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PM2:30のエモい木陰

明日から夏休み。
終業式はなにして遊ぶか考えてたら早く終わった。
『さよなら!』
誰よりも大きな声で挨拶し、隣の席の友達と教室の扉を勢いよく開けた。
階段は5段飛ばし。骨が折れそうだ。
時刻は11時半 。家までの道を最短ルートで走る。
持ち帰り忘れた教科書と夏休みへの期待感でパンパンのランドセルでうまく走れない。
『12時半に俺ん家集合な!』
老人ホームの前を左に曲がる。
玄関前の階段を勢いをつけて、飛ばす。
玄関の鍵を開け、靴を脱ぎ捨て、ランドセルを階段に投げる。
手を適当に洗い、冷蔵庫を開けると置き手紙とともにそうめんが置いてあった。
めんどくさいから、そのままめんつゆを入れた。
引き出しから取った箸は、不揃いだったがもういい。急いでそうめんを啜った。
ほぼ飲んでいたようなもんで、すぐに食べ終わった。
11時50分だ。
急いで食べなくても、全然時間あったな、、
止まらない期待感が、体を逸らせていた。
夏休みの魔力だ。
食器を洗っていたら、インターフォンがなった。
『きたよー』
あいつが画面越しでおにぎりを食ってるのが見えた。
考えてることは同じだった。あいつも早く遊びたいんだ。食器をおいて、蛍光のクロックスで外に飛び出した。
『なにするー?』
口に含みながら話しかけてきた。
『公園行けば、誰かいるでしょ』
『桜公園?』
『うん』
しばらく会わない小学校の前を通り過ぎ、坂道を下った。公園の入口では、緑の葉がざわざわと揺れている。入り口から見える大きな滑り台の上では、好きなあの子と同じクラスの女子たちが昼ごはんを食べていた。
『うわ、取られてるぅ』
『あれはずるいな』
こんなこと言ったがあの子なら全然許せる。
そんなことで僕たちは広場で遊ぶことにした。
持ってきていたサッカーボールを出し、激しく刺す太陽に向かって蹴った。
『よっし、ワンバンしよーぜ』
そこから俺たちは、時間を忘れて熱中した。
『なぁ、川崎いかね』
『そうね、猫撫でに行くか』
川崎商店という野良猫がたくさんいる駄菓子屋には、小学生がたくさん集まる。そこでラムネを買うのも俺たちの定番だ。いつものように、店先の猫たちと戯れていると店のおじさんが出てきた。
『ラムネいるかい』
『2本ください』
『200万円ね』
急いで200円を払い、店先でラムネを流し込んだ。乾いた喉に、キンキンのラムネが痛いほど弾けた。
『あー、一生飲める』
『しかも、明日も明後日も休みってのが最高すぎる』
そんな会話をしてると、すでにラムネはなくなっている。
時刻は、午後2時
『こっからどうする?』
『もうワンバン飽きたしな』
『一旦、家の方行くか』
『おっけー』
来た道とは違う道で、家までの道を歩く。
『涼しいな』
『最高』
田んぼ沿いに木陰が続いている。
『なんか切なくね』
『何言ってんのおまえ笑』
さっきまでの熱は冷めて、なんか切なげに感じた。
『終わってほしくないなぁ』


小学5年。夏。PM2:30の物語。

あとがき

ありがとうございました。

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