。

とはいえ、大変偉大な人には変わりないと思います。仕事の傍らちょっと読みだしたら、止まりませんw

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