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読んだ本の記録2020《BL小説》

今年読んだ本を、読んだ順に記録していきます。
こちらの記事ではBL小説のみ。

BLコミックスはこちら。

非BLのものは全てこちら。


一定以上オススメ、と思えたもののみ選んでいるのですが、膨大かもしれません。(20200924更新)

1、砂原糖子『心を半分残したままでいる』

全3巻、完結済み。

記憶喪失モノの恋愛BL小説、なのだが、読み応えがミステリーやサスペンスのよう。めちゃくちゃおもしろい。タイム・リープものの様ですらある。しかし、読後感はしっかりと恋愛小説。
登場人物がみんな悪人ではなく、ただただそれぞれのままならなさとのっぴきならなさを抱えていた。しんどいが、好きだよ。


2、安西リカ『恋という字を読み解けば』

いろいろあったけど振り返れば何も起こってないハッピー仕様。しあわせで最高です。2話目の野望もハッピーで、ssの『ただいま』は特に好き。じんわりと芯からあたたまる。これはいい温泉。極楽湯です。
明言の形でセックスの合意形成することを「ムードない」する意見見るたび「一穂ミチさんのBL読んで?! 合意形成はセクシーにできる!」とこれまで思っていたのですが、この作品を読むと、ムードすらなくてもラブラブハッピーセックスはできる! と思えるようになる。
私はこの作品を読んだ後、安西リカさんは作家買いすることを決意しました。


3、安西リカ『運命の向こう側』

オメガバって突き詰めるともはやBLではないのでは、という趣になってくるのかもな。と感じた。
安西さんのオメガバは相互性がある。αは強いが、Ωがいないと社会的に「人として」の在り方すら保てないような。オメガバで釣り合いの取れる相互補完性を感じさせられるのはすごい、と思う。
アルファは自分のオメガを求めるが、オメガの方はそうでもない。オメガバと言えば、番になると「オメガはアルファに従属する」ような風潮が強くあり、子を産めばそのハンデも課せられ、となる。それであればオメガ、はまずは自分のキャリアを考えるし「別にアルファいらん」となる。当然の帰結。
しかしともあれ、結びの一文がすばらしい!!!! すごい! 文字通り完璧。諸々全部吹っ飛んで、完璧です。よくわかる。伝わってしまう。完璧!


4、安西リカ『オメガは運命に誓わない』

アルファとオメガの相互補完性に説得力を持たせる設定が、ほんとうにうまい。
安西リカさんの作品はさらりとして明るいが、フェアネスが強く意識されるのが素敵。最終的に同意のあったセックスの、しかし合意を形成するやりとりがなかったことについてとか、自分の持つ偏見に気付くのは難しいということとか。
良き話でした。2人とも可愛かった!!


5、安西リカ『バースデー』

「夏目イサクさんを読んでいたと思ったら羅川真里茂さんだった」みたいな作品。
主人公の「生活」のリアルがすごくて、凄い。「30分5000円」の料金がどうしても工面できず何度かカウンセリング受けるのをキャンセルした、という描写があって呻いた。その支払いはカウンセリングを受ける側にも必要なものなのだが、カウンセリングは必要な人ほど困窮しやすい現状もあり、あの金額の負担は重かったりする。辛い。
ともあれ、このテーマでこれだけの肌色シーンを一定以上の頻度で確保する技量すごい! となった。
また文章がとにかく読みやすく、ストーリーが安定しておもしろく信頼感が強い。
復讐の肯定と愛は両立する。代理復讐が正義の皿に乗せられておらずよかった。


6、一穂ミチ『 Tonight,The night』

一穂ミチさんの文章はいつもあまりにも滑らかで、数ページ読んだだけで「ずっと読んでいた」「この世界を知っている」感覚になる。この作品もそう。豊かな読書体感。
言語化することみなく、もしくが、しても(できても)誰かと共有することなく、できることなく埋もれさせてしまう理不尽や寂しさを、一穂さんはさらりと掬い上げてくれる。
言葉になるものとならないもの、しないこと、機微の表現が圧倒的である。
この作品、主人公たちは8歳さで、しかも相手(推定攻め)は小学6年生だった。こんな設定でも”読める”のは、ひとえに著者の倫理観への、高い信頼があるから。
「子どもの恋」であることを軽視せず、しかし相手が子どもであるという点からは逃げない。そして、子どもは成長する。
パーフェクトな物語。
歳を重ねて、日々を重ねて、彼がどんどん大きくなっていくことと2人の時間が強くなっていくこととが重なった。オススメ。


