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未だに蔓延している売上拡大主義経営

日本の中小企業の数は99.7%で、この中の約8割は赤字となっています。「景気や業界などの外部環境が悪い。」とか「人が足りない。」「ヒット商品を出せない。」など様々な要因を経営不振の理由に挙げる経営者が少なくありません。

なぜ経営不振に陥ってしまうかと言えば、答えは簡単で利益が出ないからです。このことは、社長であれば誰でも理解できることです。最も注視しなくてはいけないことは粗利益額と粗利益率です。粗利益総額が固定費を上回らなければ最終利益は残りません。よって粗利益は経営の血肉であり企業の生命線となります。

ところが、「売上さえ増やせば自然と経営は上向く。」「とにかく売上を増やせ。」と口癖のようにハッパをかける社長が大半です。経営指針書(経営計画書)の中を見ると前年対比10%アップの積上げ式の売上計画(目標)が書かれています。これを売上拡大主義の経営と言います。果たして、この前年対比の売上目標は毎年達成できるでしょうか。根拠がないので達成することが不思議と言わざるを得ません。売上と利益の相関関係ははいのです。

社員は、日常的に「とにかく売上を増やせ。」と言われますので、売上をつくるために利益を軽んじて安売りをしたり、遠くのお客であっても、仕事であれば何でもやりますとばかりに活動してしまいます。更には、価格は下げて販売数量を増やすという考えの社長が大半です。数量が増えれば手数が増えるので固定費が連動して上がっていき益々、最終利益は残るどころか売上は上がったが赤字となっているのが中小企業の実態なのです。

それでも5年間で「売上が3億円から5億円になった。」と誇らしげに口にする社長がいます。売上が多いほど会社の規模が大きく見られ、周りから「すごい。」と言われたりするのでスケール拡大の経営を求める社長が後を絶たないのです。

冷静に考えてみれば、売上拡大主義が歪んだ経営方針であることは明白です。なぜなら、企業が存続していくには売上ではなく利益であるからです。利益がなければ経営は成り立ちません。

銀行が企業を見た際の倒産原因の1位は、経営者の知識不足となっています。知識とは経営の根幹である経営戦略を指しますが、知らないから売上を伸ばすことに傾注してしまうのです。

売上は減っても心配する必要はなく、粗利益がどうなっているかだけに注視していけば良いのです。収益に関する社内の会議においても同様です。どのように粗利益を増やしていくかは、知恵の勝負となる社長の戦略実力にかかっています。

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