~助手席には指導者(メンター)を乗せましょう~ 第5回 企業内起業家(イントレプレナー)育成方法

社内で新規事業を生み出す人材を育成に従事し、新規事業の実行者である提案者や、その活動を監督する管理者の新規創出活動を支援する立場にある推進者に向けた起業家育成方法について引き続き語りたいと思います。
マガジンはこちら https://note.mu/tigeredfox/m/m63ca5f539be8

前回の第4回では、基本的な知識をインプットした後に、それらを定着させるための演習を行う段階で起こる問題点について記載しました。この項はその次にあたる以下の「4.有識者付き実践期間」について記載します。十分に「2.座学期間」「3.演習期間」を繰り返した後の段階です。経験を実際の新規事業化業務に応用する段階です。

教育イメージ04

ある程度知識が頭に入り、体に染み込むようになり、いざ実践となると、管理者にも提案者にも勘違いする人が現れます。今回はそのタイプを紹介していきましょう。

すぐに自社でどうにかしようとする管理者
自分でどうにかしようとする提案者
応用できない提案者

この三者です。

すぐに自社でどうにかしようとする管理者

「2.座学期間」や「3.演習期間」では時には社外有識者も使いながらもある程度その知識が習得できたと思うと、そういった人を締め出し自社メンバーだけで何とかさせようとする管理者がいます。以前も書きましたが、自動車教習所で仮免を取ったからと言って一人で街中を走ることが出来るでしょうか?否、そんな人はいません。隣に教官を乗せて走るのが普通です。だから基本的な作法を覚えたからと言っても、単独で動くのは難しいです。カリキュラムに対して達成度を比較しながら学んで経験を積んできた今までとは違い、自身の状態を見てもらいながらフィードバックを得る必要があるのです。にもかかわらず、いくつかのテクニックを学べばどうにかなると思っている管理者は危険です。きっちり有識者、メンターをつけるように説得しましょう。またこの手の管理者の特徴としては、活動の先行者に過去の活動をまとめるように指示をし、過去の行動を再生しやすくしようとする習性もあります。しかし、これも無駄です。成功していない限り、事業化していない限りその行動をプロセスにしても意味はありません。

自分でどうにかしようとする提案者

これは今紹介した管理者の提案者版。自動車教習で例えるなら仮免を取った後に、教官を乗せずに街中を走りだすタイプです。車は走らせることはできるし、道も曲がれるし、信号も守れますが、それまでです。一人でただ走るだけで卒業試験に受かることが出来るでしょうか?
社内にこだわらず有識者を見つけてアドバイスをもらいながらすすめましょう。有識者とは指導対象者より経験があればそれでいいと思います。実績があればよいですが、なかなか実績を出すことは難しいです。実績がない人物の言うことを聞くのも確かに危険なのですが、実績がないからといって経験者の言葉を聞かないというのもおかしいです。事業化とは高校野球に例えれば、甲子園で優勝するようなものだ、と言いましたが、優勝したチームの監督でなくとも地方大会を勝ち残って甲子園に出たり、甲子園の一回戦を勝ち残ったり、甲子園に出ていなくても地方大会の決勝に駒を進めたような監督からもらうアドバイスは十分大切だったりします。あまり他人に頼りすぎるのもの問題ですが、他人から得られることも多いので絶対に一人でどうにかしようとは思わないようにしましょう。

応用できない提案者

これはいざ今までの知識を実践しようと実際にケースに当てはめようとする場面で、対応できなくなるパターンの人です。自動車教習所に例えれば、仮免を取って路上に出た瞬間に、いつもの教習所のコースと違うので全く動けなくなってしまうタイプです。自動車教習所の仮免は外でも通用すると判断されてもらうものなので、そんな人はいないかもしれませんが、新規事業に向けた取り組みではよくあります。計画からずれた時に修正ができないタイプです。残念ながら、非常にセンスがない人物と言わざるを得ないでしょう。例えば、極端な例になってしまいますが、実習では、商品の色を決めるために1000人にアンケートをとって決めていたのですが、実際に商品に色を決めるために本当にアンケートやってみると995人しか意見を集めることが出来ず、あと5人足らないがために判断ができなくなってしまう、というような状態です。ここで大事なのは多くの人数から意見を聞き、分析し、方向性を明確にすることであって、アンケートの相手が、995人だろうが1000人だろうかは大した違いではありません。しかし、アンケートの本質的な部分が見えておらず、単に機械的に1000人に聞いて分析したら答えが出る、なんて思っていると5人足らないことで、失敗したと思い込んでしまうのです。

既存事業にどっぷりつかってきて、計画を実行し、結果と計画の差分の理由を解明し、改善していくというプロセスになれた人は特に陥りやすい状態です。新規事業のような取り組みの中では、そもそも実行する前に立てた計画なんて当てにならないのですから、律儀にそれを守るのもおかしな話です。自分が正しいと思えるかどうか、それで他の人を説得できるかどうかで行動を決めていきましょう。

以上の3名がこのフェイズでうまく先に進まなくなるタイプです。最初の二人はきっちり取り除くようにしましょう。最後の一人は、これまで通りなら無視と言ってしまいたいところですが、思い込みや会社の仕組みの中でそうなっているだけで、実はおかしいと感じている人もいるので多少は粘り強く指導してみてください。

さて、これで教育に関して4つの期間の説明を終えました。この期間で推奨する指導員を含む練習を繰り返し、自分自身で動けるようになれば、その対象はひとまず卒業です。この期間の図として、以下の図を用意しましたが、

教育イメージ00

実際は下の右の図だと思っています。

教育イメージ本来

細かいカリキュラムについて今まであまり説明しなかったのはそこです。知識も意見も最低限必要な部分はあり、ないと軌道に乗るのが難しくなりますが、成功に対してはかなり比重が低いのです。事業化を高校野球に例えるのであれば甲子園優勝であり、自動車免許に例えるのであればF1のレースやパリダカで優勝するようなものなのです。
ただ、野球をする第一歩が、独学なのか?野球未経験者の読書家に習うのか?それとも甲子園出場経験チームの指導者に習うのか?は全然違いますので、教育する立場としては、自身の役割の大きさを自覚し、真摯に取り組むことを願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?