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大鉗・小鉗

大鉗・小鉗 日向風土記逸文

日向の風土記に曰はく、臼杵の郡の内、知鋪の郷、天津彦々火瓊々杵尊、天の磐座を離れ、天の八重雲を俳けて、稜威の道別きに道別きて、日向の高千穂の二上の峯に天降りましき時に、天暗冥く夜晝別かず人道を失い、物の色別き難かりき。

 これは天孫降臨の時の話である。
 日向の国の風土記に曰はく、臼杵の郡の知鋪の郷でおきたという。
 天照大神の孫、瓊々杵尊が天の磐座を離れ、天の八重雲を押し開き、日向の高千穂の二上の峰に降り立った。
 その時、地上波は空は暗くて昼夜の区別がなく、人であろうが何であろうが、道を失って物の区別がつかなかった。
 
 その時、大鉗・小鉗という二人の土蜘蛛が瓊々杵尊に話しかけた。
「瓊々杵尊が、その尊い御手で稲の千穂を抜いて籾とし、四方に投げ散らせば、きっと明るくなるでしょう」
 そこでその通りに多くの稲の穂を揉んで籾とし、投げ散らした。
 すると、空が晴れ、日も月も照り輝いた。だから高千穂の二上の峰という。後世の人が改めて智鋪と言うようになった。


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