7、安西リカ『恋みたいな、愛みたいな』

同作者さん『好きで、好きで』の続編。
平和の象徴のような、土鍋と取皿。生姜をきかせた鴨肉のつみれは大変においしそう。
好きな人のしあわせに自分が寄与しているという実感が、いかに自分を強くするかということ。そして、好きな人を大切にするには、自分のことも大事にしたほうがいい、絶対的にいい、というのがよくわかるってきて、沁みる……。
沁みる。沁みるとしか言えない抜群の安心感、安定感、多幸感。しあわせだ……。
何の事件も起きていないのに泣いたし、少し息を詰めたし、めっちゃニヤニヤした。好き!!


8、木原音瀬『パラスティック・ソウル』、全4巻。

奇妙で、どことなく気味の悪いファンタジーの趣がある。人と犬とが混じった生き物が生きる世界で「犬を飼う」ことの不穏さ。……から始まって、その不穏さはそのまま、ぐおんぐおんに振り回された読書体験だった。
セックスは必須じゃないこと、「よかったねー」からの風邪ひいて耳キーーーンてなりそうな温度差、圧倒的絶望、肉体ではなく精神を殴られるタイプの木原音瀬さんだった。
BLにセックスは必須でないこと、「これはBLではないのでは?」という感触から、「最高のBL!!!!」となるまでの距離があまりに美味。ごちそうさまでした。


9、間之あまの『ランチの王子様』

無難、甘すぎて好みではない……と思いつつ、おっ! となる文章があり、謎解きシーンのぬいぐるみやクレーンマンの件はかなり興奮した。
情報開示請求して正規の手続きで犯人に社会的制裁を与えてみても欲しかったが、そりゃ難しいわな……。


10、片岡『いつかあなたに逢えたなら』

感想を以前、まとめたことがあります。


11、月村奎『ロマンス不全の僕たちは』

あまりにもさらっと終わってしまってんーーーとなってしまった。でも「うっかりおでん」「一年の計は」とか、十把一絡げの「誰か」はどっちなのかとか、後半はよき描写たっぷり。攻めの父親のあの感じは安定の月村さん。
微妙だったのは冒頭、受くんは性指向の自覚前から女性にシンパシーを抱くことが多かった、的な記述が入ること。
あれは不要では。性格の描写としてイメージが湧きやすいとされたのかもしれないが、「女ぽいからゲイで受け」みたいなステロタイプ強化し得る、避けるべき描写だったように思う。
総じて、さらっとさくっと読めて、評価としては「おもしろかった」側ではあるのだが……攻めくんは、あの性格を思うとがっつり尻に敷かれていてほしいな。


12、一穂ミチ『さみしさのレシピ』

この作品における「雨」がどういうものなのか、冒頭の一文だけで伝わってしまう技巧。うっとりする。一穂ミチさんの文章は滋味深い。
仕方なく詰めていた段ボール箱から、手に馴染み経緯に情のある調理器具を遂に取り出す、それだけで、他人の家なのに「帰ってきた!」のだという感がひひひしと伝わってしまう凄みよ……。
一気に読んだのだが、「性はグラデーション」をこう表現するのか、と唸り、「あなたが男でも女でも関係ない」と「男だから好きになれた」をこう折り合いつけるのか、とまた唸り、今作もマーカーだらけでした。良作!


13、英田サキ『密約のディール』

資料を読んでる時にも近い、無駄の削ぎ落とされた硬質な筆致からはじまる。英田サキさんのこの感じ、とても好きなんだ……なぜならどエモが内包されていると後に必ずわかるからです……。
おもしろくて一気に読んだ。しかし性暴力の扱われ方が軽率。そういうのは「あるある」ではあるし、かなりマシな部類とは知りつつ……。
一方、ケアを受けられなかった子どもへの視点は誠実。その点、英田サキさんへの信頼感は常に高い。
あとそうあの秘書、めちゃくちゃ優秀だから絶対に手放さないほうがいい。手放してはいけない。あの秘書のスピンオフをください、の気持ちが強い。
白色ワセリンが出てきた時点で「ははぁーーーん!」ピピーン! ともちろんなりました。そうそう肌の保湿にも唇の保湿にもつかえるワセリンさんは優秀な子なんですよ!!!! 私、リップクリームはVaseline!!!!
でもワセリンとゴムは一緒に使わないようにね!!!!!!


