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ダイナゼノンはグリッドマンの正統な血を受け継ぐのか?

※本レビューはネタバレ、特にアニメSSSS.GRIDMANに関してネタバレを含みます。

以前、アニメ「SSSS.グリッドマン」が、単に実写「電光超人グリッドマン」からグリッドマンという巨大化ヒーローを借りただけの続編ではなく、メタ的な観点から正統な続編であることについて語りましたが、今回は2021年4月より放映を開始した「SSSS.ダイナゼノン」についてもグリッドマンの正統な続編であると言えるかについて書いてみたいと思います。

そもそも原点と言える実写版のグリッドマンは、人々の暮らしを脅かす原因となる怪獣を倒すためインターネットを介して主人公が仮想世界に飛び込みグリッドマンと一体化し、そこにいる怪獣を倒すという内容です。前回アニメ化されたSSSS.グリッドマンは、日常に突如怪獣が現れ、主人公はグリッドマンと一体化し戦うという内容でした。後者には仮想世界という概念はなく、怪獣に殺された人は存在が消され、怪獣が存在しなかった翌日へ帰還するという話で、表面だけ観ると、主人公がグリッドマンと合体することを除けばほとんど違う話のように見えてしまいます。しかし、実写版も前作のアニメも二つの世界を股にかけるヒーローとして話の構造を見てみると非常によく似ているのです。
「【A】の世界に住む主人公が平和を守るため【B】の世界に行き、怪獣と戦う」という点においては、両者とも同じであり、前作のアニメ・SSSSグリッドマンはグリッドマンという名を冠するにふさわしいグリッドマンらしい展開であり、まさに正統な続編であったと言えるでしょう。
類似点についてまとめると以下の通りです。ネタバレになってしまいますが、SSSS.GRIDMANでは現実世界と並行世界を行き来する作品に見えたものの、結局は現実世界と仮想世界を行き来していたという落ちがついているあたりも秀逸です。

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詳細はこちら(【ネタバレあり】30代男性がなぜSSSS.GRIDMANにはまったのか?【アニメレビュー】)に記載。(要点は上記に既に記載済みなので特に見なくても問題なし。グリッドマンへの愛情が多め)

ダイナゼノンの話は現在終盤になっていますが、SSSS.GRIDMANの登場人物が現れるとともに実写版とのリンク(ガウマさんの正体)も見られ、間違いなくダイナゼノンはグリッドマンのシリーズの一つと言えるでしょう。一方、私が先に上げた表のような構造には当てはまっていません。ただ、そもそも、グリッドマンが二つの世界を行き来するヒーローなどと公式が言い出した訳ではないですし、さまざまなシリーズものはシリーズごとに異なるテーマを描くものです。これまでは特定少数の意思から生まれていた怪獣が、不特定多数の無意識から生まれる描写がなされたり、チームで戦う姿など、新しい挑戦をしており、何より登場人物すべてにフォーカスを丁寧に当てた群像的なスタイル、合体・分離を活かした戦など洗練されたロボット物で、私のメタ的な構造への想いなど、ささいなこだわりにしか感じないようになりました。しかし、10,11話みてるとメタ的にやっぱり話の構成は過去作品を意識しているんではないか、という気がしてきました。そう、冒頭で私がのべた「二つの世界」という構造は「問題」の定義を変えることで、やはり守られているのではないか、と思うようになったのです。

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それが上の図です。これまでは怪獣による被害を軸に二つの世界を見てきたのですが、個人の事情、姉の死、ひきこもりといった部分を問題にすれば、今作は「現代」と「過去」が二つの世界であり、他の作品に存在する二つの世界と役割の組み合わせが一致します(色分けをしてみました)。
ダイナゼノンにおいて問題=過去のトラウマと直接的に向き合ったのは第10話で飛ばされた過去の世界であり、それぞれが原因に向き合って(戦った)結果、11話の現代では問題が解消したように見えます。(暦の就活や夢芽の墓参り)今回は、5000年前の因縁もあらわているのでやはり、「二つの世界」というメタ的な構造は「現代」と「過去」を意識して今作も受け継がれていたのではないかと思います。このように考えるとダイナゼノンは、単にグリッドマンの世界観や看板を借りただけでなく、話の作り方までを意識したグリッドマンらしさを追求した正統なシリーズと言えるでしょう。
今は、蓬君の怪獣使いとしての力や、夢芽の偶然とは思えないあのリンクなど、謎めいた伏線により、この表をひっくり返すような展開が待ち受けていそうな最終回を楽しみに待ちたいと思います。

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