広島駅042物語

 広島駅042。この文言を聞いただけでマニアは、「あ、例の西POS券ね」となるだろう。

Fig.1 広島駅042発行入場券

 広島駅はJR西日本で2位の売上を持つ駅(※データで見るJR西日本2023 P.89)で、出札関係はMR-52N型のマルス端末を用いるが、1箇所だけチケットプリンタが接続されているPOS端末がある。それは、広島駅新幹線改札(ラッチ)内精算所(広島駅042窓口という)である。出札ではない。

Fig.2 広島駅新幹線改札内精算所遠景

 Fig.2は新幹線改札内から広島駅042窓口の精算所を撮影したものである。この場所に行っていただくとわかるが、「この場所で入場券を売る意味はあるのだろうか」と思うだろう。いや、そもそも「なぜチケットプリンタがついたPOS端末が設置されているのか」という疑問が湧くのではないだろうか。
 今回は過去に振り返り、その謎を解いてみようと思う。

広島駅橋上化前の構造から

 広島駅は2017年秋に橋上化が完成し、それ以前は自由通路は地下道のみであり、新幹線利用客が南口側(市内電車側)から乗車する場合は、南口改札で乗車券のみの改札を受け、陸橋(跨線橋)を渡り新幹線乗換改札へ赴いたが、このルートが「新幹線乗車のメインルート」であったと言っても差し支えないと思う。
 当時は北口は大体「新幹線口」と一般に言われていた。
 その当時ののりかえ改札窓口の写真と間取りをFig.3とFig.4に挙げる。

Fig.3 広島駅新幹線のりかえ改札・精算所(2007/1/19)
Fig.4 新幹線乗換窓口・改札・精算所配置図

 Fig.3はFig.4の在来線改札内と記したあたりから、精算窓口(202)~のりかえ窓口を撮影したものである。

 ここで、Fig.3の精算所の窓口(POS番号は202であった。チケプリはなくレシート精算券の取扱はあった)のガラスに「入場券発売」のテプラが片隅に写っているのがみえる。

Fig.5 入場券発売の札(2006/8/5)
ところで、係員氏の腕のあたりに見えるチケットプリンタは042のものである

 若干文字が消えかかっているが、このように精算所(202)において、入場券を発売していたのであった。
 しかし、POS番号202の端末(広島駅202窓口とする)はチケットプリンタを設置していなかったため、入場券については同一室内で対面の、新幹線改札内の精算所設置のPOS、「広島駅042」を使用して発売していた。

Fig.6 平成17年(2005年)当時の広島駅042発行入場券

 この当時は在来線の乗車券を持ち、入場券購入する場合はラッチ内窓口(マルス)にわざわざ並ばなくとも、比較的空いている精算窓口において入場券だけを発売するという正規案件であった。
 これが広島駅042窓口の入場券発売のルーツである。

 構造はFig.4に挙げたレイアウトとは異なっていたようだが(平成一桁あたりにFig.4の構造に変わったらしい)、この取り扱いはJR化前から行われていたようで、精算所に設備された入場券からも、当時から42番窓口であり、今に至るまで(Fig.1)精算所の窓口番号が変わっていないのも、一つの歴史と言えようか。

なぜ広島駅042窓口のPOS端末にチケットプリンタがついたのか

Fig.7 新岩国駅精算所 当然この精算所のPOS端末にチケプリは接続されていない

 しかし、JR西日本の管轄する山陽新幹線・北陸新幹線各駅のうち、新幹線精算所のPOS端末にチケットプリンタが設置されているのは、広島以外では金沢しかない。のりかえ旅客の多い岡山や、広島よりも大きな博多駅には存在しない。なぜ広島には設備されたのだろうか。
 理由は定かではないが、当時乗継割引が適用される急行券類の発売が現代ほど厳格でなかった頃(2006年頃から厳格になった)、新幹線で広島駅に到着した旅客が新幹線精算所に来て「急行みよし(ちどり・たいしゃく)の乗継割引適用の急行券」を求めたから、それに対応するためPOS端末にチケットプリンタつけた、という説が有力であるが、確たる話ではない。

現在の広島駅新幹線改札内精算所の配置とPOS端末の使用方法

 Fig.4は橋上化前の構造(とはいえ橋上化完成前も新幹線のりかえ改札は先行でレイアウトが変わっていた)であるが、現在の構造についてはFig.8に挙げる。

Fig.8 現在の広島駅新幹線のりかえ改札付近のレイアウト
(方角はFig.4と揃えており、大幅にレイアウトが変わったのがわかる)

 Fig.2は、券売機F71の前あたりから精算窓口を撮影したもので、広島駅042窓口が完全に新幹線改札内からしかアクセスできず、在来線改札内側から券が購入できなくなったのがわかるだろう。

 ここで、Fig.1のように広島駅042窓口で入場券を売る(売ってよい)理由はなんだろうか。
 実際はそのような理由は既になく、完全に「係員氏の好意とJR側の寛大な取扱による」趣味発券であることは間違いない。ありがたいことである。
 実際に入場券を「正規案件」で購入するケースを考えてみよう。

  • 入場券を購入し新幹線改札内に滞在したが、有効期限の2時間が切れそうになり追加で購入する

  • 入場券として使用できない乗車券類(※)で広島駅に到着し、在来線改札内に立ち寄りたい申告を行った

ぐらいだろうか?おそらくそのような旅客はほぼいないだろう。

注※そもそも乗車券類は入場する目的で使用できないが、乗車券が広島駅が有効の場合、乗換改札から在来線改札内を通過して中央改札から出場ができる

Fig.9 広島駅042で発行された別途乗車用の乗車券
(このときは宮島への連絡乗車券を持ち小屋浦まで別途乗車を申告した)

 ただ、広島駅が経路に含まれない乗車券(例えば、海田市経由の呉方面ゆき)の乗車券を所持する旅客が山陽線で岩国方へ乗車したい申告をすれば、広島駅042で海田市発の乗車券を発行していただけることもあるだろう。
 また、他には再収受(紛失再)や、区変(打切り計算)の代用等が考えられる。
 入場券を発売する意味はなくなったが、チケットプリンタはそれなりに使用しているのかもしれない。

まとめ

●広島駅042窓口で入場券が発売される理由
→過去の入場券発売が影響?大半は係員氏の好意
●広島駅042窓口にチケプリがついた理由
→急行みよし号の乗継割引急行券発売のため?
●広島駅042窓口で正規案件はあるか?
→再収受・区変(打切り)の代用・別途乗車用

 ところで、過日広島駅の精算所付近にいたところ、小動物を持ち込む旅客がこの広島駅042窓口にて手回り品を購入されているところに出くわした。おそらくであるが、広島駅202と思われる新幹線改札口では現金を取り扱わなくなった模様で、新幹線改札で手回り品を持ち乗車する場合は広島駅042窓口に案内されるようだ。
 もしかしたら、新幹線のりかえ改札口でも同様かもしれず、現金取扱窓口は集約化されているのかもしれない。

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