14、かわい有美子『月一滴』

CPの2人のどちらに対しても恋愛感情を抱くに至ったステップがよくわからなくて「?!」となってしまったのだが、濡れ場シーンがとっても好みでした。お口プレイへ受けのコメントがとてもよかった。好き!


15、かわい有美子『透過性恋愛装置』

読み切って、タイトルの意味を理解!!!! 心の底から理解した。いいタイトルだ〜!
かわいくてかわいくて、こんなにニコニコニヤニヤしてしまって表情筋の筋トレになったと思う。とてもよかった! おすすめ!

おんもしろい! 北嶋! 北嶋くそ腹立つかわいい!! かわいい!!
牧田さんの! ちょっと人間ぽいとこ見てみたい! ソレ!
北嶋ぁーーーーーっ 北嶋ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! なんっ なんでそんなにかわいいんだ……クソやろうのくせにっ くやしいっ!!!! かわいい!!!!
はぁーーーーーーーーっ くそーーーーーっ 牧田ーーーーーーっ 牧田っっっ あっっっ くっっっ牧田さん、、、ダメだいい人間すぎて悪口が思いつかないっ くそっっっ くやしいぃっっっ あぁーーーーーーっ いいな! いいな! はぁーーーーーーーっ
あぁ、、、、、、もうだめだ、、、、、、北嶋がかわいい かわいいすぎて頭を抱えるしかない、、、、、、
かわいい、、、、、、、、
牧田だ!!!!!! このっ このっ いやなやつ!!!! オヤジくさい!!!!!! むっつりどすけべ!!!! もうっ!!!! 最高!!!!!!!! ありがとう!!!!!!!!!!
と、語彙を失いながら読みました。みんなさまも語彙の消失にご注意を。


16、かわい有美子『透過性恋愛装置 番外編 花色景色』

こちらもかわいかった〜っ!
北嶋、あれを他者のせいにするのではなく自分がこうしなかったせい、という方向で落ち込めるの、すごい……いいやつじゃんすごい見直した……!
デパ地下惣菜とサングリア、あとおでん食べたい!


17、かわい有美子『上海金魚』

このシリーズの登場人物、みんな好きです。
滝乃くんのためらいの無い真っ直ぐな、「こいつを怒らせてはならない」善良さが好きだし、佑季くんのあったかいんだか冷たいんだか掴めない感じも気になっていたので、この2人の話で嬉し買った!
ともあれ映画化して! これは実写で観てみたい!!!
設定は「あるある」のはずなのに、それの持つやるせなさや惨めさがとても差し迫って感じられるのすごい……筆力……となりました。地味だが、ロマンチックでドラマチックでノスタルジックで、美しい。良作!


18、安西リカ『ふたりのベッド』

安西リカさんの作品、ほんとうによいな……滋味深い……栄養価の高いBL……
私は薄着の好きな人間ですが、薄着でくるまる毛布は心地いいんだよ。興奮もしつつ読んだのに、じわりと沁みる良作……!
私は長女の人なので、下の子の奔放が許される様を見ると、出来の良さで生存の絡まない気楽さとか、子ども時代ほしかったなーとかの気持ちを喚起されて大変に苦しくなるのだが、しかしこの子はいい子だ〜。明らかに家庭側に問題ある〜。しかし逞しい〜(さらなる応援)の気持ち。深水……そう、きみのそのいつも割りを食っている長男感、わかる……わかるぞ……
そして福ちゃん、福田くん、私はきみのようなサブキャラが大好きです。好きだよ。
やだ、やだ……思ってたより入江くんが重くて…………よい…………ごめんね入江くん 好き…………応援……。
安西リカさんの作品、嬉しい楽しいおもしろいことはもちろん、日常のほそぼそとしたことでも、しんどい切ない描写でも、多幸感としか言いようのないものがふっと顔を出すことがあって、心から大好きすぎる。大好きです。
攻めくんの重みとネガティブさに大丈夫? よしよし逃げていいんだようんうんってなってたけど、すとんと腹落ちしてみたら実態はただのネガティブゴリラだったとこ、最高ですね。
そして受けくんは、たぶんやっぱり性欲がほとんどなくて、それが「ある」という兆しは生まれたけど、こう……
「より心地よいセックスしたいから性欲出るといいなぁ」とほわりと思えることが、あんなに平和にかわいく描けてしまうのは、やはりすごいことと思います。


19、かわい有美子『金のフォークに銀の匙』

満足度の高い1冊!! 王道はつまり普遍なので、それがおもしろいというのは素晴らしい。
不破お前!!! やなやつ!!!  と思って読みはじめたのだが、そして、やなやつなのはかわらないのだが、器用そうに見えて堅物すぎて生きにくいタイプの感じだな? と思ったらかわいく見えてきた。頭がいいのに下手すぎておもしろい*^v^*
作中でも「残念」「観賞用」「正直ないわー」など評されており、それがいちいちその通り過ぎて、ますます好きになった。そうですその男、仕事できるし頭いいけどいろいろあれなんですよ。朴念仁てやつです。
そして、わんこくんは筋金入りでよい!
「このワードを使うかよ」という気になる点しばし。しかしそれでも総合すれば高評価と言えてしまうのが悔しいほど。かわいかったぁ〜!


20、英田サキ『BUDDY』

どこをどう見てもバカップルだらけで、誰かの惚気を誰も止めずに惚気が加速していくので天井がなく、ニヤニヤがとまらないスタート。長期シリーズの醍醐味である。
「してはならない」と分かっていることをしてしまい、罪悪感やらなにやらに押しつぶされそうで、それでもその選択肢をとることをやめられないようなことがあったときの向き合い方について、2人が語るくだりがあった。それを読後も、ずっと思い出していた。
私は少しだけ気持ちが軽くなったのだけど、他の人だとどうか。
そのアドバイスはとても現実的で、倫理観? でいったら「正義」ではないのだろうが、そしてその受け入れ方も、それもそれでまたしんどいものなのだが、あれは命を長引かせることのできる策だとも思っている。
少なくとも生きていける、呼吸がしやすくなることは、ある。
はぁ。おもしろかった!


21、かわい有美子『恋するクラゲ』

おもしろかった! 少し一穂ミチさんの『ひつじの鍵』を思い出してた。魔法のような無理難題をこなす仕事、どうしてもカッコいい。
おいしいお弁当が食べたくなったし(駅弁食べたい!)、おいしいお酒が飲みたくなったし、おいしいレストランにも行きたくなったし、
中国語をまた勉強したくなったし、綺麗な字が書けるのって素敵だなって思ったりした。
なぜか心に栄養行き渡りまくった作品! 好き!
仕事のできる三十路男たちのほわほわな恋愛模様はかわいすぎて表情筋痛くなる案件でした。
ふたりのどちらともが穏やかで、オラつきがなく、進展は「おこちゃま」なゆっくりさなのに、もたつきもない。好きですね。
おいしい、かわいい、お仕事、平和! 最高! 受け攻めも理想通り、受けくんの微肉食感も理想通り、最高でした!!!! このふたり、ふたりとも大好き!
同時収録の受け視点の短編は、受けくんの口調がちょっと違って、でもこれが受けくんであるという説得力がめちゃくちゃあって、それもよかった。貴公子さんは、想像以上に正統派な治安の悪さでした。治安の悪い貴公子=最高。生まれも育ちも超えられるラッキーの存在って、リアルでもありますしね。


22、かわい有美子『君と僕と夜の猫』

ものすごくよかった…… いい歳した男たちのもだもだがかわいらしく、ずっとハラハラ ドキドキしていた。共犯的な「縛り」と、お互いそこでなら自由なのだということ、でもそこからやっと一歩出て、本当に歩きはじめるという……良……。
「特に派手な何かがおこるわけでもないが、日常は不可逆の積み重ねであり、積み重ねの維持には意志と努力と誠実さが必要である」という、エモいの宝庫です。ご飯もみんなおいしそうだったな……。
あと当て馬くん、私は心から君の幸せを願うよ!


23、安西リカ『ビューティフル・ガーデン』

最初攻めに対して「この野郎!!!!」と思っていたのだが、ごめんね、好きです。きみいい子だね。同時収録後編の『ビューティフル・ライフ』が名作で、あの静かな対峙が凄まじくて私は泣いた。
安西リカさんの作品、本当にハズレがない。シリアスなシーンなのに「ふふっ」と笑えてしまう安心感がすごい。
なお今作も、事件という事件は全く何も起こっていない。しかしドラマチック。好き。
超良作でした!!


24、C・S・パキャット『叛獄の王子』(本編3冊+外伝1冊)

圧倒的におもしろく、ガタガタ震えながら読んだ。3時間×3で本編、あと合計1時間くらいで番外編をアニメ映画化して欲しい。
本編のドラマが物凄い迫力で手に汗を握りっぱなしだったのだが、一方、番外編の穏やかさもまた飛んでもない質量だった。
ドラマ後の日常を重ねるための、過去の精算 というか……絶対にできないそれに最大限の誠実さで向き合うのがすごい。どこまでも穏やかで、どのシーンよりも厳しい。購きれないことを知っているし、癒えないことも知っていて、しかし、癒される必要があったことに気づき、贖うための行為から逃げないっていう、この、、、この、、、(好き)


25、妃川螢『王と剣』

ファンタジーBLでハピエンといったら、これこそが王道である。
私の好みとはテイスト違いではあったが、不安なく、切なさもあり、ワクワクがあり、圧倒的ハピエン。そういうものを読みたい人には安心して勧められる良作。


26、かわい有美子『世界の半分』

とってもエンタメ。 「そんな簡単に惚れるか?」と「そりゃ惚れるよな」の気持ち。
後宮がカルチャーセンターみたいで、「房中術」を学ぶシーンがあったのだが、その内容が北欧の性教育みたいで面白かった!
ところでずっと思っていたのだが、かわい有美子さんの作品はお口プレイがとても多く、好みです。
今回は受けの子に少し「強さ」が足りないように感じてしまったのだが、残る幼さに希望があることの説得力がおまけで伝わり、おぉ、となった。希望ってアンコントローラブルなのだな。


27、かわい有美子『銀の雫の降る都』

ファンタジー、いやSFかな。好きな設定!
しかし彼らはセックスすべきではどうしてもなかったと思ってしまうし、ラストはうーむ、となった。胚は蛇足と感じてしまい……などいろいろ思いもしたのだが、差し引いても明らかにおもしろかったので私の勝ちです!


28、一穂ミチ『藍より甘く』

また良き読書経験をした。この方の作品は、いつもマーカーだらけになる。
色の名前、空の名前、観覧車、雨の冷たさ、景色にのまれて消えてしまう、置き去ってしまった小さな青。
視点の繊細さと複雑さはそのままに、すっと解して提示される快感があった。


29、安西リカ『初恋ドローイング』

かわいいにかわいいを重ねてかわいいを描いたら、かわいい! みたいな作品*^^*
最初っから最後まで安心してニヤニヤしていればよいのです。
作中に出てくる友人の「ホモ」という言葉の扱いは、塩梅がうまい。未知と対等感とが、バランスして表現されている。


30、かわい有美子『月の旋律、暁の風』

アラビアンナイトと、いわゆる「BL的アラブもの」をかわいさんが描くとこうなるのか、という作品。おもしろかった。
海の彼も見てみたかったな。きっと恐ろしく美しかったのだろう。細かな機械細工の描写が美麗でうっとりした。
かわいさんの描く健気の子は健気すぎて不安になるんだけど、今回攻めだし、やや傲慢だったはずの受けが尽くしまくるので、安心する。健気→←←←傲慢くん、くらいのラブパワーバランスなので釣り合えてしまう感。かわいかったー!


31、樋口美沙緒『パブリックスクール』シリーズ(『檻の中の王』『群れを出た小鳥』)

設定が好みではない……と避けていたのだが、圧倒的おもしろさに薙ぎ倒されてしまった。私の設定への好みなど些細な問題である。人気作には人気作である理由があるのだ。
望むもののために釣り合う自分を得る、という誠実さと矜持を煮詰めたような姿勢が、私は大好きなんです。ありがとうございました!


32、樋口美沙緒『パブリックスクール 八年後の王と小鳥』

『檻の中の王』『群れを出た小鳥』の続編。
苦いと辛いが甘いでコーティングされていて、たいへん美味でございました。綺麗事だけではいられず、現実をしっかり歩かなきゃならなくなったとき、綺麗事を手放さずにいることの大切さが際立つというデザイン。お見事でございます。


33、樋口美沙緒『パブリックスクール ロンドンの蜜月』

「蜜月」とかいうほどの甘々では全くなかったな?! というかお仕事BLだった。めちゃくちゃお仕事BLだった! 良質なお仕事BLだーいすき! あとギルがどんどん最高で最高!
ノブレスオブリージュは繰り返し語られていることだが、権威や権力との付き合い方と距離感の話、諦めたからこそ視界が開けて強くなれること、対等と対等ではいられないこと。そういうのほんと好き!


34、樋口美沙緒『パブリックスクール ツバメと殉教者』

購入時「たぶんこっちの人たちの話の方が好きな気がする」と思いつつ購入したのだが、抱えるものが大きすぎて吐きそうだった。しんどい。
「犠牲」という言葉の定義のすり合わせが必要。という前提で、大好きです。
「愛」「犠牲」がテーマにあるのだが、愛は恋愛や性愛に限らず、根源的な指向性や情の持ち方、そのベクトルの話だったりする。
そして「犠牲」は、理性や思考により自らの持つ倫理観や矜恃を保ち、貫く決意によりもたらされるものへの外部評価でしかない。わぁーーーーーーっ!
そして、ともかく、思考や自らの根拠を他者におかず、矜持に生きる人を推すので、推します。という気持ち。
(むかしこういうことを友人に言ったら「任侠?」と言われたのだが、そうですね好きですね。あの外面という意味でのプライド、体面が命みたいな環境の中に輝く、個別の価値観を持ち貫く受けといったら…………!)(893BL好き)(この作品は893BLではありません)
そしてやはり、受けの子が攻めの元セフレたちとどんどんめちゃくちゃ仲良くなる上、元セフレたちに大人気で愛されており、受けの子も彼らを大好きであるというの、とってもいいな?! 好きです!


35、樋口美沙緒『パブリックスクール ツバメと監督生たち』

はぁーーーおもしろかった。もう、こう、ずーーーーーーーーーーーーーーーっとしんどいんだけど、よかったねぇぇぇぇ。
年に10発くらいは殴られてくれ、とは思うが、憎めねぇなぁ、、、。
あとイギリス行きたい。


36、樋口美沙緒『琥珀(分冊版)パブリックスクール アンソロジー』

最高!! 最高!! 私の推しがメインの話だったやっぱり最高だったありがとう!!!!!! ありがとう!!!!!! エド好きです大好き好きですが、私はギルが好きなんです ありがとう!!!!
『パブリックスクール』シリーズ読んだ人には、ぜひこちらも読んで欲しい。そしてギルの最高さを思い知ってくれ。


37、樋口美沙緒『愛はね、』

俊一、おまえに彼との恋愛は早い。おまえでは役不足である。
私は次男が好きだな……でも長男が行けなかったドイツに次男は行けたのね。長男しんどいね……つら……あれ育児に追い詰められた人の言葉だよ、つら……。受けくんはがんばりました!
人により「スッキリしない」と思われるのかもしれない。でも、書かれた時点での最大の誠実さがこの形だったのだろうと私は思う。「愛」は樋口さんのテーマなのだな。


38、凪良ゆう『お菓子の家』

しみじみとよい。スピンオフ作品なのだが、私はこっちの方が好き。
前作ではひどいDV攻め野郎だった子がメイン(受け)なのだが、絶妙なラインとも思う。「DV野郎がこんなDVやめられるわけがない」という現実と、たとえご都合でも「こういう希望もあってくれたらいい」のライン。懐く相手がこの攻めでよかったね。。
作中、「かまどに放り込まなくてよかった」のシーン、発売され読んだ当初はまだよく重みが実感できなかったのだが、今なら少しはわかる気もする。どれだけ救いになったことか。
なお詳しくは書かないが、「福祉につながる」描写がある。施設には行かないし、施設に行くことが必ずしもその子にとってよいとは限らないとも書かれてはいるのだが、いったんはつながるし、福祉は悪としては書かれない。それだけでも貴重と思ってしまう……フィクションにおける「福祉に繋がる」描写、もっともっと社会に溢れてくれていい。


39、榎田尤利『nez』(全4冊、完結済)

おもしろかったぁーーー!! やっぱりこのシリーズ大好き! 問答無用のエンタメ! と言う感じ。強い! 好き!
攻めくんが、彼自身の核心的な部分は何も変容することなく、しかし大幅にメタモルフォーゼして大変なイケメンになります。BLにおいて攻めを好きになること、私にはレアなのだが、大好きになりました。


40、英田サキ『ヘブンノウズ』(シリーズ1冊目)

微ホラーサスペンス?のBL。英田サキさんの一貫した倫理観がしみじみと感じられる1冊。英田さんの作品は好きなものたくさんあるのだが、このシリーズも大好き!
奈良さんの絵もピッタリで、うっとりする素晴らしさ。


41、英田サキ『ヘブンノウズ 足跡』(シリーズ2冊め)

当て馬や「主人公ペアと近しい3人め」に惚れがちな私が薫さんにぐっ……ときた巻でした。そうでした。
「育児ノイローゼ」と「産後うつ」、その区分に私は詳しくないのだが、夫の人が最適と思われることをしても、必ずしも最良の結果になるとは言えず、難しいよな……となった。
主人公2人は、ままならない中それぞれで誠実と健気を見せようとしていてがんばって……という感じ。このシリーズやっぱり好きだなー!


42、英田サキ『ヘブンノウズ 赦罪』(シリーズ3冊め)

薫さんが好き!!!! 先生の不器用でねちっこくてかっこいいのにオヤジくさいところも色気があって好きなんだけど、薫さんが好き!!!!
あとミツルがかっこよかったな。あのシーンを挿絵付きで見られたの嬉しい。本当に、挿絵ごと味わって欲しいシリーズです。
英田サキさんの作品は、やはり静かで日常の描かれたものが好きだな。……いややっぱアクションバリバリのも好きですが。
それにしても、「性交渉に際し言語で明確に同意を得る・確認しあうのはムードを壊す」みたいな話、BL読むたびに「うそだね!!!!! 絶対にうそだね!!!! だってこんなにドエロいでーーーーーす!!!!」の気持ちになる。性交渉に際し言語で同意を得るの、大事です。


43、英田サキ『ヘブンノウズ 物語』(シリーズ4冊め、最終巻)

母の死とミツルの謎にケリがついて、悲しいけれど大団円。ハピエンです! そうか、旭は「間に合った」んだな、ともあらためて。
薫さんがいきいきとしていて私は本当に嬉しいです。薫さんのしあわせを祈る〜!


44、菅野彰『担当編集者は嘘をつく』(シリーズ15冊目)

おもしろかった! メインの他に収録されてる短編も、しみじみとよかったな……。挿絵の二宮悦巳さんも相変わらず、絶品に大好きです。
長く愛していきたい作品。


45、菅野彰『次男のはじめての痴話喧嘩』(シリーズ16冊め)

ここが1番の好きCPなので、読めて嬉しい……。
攻撃力最高の男が弱弱になり、一番弱々しそうな彼の途方も無い頑迷さが光る、といういつもの感じがめちゃくちゃ出つつ、少しだけ融解する話だった。好き!


46、菅野彰『SF作家は担当編集者の夢を見るか?』(シリーズ17冊め)

割烹着を脱がせるシーンと、愛し合って付き合ってる2人がはじめて両思いになるシーン、ボロボロに泣いてしまった。文字にすると微妙に意味がわからないが、感動している……17冊の積み重ね、すごい。ひとつの実りが見えたように思う。
BL作品なのだが、家族モノ群像劇であり、お仕事小説でもあり、セックスシーンは際立って少ないので、そのへん期待して読むとズレると思う。恋愛よりは、愛の話、とするのが適切に思う。文章にクセはあるけど、心底おもしろいよ!
あと、秀の描く物語というのがどういうものなのか、ぼやりとイメージはあったのだが、この数冊でちょっとわかった気がする。おそらく吉田秋生であり、『黄金の王 白銀の王』であり、『最果ての空』なのだろう。それはもう……斬れ味やばいな……


47、菅野彰『毎日晴天! 番外編(キャラ文庫アンソロジー「琥珀」分冊版)

味噌と仕事と愛と健康を志向することと大豆の話であった。大豆は大事。
こう書くとカオスなのだが、とてもよい短編でした。しみじみと「愛だね……!」となる。
ウオタツがいとおしいので、彼には本当にしあわせになってほしいな!










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